1話、野上涼介死亡
我ながらそれなりに勇敢な最後だったとは思う。
「………絵梨!」
銀のナイフが根本まで突き刺さった。
「涼…介…!」
――僕の左胸に深々と。
彼女をかばって強盗に刺されて死ぬ、それはそれでいい最後かもしれない。
男はナイフから手を離すと一目散に逃げて行った。
でもこんな――
「おーい!、生前の思い出に浸るのは構わないんだけどよ…」
目を覚ますと黒い喪服のような装いをした男が目の前にいた。
辺りを見回すと、夕暮れ時の小さな駅のような場所だった。
僕はどうしてここに?
「死神なのか?」
「バカ言え、天使が真っ白い格好しなきゃいけない決まりはない!」
紙を取り出すと自称天使はそれを読み出した。
「えーっと…野上涼介!お前は早川絵梨をかばい、強盗に刺され死んだ、という訳だ。分かったか?」
やっぱり死んだのか…。そうだろうとは思ってたけど、改めて言われると死を痛感する。
胸を触ると刺された感覚は残ってる、やっぱりこれは夢じゃないんだ。
「それで、これから僕はどうなるんだ?」
「さぁ?お前次第だ」
「何が僕次第だって?」
「これから、だ。つまり行き先みたいなもんだ」
天国か地獄か、みたいな質問なのだろうか?それはそんな急に聞かれて決まるもんじゃない。
「その…他の場所に行く前にもう一度、現世に行くことは出来ない?」
自称天使は一瞬顔を濁らせた。
「あー…手続きとか…まぁいい、別に何か変わる訳じゃないだろう」
「いいのか?」
「ダメと言ってここにずっと残られるのは困るからな」
パチン!
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自称天使が指を鳴らすと空間が捻れ、景色が変わった。
見慣れた景色にあまりよくない思い出の場所だ。
「ここは…僕が刺された場所か?」
「そうだ。ここから移動することは本来禁じられてるが…オレがいるから平気だろう」
小さな花束が電信柱の根本に添えられている。多分、僕に手向けた花なんだろう。
自称天使は何かを思い出したように人差し指を立てた。
「おっと言い忘れてたことが一つあった!お前が死んでから半年経ってるからな」
「半年!?僕はお前と会ってから30分ぐらいしか――」
「時間の感覚が違うから仕方ない」
道を見渡すと商店街が見えた。
いつものように肉屋のおばさんはコロッケを揚げ、カメラ屋のおじさんは店頭で幸せそうに寝てる。
僕がいなくなってもこの町は何も変わらない。そう思うと何か寂しいな…。
人の死は最初は悲しいがいずれは、いないことが当たり前になるのだろう。
本来の目的を見失っちゃダメだ。
まずは僕の家に向かった。
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「あちゃー…こりゃ参ったな」
僕の住んでいたアパートは跡形もなく、そこには空き地が広がっていた。
自称天使によると『来年の今頃には立派なマンションが建つらしい』とのこと。
空き地にいても仕方ないし次に行こう、と思った矢先に突然自称天使が話しだした。
「大きなことは変わらないかもしれんが、お前の周りの小さなことは変わっている」
最初は言ってる意味が分からなかった。いや、分かろうとしなかった。
「早川絵梨、お前が人生で最も愛した女性の事だ。自分の命まで捧げた大切な女性だ!」
何がおかしい!と言わんばかりに僕は咳ばらいをした。
「おっと失礼、つまりこれは一番残酷な現実を見ることになるかもしれない、という事だ」
絵梨が今は他の男いるかもしれない、みたいなことを言いたいんだろう。
僕はで考えるだけで少し心がギクシャクした。
「それでも構わない、最後に絵梨の姿を見ておきたい」
「よく言った。それでこそ命を投げ出すぐらいの男だ」
パチン!
自称天使は少し微笑むと指を鳴らした。
僕の小説なので…半ば、自己満足です^^; 暇があったら感想とか批判とかくれると嬉しいです!




