19 エグい神代アーティファクト
Cランクダンジョン最下層 唐突な環境変化の変化に加え落とし穴や矢といった基本的な罠から粘着性の糸や粘着性の液体といった変な罠 ちょっとした呼吸の間や奇想天外な奇襲を行ってくる魔物達 通称イタダケナイ最下層の名に相応しい小細工の質が高いヤラシイ所である
「やぁぁぁぁ!そこは絞めないでぇ!」
「晶!こんのぉヤラシイクモめ ぶっ殺してやる!」
「...ミドヴィアさん?さっきから女性陣に対しての攻撃が多くありません?」
「通称イタダケナイ最下層ですわよ?女性に対しての攻撃がアレでもおかしくありませんわっふ!」
この階層 主に糸を吐く昆虫系と奇襲が得意な狼系の魔物が多く出現するとレヴィより伺っていますわ しかも昆虫系の魔物は女性に狼系の魔物は男性にと攻撃目標が統一されているという話も 最初は物陰や草むらからの奇襲のみだったのですがこの最下層には動きに磨きがかかっているとのこと
「どわ!地面と空から同時なんて鬼畜だろ!火蔵後ろの薄いの頼んだ!」
「ほいほ〜い 克は前だけに集中しててね!」
「装道後ろだ!」
「はいよ!」
「っは!っふ!アカリ私が守備に付きますのでユサハの援護を!」
「了解よ!」
中盤辺りまでは皆さん連携が疎らで敵の対処に手間取っていましたが今は声掛けを中心に隙のない連携を行えていますわ 理解力と判断力が高いおかげで本来連携では悪手の声掛けが予想以上の効力を生んでいるようで レヴィが言っていたニッポンジンとやらはこういうのが得意なのでしょうか?
「ミドヴィアさん!クモ17匹そっち行ったぞ!」
「ファ!?17匹いたとかマジかよ!!」
「問題ありませんわ''チェーンヴィアス''4本追加!チューンウェポン!魔法式展開【伝奏白拍子】!」
私が所有する神代アーティファクトの1つである''白拍子''の特装魔法式【伝奏白拍子】は侵入すれば即位置バレする監視結界を応用した攻撃で結界内の敵を把握し一掃する攻防一体の剣技であり魔法
私が扱うのは戦鎚に戦斧 鎌などの重装から刀や槍 剣といった軽装を私の精霊魔法とレヴィの原初魔法を織り交ぜた鎖 神精刄鎖''チェーンヴィアス''に取り付ける一般的にはマイナーな技法ですの けれどもこれは【伝奏白拍子】とはとても相性の良い技法でしてね?
「うぇぇ...ミドヴィアさんすっげ...クモどころか攻撃まで全部鎖でぶっ潰してるよ...」
「前から思ってたんだけどミドヴィアさんって実はドS?」
「いやあの動きは舞に似ているから鞭術とかと相性がいいんじゃないかな 無駄のない綺麗な動きだ 8本の鎖と先端にある武器が隙間もなく絡まない位置で動かせるなんてミドヴィアさん技量はかなり高い水準だろうね 因みに晶あの魔法陣何?」
「あれは魔法陣というより結界の類じゃないかな?魔法はこの世界に来てだいぶ調べたから間違いないと思う」
「あっそっかぁ...」
「あ 終わったみたいだよ」
「っふ この程度何とでもありませっひゃぁ!?」
ベチョ
「「「「「「っあ」」」」」」
クモの糸を叩き落としていたせいで辺り一面白一色 そこに受け身も取らずに転ければどうなってしまうかは想像に難くない
「...最後の最後でこんな事になるなんてあんまりですわ...」
「ミドヴィアさん取り敢えず拭きましょ?絵面的にマズいから...」
「な...なぁ幽砕這...は無いとして装道に純銅...アレどう思う?」
「「エロい!!」」
「ちょっと男子ぃ!」
そんなこんなで最下層のボス部屋直前のセーフティーエリアで私達は休息を挟むことにしましたわ 結局3回の環境変化に巻き込まれたせいでお腹を壊したみたいですし
「なぁミドヴィアさん 移動中やセーフティーエリアにいる時口が僅かに動いてるのよく見るんだけど誰かと会話してるのか?」
