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VS光ヶ浜透流3

(……クソっ)

 本当は言葉にして吐き捨てたいところだが、一緒に空気まで吐き捨てるのはマズイ。いつこの海水の牢獄を脱出できるかもわからないのだ。

 上下左右、およそ十メートルほどが海水に覆われている。外からは巨大な球体に見えるだろう。

(《爆心・轟》なら抜けられるか? でもあれは禁じられてるし、使用後の殺気量は一気に二割ほどまで減る。それで勝てるかは……かなり分の悪い賭けになる)

 僕が両手に殺気を集め、飛翔する要領で空中へ脱出しようと試みる直前だった。突然視界がぶれ、水の向こうに見えていた空がアスファルトへと切り替わる。横断歩道の白線、切断されて崩れ落ちたビルの瓦礫。直後にまた空が見える。

 凄まじい速度の乱水流が、水球の中央付近で洗濯機の中のハンカチのように、僕の身体を弄んでいた。

 更に周囲で殺気が圧縮される気配を感知する。これまでの戦いで二度感じた気配だ。

(クソっ、〈剛〉最大出力っ)

 全方位から《撃水》が発射される。身体のどこに当たるかもわからない今は、全身を守るしかない。僕の身体を覆う〈剛〉の出力を上げ、《撃水》に耐える。

 《爆心》でこの水球を脱出できるはずがない。威力を上げようとすれば集中して殺気を込めるしかないが、全身を振り回され、〈剛〉に殺気を使わなければいけない現状ではほぼ不可能だ。

(や、やばい……脱出できないっ?)

 もはや視界はほとんど意味をなしていない。僕は目を閉じて〈剛〉に殺気を込めつつも何か方法がないかと考える。考える。考え続ける。

 が、無理……それだけが結論だった。

(クソ、こうなったら生身に《撃水》を食らいながらでも……いや、馬鹿かっ! あらゆる方向から身体を斬り刻むウォーターカッターだ。百パーセント〈剛〉を緩めた瞬間に死ぬッ! 賭けですらない!)

 僕が絶望しかけた、その瞬間だった。

 僕の〈剛〉に何かが当たり、何か激励するような不思議な感覚に包まれる。同時に力が沸き上がって来た。《撃水》が僕の纏う殺気を削っていく感覚もなくなった。

(こ、これは……?) 

 僕は目蓋を開ける。僕の〈剛〉の外側で、更に分厚い〈剛〉が《撃水》から僕を守っていた。しかしそれもどんどんと削られていっている。

(厳爺……! でもこんなに殺気を付与して、厳爺自身は大丈夫なのか?)

 一瞬、水球の外からこの大量の殺気を撃ち込んでくれた厳爺の身を心配する。しかしどんどん削られていく付与された厳爺の〈剛〉を見て、思考を切り替えた。

(これだけの厚い〈剛〉なら、僕の〈剛〉を弱めても問題ない。殺気を込めろ。僕の身は厳爺の〈剛〉が守ってくれる。全神経を集中させろ)

 一瞬、桜君の忠告が頭をよぎる。だけど、違う。これは賭けじゃない。確実に勝つために必要な〈轟〉だ。

「……《爆心・轟》ッッッ!!!」

 巨大な衝撃波が水球の檻を消し飛ばす。地面を数メートルえぐり、まだ水に侵されていない土が露わになる。

 そして上空には自身が乗っていた水球を吹き飛ばされ、宙を舞いながらも姿勢を保っている光ヶ浜透流がいた。ニヤリと口元を歪めながら、斜め下を指さす。

 嫌な予感がしてその先に視線をやると、身体を両断され、一切の殺気を纏っていない厳爺がいた。確実に死んでいる。殺気による防御を捨て、僕に全ての殺気を送り込んだのだと直感でわかった。

 自分では殺せない、恩知らずの裏切り者を僕に殺させるために。

「なんで……チームメイトをそんな簡単に殺せるんだ……」

「今は敵だからな」

「この……クズ野郎がッッッ!!!!」

 僕に付与された厳爺の殺気はすでに僕のものになっている。厳爺の全殺気を付与された〈剛〉は〈轟〉の消費量を越えて僕の殺気を回復させた。

 更に〈癒〉も付与されているため、僕の足の傷は治癒している。

 衝撃波の勢いで宙に浮かんだのであろう厳爺も海水の中に落ち、沈んで見えなくなっていた。

「絶対に……殺してやる。僕の全てを尽くして」

 僕は瞳が熱く燃えるのを感じた。


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