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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第三の部 学校生活が開始したお話
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第十五話 呼び出されました──実はすごい仲良しかもしれない

 あの後、教師に囲まれた俺、アルフィ、そして青髪の生徒は生活指導室へと連行された。

 

 部屋で待つことしばらく、やってきたのは禿の教師オッサンだ。状況シチュエーション的に生活指導担当の教師なのだろう。如何にも頑固親父と言った具合の強面で、体格もガッシリしている。魔法学校の教師とは思えない風格だ。

 

 教師ハゲは眉間に皺を寄せ、睨みつけるようにこちらを見据えた。青髪はビクリと肩を震わせ、アルフィは小さく溜息を吐き、俺は教師の煌びやかな頭の輝きに目を細めていた。

 

 やがて、教師は重苦しい雰囲気を纏って口を開いた。


「それで、言い訳はあるのかね?」

「ぼ、僕は──」

「「俺たちは被害者。加害者はそこの青髪です」」


 俺とアルフィは言い淀む青髪を上書きするように、迷い無く明瞭に答えた。息を合わせたような俺たちの論に、青髪がぎょっとした顔になった。一切相談事もなく、言葉がハモったことに驚いたのか。


「ふむ……では、青髪君の言い訳も聞こうではないか」


 ……この教師おっちゃん。強面な見た目に反してノリが良かったりするのか?


 生活指導の教師に促されると、水を得た魚のような勢いで俺を指さした。


 だがしかし、既に俺はその半歩横へと移動しており、奴の指先は空を──。


「余計にややこしくなるから止めろ」

「あい」


 アルフィに怒られたので、黙って指さされた。


「こ、こいつは! 列に並ぼうとした僕や僕の友人に暴力を振るったんだ! そしてその隣の奴は、僕に対して魔法を撃った! ぼ、僕たちは被害者だ!!」

「────だそうだが?」


 尋ねてくる教師の顔には呆れが混じっているように見えた。おそらく、ここにくる前に他の教師からある程度の事情は聞いているのだろう。


 俺は横目をアルフィに向けると、彼は肩を竦めるだけだった。好きにしろと。


 教師は俺たちを見渡してから、改めて切り出した。


「まず始めに君たちが騒動を起こした切っ掛けを説明してもらえるだろうか? 状況は既に聞き及んでいるが、当事者の君たちから改めて話を聞きたい」


 意外と話が分かりそうな教師のようだし、俺は素直に口を開いた。


「最初に、腹を空かせながら学食の列に並んでいた俺の前にさも当然のように割り込みをしようとした奴がいたので〝ぺいっ〟としました」

「それはどんな感じの〝ぺいっ〟だったのかな?」

「こう、〝ペイっ〟って感じです」

 

 俺は最初割り込みに割り込みしてきた奴を投げた時の様子を身振りで表現する。


「で、その後にも何故か怒って割り込んできた奴がいたので、そいつは〝ぺいやっ〟としました」


 続けて、二番目に割り込みを掛けてきた奴を投げ飛ばす様子をまた身振りで表現した。


「そうか〝ぺいやっ〟としたのか」


 この教師、マジでノリ良いな。


「最後の青髪そいつにいたっては、怒鳴られたんで怒鳴り返したら腰抜かしました。手も一切出してないです」


「こ、腰なんて抜かしていない!」


 俺の言葉に即座に反応した青髪は、一気にまくし立てる。


「というか、君は平民だろう! 貴族である僕に列を譲るのが礼儀ではないのか!?」

「誰がいつ、俺が平民だと言った?」

「…………え、違うのか?」

「独断と偏見で人様を判断するのは良くないぞ」

「そ、そうだな。それは申し訳ないことを──」

「まぁ、俺は平民ですけどね」

「人を馬鹿にするのも大概にしろよ!?」


 髪が青いくせに沸点が低いな、この青髪君。


「平民だろうがお貴族様だろうが、列が並んでるならその一番後ろに順序よく並ぶのが礼儀というか常識じゃねぇの?」

「正論だけど、おまえの口から礼儀や常識って言葉が出ることに俺はもの凄ぉぉく違和感を覚えた」

「うるさいよ」


 アルフィの嫌みに俺は軽く睨むが、醒めた目で見返されただけだった。教師の野太い咳払いが割り込み、俺たちは前を向き直した。


「事の発端は理解した。では、どうして食堂が水浸しになったのかも説明してもらえるかな?」

「そ、それは──っ」

「隣のアルフィこいつと一緒に飯を食ってたら、魔法が急に飛んできたんで防壁シールド使って防いだだけです。水浸しになってたのは、青髪の使ってた魔法が水属性の水弾アクアバレットだったから。ぶっちゃけ、最初の二人はともかくこの青髪に関して俺は一切手を出していません」