「あぁ...実は私精霊と契約していますの 紹介したいのですが極度の人見知りで姿を見せてくれなくて...」
「そか精霊かぁ流石ファンタジー...ありがとね教えてくれて」
「いえ」
あ...危ない...先日レヴィがリーダーを務める部隊の1人が勇者さん達と1戦交えた後今後も関わるような言葉を放っていたらしいのでその事を勘繰られたら流石に私には誤魔化しきれませんわ...アガノ ユサハ彼からは薄くですが血の匂いがこびり付いますの 恐らく召喚前は暗殺者 そのせいか他よりも洞察力や推察力が飛び抜けている様子 まぁ相手の実力を測るのは出来ていないみたいですが
「おし皆準備オーケェ?」
「「「「「オッケイ!」」」」」
「行きますの?では事前情報を まずボスは今までとは変わり単純なパワータイプと聞きますわ 難易度がダンジョン内での行動によって変化するのがここの最大の特徴と言えます セーフティーエリアにいたとはいえ極限環境変化を耐えたので最高難易度に近いはずですわ 最初から全力で掛かること推奨します それにパワータイプですが狼系なのでスピードもあります常に最悪を想定し最善の行動を心掛けましょう 宜しいのではすわね?」
「「「「「「了解!」」」」」」
地味で巨大な石造りの扉を通った先は巨大な円柱形の空間 全体が石の壁でまるでくり抜かれて出来たかのように繋ぎ目のない完全な閉鎖空間 天井は暗くどこまで伸びているのか分からないぐらいある
しかしその巨体をハッキリとミドヴィアは捉えていた それと同時にソレが落ちてくる
「狼...なのは分かるんだが黒い...黒過ぎない?」
「黒過ぎるというよりもう真っ黒だろ 周りが暗いせいでよく見えねぇや!俺視力いくつだっけ」
「今明かり付けるよ〜【ライト】」
狼...にしてはかなり異質な姿をしているソレはSランク指定されているはずの名をスコルウルフェン
狼の顔に4つの赤い目 真っ黒な巨体には強靭な脚の狼の形なのだがその背中からまるで杭のような太い脚が生えている 尻尾は長く先端は鎌のような形をしており途中には鋭く尖った毛が揃っている
背中の杭のような脚はギチギチと音をたてながら宙を彷徨う 歯と歯の間からは唾液が垂れ放題
Sランク冒険者数人でやっと対峙できる相手であるためSランク指定されているこの魔物は本来Cランクダンジョンには存在していないはずの魔物なのだが勇者達はそんな事は知らずに戦闘態勢を取っている
いや 1人だけ動揺している者がいる
「スコルウルフェン!?何故Cランクダンジョンにいますの!?」
「どしたんだミドヴィアさん 少し変だけど勝てそうじゃん」
「スコルウルフェンはSランク指定の魔物ですのよ!?Sランク冒険者数人でやっと対峙できる魔物がここにいるのはおかしい事ですの 難易度変更があるとしてもSランク指定が出る事はありえない事 いったい何が起こってますの...?まさか...いや今は目の前の敵 皆さんは下がってくださいませ 私が相手しますわ」
レヴィの判断から勇者の皆さんは旧代暦の一般人 今の新代暦で見ればBランクが妥当との事 いくら質が落ちていると言えどランクはランク 上位に勝つには運しかない ならば最上位精霊である私が出るしかないのです
スコルウルフェンは旧代暦では一般の魔物でしたわ 繁殖力の高いゴブリンやオークより目撃例が多かったはずです
「SランクってあのSランクか!?確かこの前のあのリーリエって美人さんが俺達はBかC程度って言ってたけど...なぁ克勝てると思う?」
「分かんねっす こういう時は幽砕這に頼るんだ でどうなんだ?」
「ないです」
「ん?何だって?」
「勝て ないです」
「あっそっかぁ...」
どうやら皆さん理解した様子 レヴィから任されている以上死んでほしくないので大人しく任せてくれると助かるのですが...おや?
