スピンオフ(5)「追放された命令の神 テオ・オルダイス」
もしも言の座の神々が、日本に転生していたら?
追放された命令の神 テオ・オルダイス
たぶんブラック企業の上司。
通称:悪魔の織田課長
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終業間際のオフィス。
パソコンの音だけが響いている。
カタカタカタカタカタカタ…
新人社員が必死にキーボードを叩いていた。
その後ろから、低い声。
「まだ終わらないのか。」
新人はビクッと背筋を正す。
振り向くと、そこに立っていたのは、
織田課長。
「この程度の仕事に、いつまでかかっている。」
「す、すみません……!」
織田は腕を組む。
「考えても無駄な頭の作りをしているんだから、さっさと手を動かせ。」
「はい……!」
社員たちは震えながら働く。
織田は机をトン、と叩いた。
「動け。」
社員たちは「はい!」と声をそろえて返事をする。
オフィスの空気が一気に張り詰めた。
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数時間後。
もう終業時間はすぎたのに、新人の仕事は終わらない。
机に突っ伏しそうになっている。
そのとき。
ドン。
机に何かが置かれた。
コンビニの袋。
「え?」
そこには織田が立っていた。
「食え。」
「……ありがとうございます!」
織田は背を向ける。
「さっさと終わらせろ。」
新人は笑顔になる。
「はい!」
⸻
さらに数時間後。
新人はやっと資料をまとめ終えた。
「で、できました……!」
織田は資料を見て言った。
「遅い。」
「すみません!」
資料を読みながら織田が言う。
「帰れ。」
「え?」
「帰れと言った。」
新人は慌てて頭を下げた。
駅まで走れば終電に間に合う。
「お疲れ様でした!」
新人が帰ると部屋は静かになる。
織田は資料を開いた。
「……」
キーボードを叩く。
カタカタカタ。
修正。
修正。
修正。
そして小さく呟いた。
「……甘い。」
⸻
翌朝。
新人は会社に来て驚いた。
資料が、完璧に直っている。
「えっ……?」
背後から声。
「立っている暇があるなら働け。」
振り向くと、いつもの不機嫌な顔の織田課長。
「……課長、これ」
「そんなことより、さっさと次の仕事を終わらせろ。」
資料を机に投げる。
「やれ。」
「はい!」
新人は元気よく走っていく。
織田は腕を組んでその後ろ姿を見守る。
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その頃。
リビングでは、
ニュースを見ていた少女がいた。
陽月 澪音子。
「うわぁ……
この会社、ブラックすぎない?」
テレビでは、ブラック企業の特集。
「上司とか絶対怖い怖いじゃん……」
ミーナはまだ知らない。
この上司が、
ただの冷徹な人間ではないことを。
そして。
彼の言葉が、
世界を動かす命令であることを。
⸻
オフィス。
オルダイスは腕を組んでいた。
「命令とは、言葉を最短で伝える方法だ。」
誰も聞いていない独り言。
「……余計な言葉は不要だ。」
そう言いながら。
机の上には、コンビニの袋。
今日もまだ二つ残っていた。
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――記録は、まだ続く。
※本編のスピンオフ短編です。
まだ読まれていない方は、ぜひ第一章プロローグからお読みください。
まもなく第二章(学園編)スタート!