「そして俺は、リースが話を聞こうと防壁シールドを解除しましたが、頭に血が上ってさらに魔法を使おうとする青髪を、弱めの風弾エアバレットで止めました。正当防衛を主張します」


 青髪の言葉よりも先に、俺は己の言い分を吐露した。それに間髪入れずアルフィも続く。勢いを絶たれた青髪は口をパクパクとさせるだけで何も言えなくなっていた。


 俺たちは生まれた頃からの長い付き合いがある。この程度の掛け合いならその場の勢いアドリブで可能だ。


「……で、どうかな青髪君。彼らの言っていることは真実かな?」


 教師の言葉に、いよいよ青髪は顔を真っ赤にして叫んだ。


「ぼ、僕にはラトス・ガノアルク! 名誉あるガノアルク家の長男・・だ! 決して青髪という名前ではない!」


 ツッコミどころはそこか。


 別に故意に『青髪』と呼んでいたわけではなく、青髪君ラトスの名前をこの時点で初めて知っただけの話だ。──取り巻きっぽい奴が呼んでいたのは、今聞いた時点で思い出したけど。


「なぁアルフィ。ぶっちゃけ、ガノアルクさんって、どこのどなた?」

「俺だっておまえと同じ田舎村出身だ。知るわけないだろう」

「が、ガノアルク家を知らないと言うのか!?」


 揃って首を傾げる俺たちに、教師は説明するように言った。


「ガノアルク家──水属性魔法に秀でた一族で、その道に関してはかなりの名門だ。ラトス・ガノアルクは入学試験でも優秀な成績・・・・・を収めている」

「そうだ! 貴様たちのような平民とは出来が違うのだ!」


 ……………………。


 ……………………。


 ……………………。


「な、なんなんだこの『おいおい、何言っちゃってくれてんのこのお坊ちゃまは』みたいな空気は!?」


 まさしくその通りである。というか自分で言うのかよ。


 だって……ねぇ?


 ──あ、よく考えるとこの教師はもともと青髪君ラトスの名前を知っていたのか。見た目からは想像つかないが結構お茶目なのかもしれない。


「確かに、二人とも平民なのは紛れもないが」


 教師は疲れたような深い息を吐き出すと、こう説明した。


「まず、そっちの礼儀正しい方──アルフィ・ライトハートは、今期の入学試験で総合三位・・・・の成績を収めている」

「…………は?」

「ついでに言えば、世界的にも稀であろう四属性を操る天才だ」


 青髪──ラトスの目が驚きの余りに見開かれた。


「よ、四属性だって!? そ、そういえば学校の教師がわざわざスカウトしに言ったという天才がいたという話を聞いた覚えが──まさか彼が!?」


 まさにアルフィかれだな。


「で、もう片一方の無礼な方だが」


 おい教師、その説明はちょっと──。


「何も間違っていないから黙ってろ」


 おいアルフィィィィ!?


「こっちも名前は聞いたことあるはずだ。何せ、入学式で派手に喧伝していたからな」

「入学式? ……ッッ!? ま、まさか!?」

 

 あの時、声は学校長の魔法で拡大してもらえたが、生徒たちが整列していた場所と壇上は少し離れていたからな。俺の顔がよく見えなくとも不思議ではない。そして、俺の名を聞いて改めて思い出したようだ。


「新入生の中で唯一、入学試験で総合満点を取ったのがこのリース・ローヴィスだ。更に付け加えるなら、どちらもノーブルクラスに所属している」


 目が飛び出すんじゃないかと思えるほどに、ラトスは更に大きく目を見開いた。


「ちっ、いずれ俺がナンバーワンになるんだからな」

「ここは流石に張り合うタイミングじゃねぇだろ」


 ──ちなみに、俺とアルフィには騒ぎを起こした事への注意はされたものの深いお咎めは無し。


 一方で、ラトスにはある程度の処罰が下されるという。ただ、入学したばかりであり負傷者もいなかったことから、重たい罰になること避けられたらしい。取り巻きらしき二人にも厳重注意がなされるとか。


「あ、そういえばあの教師の名前、聞きそびれてた」

「いずれは知ることになるだろうさ。それよりも早く教室に戻るぞ。今ならまだ授業の最後には戻れるはずだぞ」

「あいあい」


 生活指導室を後にし、俺たちは小走りに教室へと戻ったのであった。

青髪は今後も出てきます。ぶっちゃけものすごく名前を悩みました。



ナカノムラの別作品もよろしく


『カンナのカンナ 間違えで召喚された俺のシナリオブレイカーな英雄伝説』

 書籍化作品。

http://ncode.syosetu.com/n3877cq/


『勘当貴族 ルキス君の冒険日誌』

 上記作品の外伝

http://ncode.syosetu.com/n9660dq/


『自筆小説に登場するテイムモンスターをケモミミ美少女化したら、作者の俺がケモミミ美少女化しました!?』

 最近書いた短編

http://ncode.syosetu.com/n9325dq/

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