20 潜入
「あ〜おはよう諸君 では〜これより作戦名 [クレアシオン揃えちゃる]作戦会議を始めま〜す」
「「「お〜」」」
ミドヴィアが帰還して次の日の早朝 椅子がなければ机も無く 床一面に記されている大陸図の上でクレアシオン4人揃っての会議が始まった
「え〜まず急遽この会議を開いた理由は昨日報告した通り主は今別の仕事でこの世界にはおらず 終えたら即帰還するとの事 でも置き手紙感覚で他の大陸から人族とドワーフ 獣人族とエルフ 魔人族以外の別勢力の関与が近々あると推測されているのでこちらも主力を取り戻すべきだと思ったので開きました」
「息子さん頑張ってるのねぇ〜 にしても面倒事に巻き込まれるなんて災難じゃない」
「んで理由は分かったけども隊長 僕らもとことん探したけど未だ反応すら掴めてないよ?いやまぁ粗方捜索して残りは魔人族領だけなんだけどね」
数日前から3人には4番機の捜索のとして人族領 獣人族領 円卓の3つで反応を探してもらっていたのだ
しかし結果は無し よって必然的に魔人族領にあると踏んだのである
「ですが今は大陸が全て1つになってるんですよね?ならもっと遠い所にいるとかはないんですか?」
「あぁ僕らはこのカーナー大陸のみで活動が許されてるから必然的にカーナー大陸から別大陸に移動できないんだよ だから結果から見て魔人族領にいるのは間違いないよ」
「「はぇ〜」」
「ほんと創造神様は遊び心で誓約みたいなの決めるけどいざとなると役立つから考えて決めたのか完全に遊び心なのか謎だよねぇ〜」
「ほんとよねぇ〜」
クレアシオンシリーズを作成した創造神の息子 現在では創造神の位を受け継いだ彼は旧代暦の終期にとある誓約をミスト達に誓わせたのだ 内容はカーナー大陸以外の大陸への移動を禁止する これによってミスト達は未だ別大陸の地を踏んだことがない
「僕達をたった1人で1から作り出したんだよ?遊び心の中に実用性を兼ね合わせてこその自信作なんだと思うけど...」
「確かに主様ならそう考えそうですね ところでバグルス あの子達はどうしたんですか?」
「従魔の事?それなら魔人族領で捜索域を縮めてもらってるよ 北部の円卓南側にはデスハウンド 魔人族領南部の樹海にはスライムグラトニアとパラドックスパイダー 西部の平野にはタンクスコルピウス 東部の山岳にはワームエクスプレスとエンプレスドラゴンを配置してる 無論成果はなし 1つ分かることといったら回収された可能性が高いってとこかな」
バグルスのコンセプトである''殺戮''はその異様な殺し方だけでなく数と質による一方的な虐殺も兼ねられているのだ 1つは契約精霊 もう1つに従魔契約というのがありバグルスは膨大な数の配下を従えている 従魔となった魔物も様々なので 偵察 戦闘 支援なんでもござれなのだ
「やっぱり直接乗り込むしかない?それかもうしばらく待って出張ってくるの待つ?確か魔王はリーリエの起動式を仮だけど作り出したんだよね?なら円卓に投入するかもだし」
「流石にそれはないと思うわよミーディア あいつかなり慎重だったし 私を目覚めさせるためだけに''魔喰らいの小部屋''使ってたんだからね?しかも立ち位置がかなり離れてたし 私がミーディアに倒されたって報せも届いてるだろうから良くても護衛に付けてるんじゃない?」
「う〜ん...そっかぁ...」
旧代暦にも魔王なる存在はいたが今は新代暦 いくらエルフと同等の寿命を持つ魔人族だとしても交代は何度も行われているはずだ 今はどんな人物なのか それは魔王に操られたリーリエにしか分からない
「そうよ...そうよ!あの野郎ったら私を罵倒しまくったのよ!それはまだいい 私だけならね!でもよ!?あろう事か野郎ミーディアの事を馬鹿にしやがったのよ!何が お前程度が神殺しなら隊長格も大したことないな よ!私が3分の1しか出力出来てない状況で判断してんのよ!ゼッテェーブッコロシテヤル!!!」
「賛成!賛成です!隊長どうせ中央に用があるんです ついでに魔王を葬ってやりましょう」
「隊長モテモテだねぇ〜」
「ははは...はぁ...大丈夫でしょ いずれそういった機会もあるだろうしね さてリーリエの言う通り護衛に付けてる可能性が1番高いから一先僕とバグルスの契約精霊で魔王お膝元を偵察 それでも反応を見つけられなかったら魔王城に殴り込みだ いいね?」
「「「了解!」」」
で
