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第十話 拍手よーい──発酵女子が混ざってるようです

プロットが思っていた以上に早く組みあがったので投稿しました。


 

 消えかけの蝋燭にも近い水晶の発光に、訓練場はしばしの沈黙の後に騒然となった。その中で『事情』を知るアルフィだけはやれやれ、肩をすくめて首を左右に振る。


「おいおい、冗談マジかよ。仮にもヒュリアのお嬢に勝ってんだぞ? 十人並みの魔力があるならまだともかく、それよりも遙かに下回る魔力量なんておかしいだろ」


 信じられない、とゼストは誰に聞かせる出もなく言葉を漏らすが、奇しくも俺はその小声を聞き取っていた。


 と、騒然となる生徒達の中から、一際大きな『笑い声』が聞こえてきた。水晶玉で茶色に『ピカァァッ!』と輝いた生徒Bだ。残念なことに、名前はまだ覚えていなかった。彼は他の生徒達の間から足を踏み出し、こちらに歩み寄ってくる。


「やっぱりな! 俺はおろか、あのカディナさえ入学試験では満点が取れなかったのに、たかが平民でしかも『無能属性』が主席合格なんてどうにもおかしいと思ってたんだ!」


 無能属性──無属性魔法の蔑称だ。魔力の消費量や難易度に比べて使い勝手が悪すぎる無属性魔法は、戦闘では役立たずとされている。それ故の蔑称だ。


 生徒Bの声を皮切りに、生徒達から俺に対する不信感や蔑視が浮かび上がってきた。入学式での啖呵で、元から良い感情を抱かれていなかったと、さすがに俺も察していた。だが、学校が認めた『主席合格者』と言う肩書きがある手前、堂々といえる空気ではなかった。それが、この瞬間に表面に浮き上がってきたのだ。


 ──さて、俺がどうしてこの状況を冷静に把握していたのか。


 簡単な話だ。


 こういった空気をぶち壊すために、俺はジーニアス魔法学校に入学したのだから。


「おい平民、今からでも遅くはない。さっさと荷物を纏めて自主退学を──」



 ビカァァァァァァッッッ!



 生徒Aの言葉を強制的に遮るように、水晶玉から強烈な銀色の輝きがあふれ出した。アルフィの発した虹色の光までは届かずとも、今までは計った中では随一に近い光量だ。


「──なっ、なっ、なななっ……!?」


 俺に詰め寄ろうとしていた生徒Bは意味不明な言葉を発し、足を止める。やがて銀色の光は失われ、水晶玉の中はまたもや消滅寸前の蝋燭のような小さな光に戻っていた。


 なおも、俺の手は水晶玉の上に置かれたまま。


 俺の手がそのままである事実に気が付いたゼストが、驚きに目を見開いた。


「魔力の総量が変わるだと? そんなバカなっ!?」


 婆さんの家にあった物と同質の代物であるのならば、この水晶は手に触れた者が内包する魔力を、仮に魔力量を『偽装』する魔法を使用したとしても『正確』に把握する事が出来る。強さの基準が光の強さなので『正確』というのも語弊があるが、意図的に光の量を調整することはまず無理なのだ。あるいは内素を大量に消費したあと、本来の光よりも小さな輝きを発するように調整することは可能だ。だが、目に見えるレベルでその逆を行うことは『本来』なら不可能に近い。


 俺が知る限り『これ』を出来るのは、俺を除けば・・・・・あの森の大賢者ババさんの他にはいない。おそらく婆さんも、程度の違いはあるが俺がしたように水晶玉の光量をある程度操作できるはず。もっとも、あの婆さんは元々の内素量がハンパでは無いので、俺ほど劇的な変化は付けられないだろうが……。

 

 ビッビッビッ!

 

 ビッビッビッ!

 

 ビッビッビッビッビッビッビ!


「三三七拍子かっ!?」


 おっと、水晶玉の明滅で遊んでいたらアルフィからお叱りツッコミが入った。チャンスがあれば寸分違わずツッコミを入れてくれる君がいてくれると本当に助かる。


「ふ……ふざけてんじゃねぇぞこのインチキ野郎!」


 突然上がった怒声に振り向けば、存在を忘れていた生徒Bが俺の胸ぐらへと手を伸ばす瞬間だった。


 ヒョイっと避けておいた。


「なっ!? よ、避けるな平民がっ」

「俺、男の人に胸倉を捕まれて喜ぶ趣味はないんだ!」

「は、はぁっ!?」

「あ、もしかして君は逆に男の胸倉をつかんで喜ぶ趣味の持ち主か。ゴメン、君の思いには応えられないよ。だって俺は女の子が好きだから!」

「ちょ、おま──」

「たとえ君が男の胸倉つかんでハァハァする特殊な性癖の持ち主でも、俺は君を差別しないよ! お友達になりたいとは欠片も思わないけど!」

「この、黙──」

「それにしても、貴族というのは業が深い身分だなぁ。あ、もしかして他の貴族のみなさんも彼と同じように男性の胸倉にハァハァする性癖の持ち主? あるいは捕まれて燃え上がっちゃうタイプ?」


 疑問を混ぜてクラスメイト達の方へと振り向くと、場にいた男子生徒の全てが慌てたように首を横に振った。


 ──女子生徒の若干名が残念そうに肩を落としたのは見なかったことにしよう。


「残念、君と性癖こころを通わせられる生徒は一人も居ないってさ。けどまぁ頑張れ。性癖はあわなくても友達くらいは出来るから」


 慰めの意味も込めて俺は生徒Bの肩を叩いた。逆の手で親指を立て、さわやかスマイルも忘れずに。


「────ッッッッ!!!」


 生徒Bは顔を顔を真っ赤にしもはや黒に変色する程の様子で、言葉にならない叫び声を上げながら俺に殴りかかってきた。不思議だ。こちらは親切心で言ったのに。


 ヒョイッと避けておいた。

 

 その後も、彼の抗議グーパンチはゼストが止めに入るまで続いたのである。


 もちろん全部ヒョイヒョイ避けました。

学校の課題を(形はどうあれ)乗り越えてホッと一息ついたナカノムラです。


そんな私は逆転裁判6をプレイ中。シリーズ屈指のヘイト値上昇具合ですが、それに負けないくらいにやはり面白い作品です。ちなみに、ナカノムラは逆転シリーズはコンプしてます。初代からバッチリです。一番好きなのは『3』ですかね。検事のおじさまが渋すぎて泣きそうでした。一時期、彼のテーマソングを携帯の着信音にするぐらいでした。


閑話休題


前書きの通りにプロットが早く出来たので、前話の宣言よりも早めに投稿。可能なら次回も来週の土曜日あたりを目指して投稿できればと思っています。


次回は軽いバトルシーンを組み込む予定です。


『カンナのカンナ 〜間違いで召喚された俺のシナリオブレイカーな英雄伝説〜』

 ネット小説大賞で受賞しました!書籍化しますよ!

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 ↑ こっちもよろしくお願いします!

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大賢者pop
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[気になる点] 生徒BがAになってます
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