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大賢者の愛弟子 〜防御魔法のススメ〜  作者: ナカノムラアヤスケ
第五の部 学園生活順風満帆なお話
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第百三十九話 侵略されているようですが──最終局面突入です


 決闘場アリーナのいたるところから投影されたラトスの魔法が、一斉にテリアへと放たれる。


 攻撃に意識を割く余裕はなく、テリアは水城塞アクアフォート表面の水流操作に専念し全力を防御に傾ける。


 ここにきて、優位に立っているのはラトス。形勢は逆転したかに見えた。だがしかし。


「駄目ね。あと一歩が届かない。防御に専念してるってことはそれだけガノアルクのの攻撃が脅威になってるってこと。けど、逆を言えば防御それに専念されたら並大抵じゃ突破できないわ」


 ミュリエルはこれまでになく真剣な表情で呟いた。目は闘いの行く末の一分一秒を見逃さんと瞬きすらない。


 アルフィもミュリエルもそれを耳にしながら、息を飲んでラトスの闘いを見守っている。 


 確かに、雰囲気だけを見ればラトスが押している。だが実際には、ミュリエルの言う通り決定打が無い。ラトスがどれほど支配領域を広げたところで、テリアの防御を突破できなければ意味が無いのだ。


 それでも、これまでにない迫力の魔法戦に会場全体が沸き立つ。


『さぁさぁさぁ! この決闘もいよいよ大詰め! 観客の誰もが闘いの最終局面へと突入してるのを確信しています。眼前に繰り広げられた攻防が集結した時、まさにこの闘いの決着を意味するのだと! そのとき立っているのは、果たしてテリア・ウォルアクトなのか! それとも美男子から美少女へとクラスチェンジを果たしたラトス・ガノアルクなのか! これ以降、一瞬たりとも目が離せません!!』


 実況に合わせて場の熱気は最高潮に達していた。


 そんな中……リースは一人、決闘場アリーナを見据えながら思考に没頭していた。目から入る情報とは別に、ラトスの『意図』を読み取らんと頭をフルに回転させていた。


(仮に、ここまでの展開をラトスあいつが想定したとして、だ。最後の一手がこれで終わりなのか?)


 テリアの水城塞アクアフォートを突破するのに一番有効な手立ては、受け流しようのない鋭く強烈な一撃を撃ち込むこと。


 だが今のラトスは、不足している攻撃力を手数でカバーしているようなもの。相手から攻撃に意識を傾ける余裕を削り取っただけだ。根本的な解決には至っていない。


(けど、それはラトスも分かっていたはずだ。ただ単純に手数を増やしただけじゃ、勝ちは見えない。だったら──)


 必ず、最後の一手があるはず。


 その時だった。


 リースの並外れた視力が、ほんの僅かに水城塞アクアフォートの表面が『揺らいだ』ように見えた。


 そして次の瞬間に、水城塞アクアフォートの内側で水流操作に専念していたテリアの躰が『傾いだ』のだ。


 ラトスが放った魔法の一つが、水城塞アクアフォートの水流を突破していたのだ。テリアの躰が傾いたのはその衝撃に負けたからだ。


 威力こそ大半が割かれていたが、それでもこの決闘が始まってからテリアにとって初めての被弾だ。


 リースは水城塞アクアフォートの異変とテリアの被弾を目にし、ふと脳裏で先ほどの会話が蘇った。


 ──魔力による侵略!! これがあなたの本当の特性なのね! 素晴らしい!! 素晴らしいわガノアルク!!


 ミュリエルが興奮に叫んだ言葉だ。


 既存の空間を魔力的に侵略・・し、支配領域に置くラトスの特性。


「そうか……侵略──いや、『浸食』か!!」


 ようやく、リースはラトスの本当の意図に気がついた。 




 テリアには攻撃へと意識を割く余裕がないのは間違いない。防御に専念しているも正しい。


 だが観客が考えている以上に、彼は追い詰められていた・・・・・・・・・


「ぐっ──!」


 一瞬でも気を抜けば水流操作に綻びが生じる。先の被弾はその綻びを修正しきれなかったために魔法の突破を許してしまったのだ。


 単に一点への攻撃を受け流すよりも、多方向からの攻撃に対処する方が圧倒的に対処が難しくなる。だが、テリアの見立てではラトス程度の攻撃力ならそれでも十分に防御可能だと思っていた。


 だが──根本的なところで、問題が生じていた。


 ラトスの全方位攻撃が始まってからというもの、時間が経つほどに──攻撃を受けるほどに、水城塞アクアフォートの制御が『鈍く』なってきている。こちらの意思とは一歩も二歩も遅れて水城塞アクアフォートが反応する。


 水流操作──魔力の制御が非常に困難になっていた。


 同時に、ラトスの水鞭アクア・ウィップと打ち合った時に感じた『剥ぎ取られる』ような感覚が徐々に強くなってきている。


(これは……やはり)


 己の魔法に起きている異変。その原因は、水城塞アクアフォートの中で循環している魔力。本来であるならば、テリアの魔力だけで構成されている魔法のはずが、今は彼とは別の魔力が循環している。


 そう──ラトスの魔力だ。


 彼女の特性である『侵略』は、触れた領域を己の支配下に置くこと。



 その支配力は、魔法にも影響を及ぼす。



 テリアの水城塞アクアフォートは、今まさにラトスの『侵略』を受けているのだ。

 

 

活動報告にもすでに載せていますが、

ナカノムラはコミックマーケット95に出店します。



サークル名は『ナカノ村の里』

オリジナルの現代ラブコメ小説。

ナカノムラが文章を書き、絵をナカノムラ姉が担当します。


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ナカノムラのツイッターアカウントアドレス

https://twitter.com/kikoubiayasuke


興味のある方はぜひ当日いらしてください。


では以上、ナカノムラでした。


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