「ニッシシシシシ 出番!出番!遂にみーちゃんの役に立てるぅ!ヤッホーイ!」
「そうね 私もバグルス様からちょくちょく仕事を貰ってたけど小間使いな感じだったし こんな重要な役目を下さったのだからとても嬉しいわ」
「我としてはあの最上位精霊を2人も運ぶとなって内心恐々であるぞ」
魔人族側西部の草原と獣人族領の樹海入口の間を縫うように飛ぶ影 その背中には2人の少女がちょこんと座っている
「うぇ?あまりに堂々としてるから何ともないだろうって思ってたんだけど...」
金色混じりの橙色のポニーテールに同じく橙色の瞳は陽気な雰囲気を醸し出し その華奢な体と相まって常に元気100%な印象を与えるだろう 空間を移動する力を持つ まっちゃんこと瞬空精霊マドミリア 空間を捻じ曲げ移動から偵察はもちろん空間を切断し相手を真っ二つにしたり捻じ曲げグチャグチャにしたりと以外にえげつない最上位精霊だ
「それ思った やっぱり知らぬ間に上下関係とか出来てたりするの?」
女の子座りにマドミリアに隣で体育座りしている群青色のサイドテールに右眼を眼帯で覆っている赤目の隻眼少女 視力強化や聴覚強化といった完全偵察特化 さっちゃんこと偵察精霊サーチャー 気配だけでなく視線 呼吸 動きに敏感で事偵察においてはリーリエに劣りこそすれど精霊で右に出る者はおらず だが戦闘力は皆無な少々風変わりな最上位精霊だ
「うむ 勿論だとも 其方等は最上位精霊 我らは魔物 魔物は精霊に勝らずである 故に精霊は我らが敬愛すべき上司として見るべきと決まっておる それに...可愛いしの...」
2人が今座っている者 緑色の鱗は小さく1枚1枚が綺麗なカーブを描き肉が少しも露出せず綺麗に体を覆っている その翼は三角形のようになっており足は地球のウル〇ラマンのように全く動かず反っている
顔も角が小さく龍の形を取っていても鱗によって流線型になっており龍の面影が殆どない しかしその身体は速さに特化した形なのが分かる 現に今も砲弾の如く飛翔し周りの景色が良く見えない
ソニーこと通称音速龍 ソニックドラゴン 音を置き去りにして空を飛ぶ新緑の龍だ
「ん?何だって?ゴメン最後ちょっと聞こえなかったんだけどもう1度言って?」
「何でも無い 我々にとっては御褒美です と解釈すればよい」
「...なんだか嫌な予感しかしない...」
魔物は基本知能は持たないが上位種とされる同種の魔物より秀でた能力や戦闘技術を持った魔物や烈種とされる通常とは別の進化を遂げた魔物は差はあれど例外なく知能を有する バグルスが使役している従魔達はその殆どが烈種であり 本能と理性を分けて行動出来る程の知能は有している だがしかし高い知能がある事は当然本能とはズレた感情を持ったりする訳で...従魔達の間では美少女しかいない最上位精霊達やクレアシオン部隊の女性陣に対してある種の感情を抱いているのだ全種共通で
「(ハァ...ハァ...サーチャー殿のお尻とマドミリア殿の太ももの柔らかな感触が背中に...我生涯に一遍の悔いなしぃ!!!)」
「...まっちゃん...何だか悪寒を感じるんだけど...気のせい?」
「さっちゃんったらぁ変な事言わないの!バグルスさんの従魔達は皆変態なのは今更何だから」
「!?」
「そ...そんな事ある訳...なかろう?...変態なのはグラタンだけだ...グラタンだけだ!!!」
グラタンとは同じく魔人族領の南部にある樹海でトリックスパイダーと呼ばれる蜘蛛の魔物の烈種 パラドックスパイダーと共に行動しているスライムの上位種 スライムグラトニアの愛称だ 因みにバグルス命名である
「...ソニー...あなた達変態だったの...後でバグルス様に報告しておくから...」
「っふ...ふふふ...バレてしまったのなら仕方ない しかし残念であったなサーチャー殿!実はバグルス様からこの感触を細かく報告してほしいと頼まれておるのでバグルス様も同罪である!我々の同志である!ふっははははは!」
「バグルス様まで...バグルス様だったら...その...んだけど...」
「「ん?」」
「な...何でもない!」
バグルスが使役している精霊と魔物は全員バグルスに多大な敬意深い忠誠を誓っているだけでなく ある程度望みを叶えてくれたり 機密事項以外は全て話してくれたり 気さくだったり そのため全員から熱い信頼を得てる その中にはまぁ...バグルスを意識してしまう者もいる訳で...
