表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神は愛を知らない 〜異世界に飛ばされた主婦が、それでも子供を探し続けた記録〜  作者: 忠犬
迷子の母

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/34

第一話 見知らぬ草原と出会い

はじめまして、忠犬です。

初投稿になります。勝手が分からず誤字、脱字があるかもしれません。

教えていただけると助かります。

よろしくお願いします。





「……物騒な世の中になったわねぇ」


テレビの中、キャスターが氷のような表情で原稿を読み上げている。


『本日未明、小学生の男児が――』


リビングの空気は重いはずなのに、夕食後の我が家はいつも通り。私は食器を片付けながら、どこか他人事のようにその声を聞き流していた。


「ねえ、お母さん」


ソファで転がっていた次男、(わたる)が不意に顔を上げた。


「もしさ、僕たちが殺されたらどうする?」


手が止まった。


「……は? ちょっとあんた、縁起でもないこと言わないでよ」


「だってテレビでやってるし」


「そうだよ、もし犯人が捕まらなかったら?」


宿題を広げていた長男、(あまね)までもが面白がってこちらを見る。


ああもう、教育に悪いわ。


私は少し考えてから、わざと肩をすくめて不敵に笑ってみせた。


「そうねぇ……。もし犯人がのうのうと生きてるなら――私が地獄の果てまで追いかけて、直接ブチのめしに行くかな」


「え、こわっ」


「冗談よ、冗談。さあ、宿題やったの!? お風呂もさっさと入る!」


賑やかな、いつもの夜。

そのはずだった。


「……ほう」


それは、誰にも聞こえない声。


「神に子を奪われても、母は神を屠るか? 居るかどうかも分からぬ場所まで、探し続けられるものか」


テレビの光が不自然に揺らぐ。


「面白い。ならば、試してみよう」


世界のどこでもない場所で、誰かが傲慢に笑った。



翌日。


「靴履いた!?」「水筒持った!?」


朝の戦場を乗り越え、子供たちを送り出し、一息つく間もなくパート先へ走る。

 パート中でも考えるのは“夕飯は何にするか”だ。

品出しで身体を動かしながらも、(わたる)の好きなハンバーグにするか、(あまね)が食べたがっていた鯵の唐揚げにするか考えていた。


 仕事を終えても、子どもたちの習い事のお迎えがあるため、サッカークラブへの道を急ぐ。

 他のお母さん方も迎えに来ているので、挨拶しながら子供を探す。

 (あまね)(わたる)も友達と喋っていたが、私に気づくと友達に手を振ってこちらへ駆け出してきた。


「おかえり」

「「ただいまー!」」

「さぁ、帰ろうか。今日のご飯は何が良い?」

「焼肉!」「カレー!」

「お前、焼肉とか普通の日にするわけねぇじゃん!」

「えー。お肉食べたい!」


 ぎゃあぎゃあと子どもたちで盛り上がって、あーでもないこーでもないと言い合っていた、いつもの帰り道。


「お母さん、今日さ――」


隣を歩く(わたる)が何かを言いかけた、その瞬間だった。


――キィィィィィィッ!!


鼓膜を突き刺すブレーキ音。視界を覆い尽くす、あり得ない速度の光。


「――え」


衝撃。

次に目を開けたとき、そこは知らない場所だった。


「……は?」


見渡す限りの草原。建物も、道路も、排気ガスの匂いすらない。

ただ風が、ざわざわと草を揺らしているだけ。


「待って……子供たちは!? どこ!? 返事して!!」


喉がちぎれるほど叫ぶ。だが、返ってくるのは風の音だけだ。


夢? 誘拐? それとも……。

「いやいや、ないないない!」


必死に首を振る。けれど、このあまりにも鮮やかな緑、突き抜けるような青空。

そして、さっきの“あれ”。


「……もしかして。異世界転移とか、そういうやつ?」


一瞬だけ、脳内のオタク知識が火を吹いた。

聖女? チート? 魔法で無双?


「……いや、その前に子供だわ!!」


全力でセルフツッコミを入れる。胸の奥が、ぎゅっと冷たくなる。

探さなきゃ。あの子たちを独りになんてさせない。


その一歩を踏み出そうとした、瞬間。

ガサリ、と。

背後の草むらが大きく波打った。


「……嘘、でしょ」


そこにいたのは、明らかに地球の生態系から逸脱した“何か”だった。

犬を巨大化させ、泥水に浸したような醜悪な姿。

ぎらつく赤い目。

よだれを垂らす牙は、私の腕くらいなら簡単に噛みちぎれそうだ。


「え、ちょ、これって魔獣!? 初手からハードモードすぎない!?」


後ずさる私の鼻腔に、獣の生臭い臭気が届く。

――次の瞬間、地面が爆ぜた。


「うそぉぉぉぉぉ!!」


なりふり構わず走り出す。

速い。無理。

これ、おばさんの走力で逃げ切れるレベルじゃない!


「ちょっと待って! 普通は最初スライムでしょ!? なんでいきなりボス戦なのよ!!」


背後に迫る死の気配。もうダメだ、噛まれる。

そう直感したとき――。


漆黒の影が、横一閃に視界を横切った。


鈍い肉打音。魔獣の巨体が、まるで紙屑のように吹き飛ぶ。


「……え?」


目の前に、そいつは立っていた。

ただただ、黒い。

豹のような、しなやかで強靭な体。

闇を溶かしたような毛並み。

ゆっくりと振り返ったその瞳には、野獣とは思えない知性と、どこか冷めたような色があって。


「……なに、それ。かっこいい……」


恐怖も混乱も忘れて、思わず呟いていた。

黒いそれは、ふっと鼻を鳴らす。


まるで、「世話の焼ける女だ」とでも言いたげに。


それが、私と“あいつ”の、最悪で最高の出会いだった。

面白かったらブクマ・評価お願いします。

コメントも大歓迎です。




2026/4/9

いつもお読みいただきありがとうございます。

第1話の描写をより分かりやすく、テンポ良くするために一部改稿いたしました。

物語の大きな流れに変更はありません。


2026/5/2

お迎えのくだりを少し加筆しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