魔王と勇者
「異世界の扉」を開いた「魔王」が、世界の征服を宣言した。
その言葉はハッタリではなく、本当に世界は魔王の闇に染められて行った。
人類はなす術もなく、魔王に蹂躙されるままになっていくしかないと諦め始めた…
だが、神は我々を見捨ててはいなかった。
闇あるところ光あり。
悪あるところ正義あり。
同じく魔王を追って「異世界の扉」をこじ開けてきた「勇者」が現れ、世界中に甚大な被害をぶちまけながら魔王を封じることに成功した。
そして、時は流れて…
「晩飯だぞ」
「今日の夕食はなんじゃ?」
「酢豚」
魔王と勇者は我々の世界で暮らしていた。
「おい勇者」
「なんだよ」
「パイナップルが入っておるではないか」
「だから?」
「余は酢豚にパイナップルは許さんのじゃ」
「はあ!?タダ飯食らって偉そうなこと言ってんじゃねえよ!アタシはこれが好きなんだ!」
「お主の好みなぞ知らん!余はこれだけは許さんのじゃ!」
「お前…居候の身分で何ワガママ言ってんだよ」
「仕方がなかろう!異世界の魔王という身分では、仕事もできなければ住処も得られぬ!『コセキ』とやらがないから『セーカツホゴ』も受けられぬ。ならば余を封印したお主にすがるしかないじゃろうが」
「アタシも同じだぞ?『コセキ』がないからまともな仕事もできない。この『アパート』だって『セーフ』とやらのお情けで使えてるんだからな?」
「余を封印しておきながらそう言うか?」
「アタシだって好きで封印した訳じゃねえよ!」
「好き嫌いで余の生き様を左右するのか!?」
「そうだよ、アタシらが生きていくためだ!」
「お主…」
「テメェ…改めて決着つけるか!?」
「望むところじゃ!余もかねがねお主には含むところがあったからな!」
「上等じゃねえか!なら遠慮はしないz」
ダァン!
「ヒッ!」
「何じゃ勇者、さっきまでの威勢はどうした?」
「おま…今の聞いたろ?」
「…何がじゃ?」
「隣からの『壁キック』!聞こえただろ?」
「…聞こえたのじゃ」
「あいつおっかないから、あとで謝りに行かないとだぞ?」
「天下の勇者ともあろう者が、隣人には勝てぬと?」
「じゃあお前が謝ってこいよ」
「…怖いから嫌なのじゃ」
「だろ?だからあとで一緒に謝りに行くぞ?ほら、パイナップルよこせ」
「すまんのぅ…」
「まあ、アタシも好き嫌い考えなくて悪かったよ」
「いや、余も我を張りすぎたのじゃ」
「じゃあ、まずはメシ食って気合い入れるか」
「そうじゃな、では…」
「「いただきます」」