「マドミリア殿 我にはどうもそうだと思われるのだが」
「うん...ソニーここは応援してあげよ...?バグルスさんはみんなに優しいけどこれと言って好きな人がいるような感じじゃないし...敵も多いし...ね?」
「うむ...そうであるな...」
「...何だかちょっと悲しい...」
そんなこんなで数時間 円卓を越え 今は魔人族領と獣人族領の境目である平野の上空で旋回しながら速度を落としているところだ
「ねぇソニー ここから魔人族の国まで歩いて行けっての...?」
「いや ここからは乗り換えである ほれ下を見てみるのだ タンクスコルピウスがお2人を乗せるのを今か今かと待っておるぞ」
「...ソニーよりは...マシ...?」
速度を落とし垂直降下で降り立ったソニーは背中をタンクスコルピウスに近づけ二言三言言葉を交わすと颯爽と飛び去って行く それはもう来た時の倍 音の壁を突き破って
「...帰りどうするんだろ...」
「...考えは...あるんじゃない?...」
「どうやら''ベルセルク''自体がここに来るそうですよ マッハは出せないとの事でお2人は先行隊として運ばせたとソニーが」
まだ声変わりを終えていないような中性的な声を発するのは3人目の最上位精霊...ではなく光沢ある黒光りした一定間隔で隙間の空いた何重もの甲殻でその身を包む蠍系の魔物ヴァシュムの烈種である たんちゃんことタンクスコルピウスだ 空間装甲とも言える何重もの甲殻とドリルのような右腕に破城槌のような左腕 この時点でその特徴的な姿を凌ぐ程の存在感を晒しているのはアンカーの形をした尻尾の途中から枝分かれしているマズルブレーキのような先端を持つ太い筒...主砲だ 口径なんと183mm
タンクスコルピウスはその重厚で上級魔法も聖魔武器でも録に効かず経験と実力が無ければ倒すことが出来ない魔物の中で龍種を凌ぐ特に厄介な存在だ その5メートルもある巨体に似合わない俊敏性と6本脚による小回り 回転するドリルの右腕は如何なる攻撃をも掻き消し敵を切削 破城槌のような左腕は如何なる攻撃をも盾のように打ち消し敵を潰す アンカーのような先端の尻尾は薙ぎ払うだけで斬撃となり 枝分かれしている主砲は一瞬で敵を破壊する その有様は攻城兵器であり鉄壁の要塞 通り名として移動要塞の名が付けられる程
従来の蠍系の魔物であるヴァシュムとその進化系であるテリオスヴァシュムと全く違う姿と攻撃なので別系統の進化である烈種の中でも特に有名な魔物だ
「ほぉ〜んじゃ行きと帰りよろしくね」
「...よろしく...たんちゃん...」
「ヌッフ!勿論ですとも!道中お二人の安全は保証致しましょうタンクスコルピウスの名は伊達ではない!」
たんちゃんは巨躯で多脚なので何故か道中にある岩や小さい魔物を乗り越えたり避けたり潰したり潰したり潰したりで不整地でありながら快適な移動となっている しかもそれなりに速い
「こういった不整地では何より水平感覚が大事なのです 軸がぶれていては録に走れませんからね その分の多脚は軸を固定しやすく小回りが効くのでこういった場所は二脚より多脚が適しているのです」
「ほへ〜 確かにバグルスさんの従魔は4本足は多いけどたんちゃんみたいな6本足は皆空飛ぶから知らなかったよ」
「そうなのですか?それはそうと4本足代表のでんちゃんは円卓のような踏み固められた場所が1番活躍出来ます」
「...でもでんちゃん速すぎて小回り効かない...」
でんちゃんとは今現在魔人族領北方に位置する円卓南部で魔人族の活動の監視を行っているデスハウンドの事だ 今更だがこういった愛称は全てバグルス命名である 精霊も魔物も例外なく全員に
「さて 魔人族領唯一の国フィンブルゲイザーまで数刻あります 侵入してからは物資は一切の補給が望めませんので今の内に最終点検をしておいてください」
「はいよー」
「...分かった...」