「ミドヴィアさん あんたは強いSランク相手に時間稼ぎではなく俺達に下がれと言ったという事は確実に倒せるだな?」
「えぇ多少時間は掛かりますが倒せますわ 後のことは後で考えればいいだけですし それに私達には心強い味方が付いてますしね?''チェーンヴィアス''全展開 チューンウェポン さてなるべく早く終わらせましょう」
先程から心強い味方と言ったせいなのか皆さんの顔に信頼の2文字が見えますわ レヴィが見ているからという意味なのですけども...何も知らないのは楽ですわねぇ...
「さて レヴィこれはいったい何が起きているのでしょう?法則が書き換えられていると予想しますが...」
『いや 僕が見た限り法則書庫』の入室記録に名前がないから書き換えられたんじゃなくて誰かが意図的に配置したんだと思う かなり高位の神だろうね』
「ならこの先にヒントがあると見て良さそうですわね さっさと片付けてしまいましょう!」
最上位精霊と新代暦では上位の魔物 本来なら片手間で終わる者なのですが今は勇者の皆さんの手前ある程度加減しないといけませんわ 神代アーティファクトの力はなるべく使用しないように心掛けませんと
「まずは初手 ''デスバールナイト''【デスサイスハリケーン】!」
「グルルルル...」
精神干渉系魔法が主な闇魔法を孕んだ風が竜巻となりミドヴィアとスコルウルフェンの姿を覆い隠す 勇者達の視線を感じなくなった所でスコルウルフェンが先手必勝とばかりに強靭な足で突進を行ってくる
「愚直ですわね''マッシャー''【破城槌】」
「ガウ!...グルル...」
スコルウルフェンの鼻先に波状城鎚''マッシャー''による衝撃の鉄槌を打ち込めばスコルウルフェンはすかさず距離を取る 完全に出鼻を挫いた形だ どんな攻撃を仕掛けようと どんな奇策を用いようとしても絡まることなく縦横無尽に飛ぶ''チェーンヴィアス''によって長射程化した14本の武器に阻まれる 完全にスコルウルフェンの不利な形だ
「仕掛けてきませんの?ならこちらから''ランカスター''【ストライク】」
「オン!ガウ!ガウガウ!」
「正々堂々戦えと言ってますの?何を言いますか正々堂々と戦っているではありませんか これが私の戦法なのですから致し方ないでしょう?''ライラプス''【絶刺】!」
槍に斧を取り付けたと表した方がよさげな程に槍部が長いハルバードに戦鎚のような重りを備えた神代アーティファクト 追刺斬破''ライラプス''固有魔法は【絶刺】 相手に直撃するまで永遠と自律し追跡と攻撃を行う厄介な魔法だ しかも攻撃力を捨て貫通に特化した槍部を先端に突っ込んできて貫通してしまえばあとに待ち構えるのは斧と縋による切断と抉りに重い衝撃という辛い三重攻撃 さらに重りと槍部の長さのせいで抜くことが困難な鬼畜仕様 不純物を取り出さないと回復魔法は機能しないので''ライラプス''は残虐性100%な一撃必殺のレッテルが貼られているとか
『おぉう...''ライラプス''を使うとか僕ちょっと鳥肌が...』
「そ...そんな事言われましても...レヴィから頂いたアーティファクトの特徴を把握しきれてないので丁度良いかと思いまして...」
『えっと...''ライラプス''は僕達の記憶じゃ特徴的過ぎるしここで試すなら別の物を...』
「もう遅いですわ」
「オフ!オフ!ッガ...キャウン!ッガッガ...ガウゥゥゥ...グ...グ...ッガハ...」
ドサッ
''ライラプス''使用上の注意 普通に扱うだけならまだしも固有魔法である【絶刺】を行使した際
永遠に追い討ちを仕掛けてくる''ライラプス''が直撃した時は槍部で押し止める事は不可能なので必ず斧による切断と抉り行為が発生する 切断はあくまで肉のみを断つだけなのだがその後の抉り行為は傷口を広げるだけでなく骨や神経 臓器に血管という内部組織を外に引っ張ってくるので心臓周辺や頭に直撃したときは...とてもグロテスクな光景となる 精神の状態的に恐怖とは無縁な戦神に唯一恐怖とトラウマを植え付けたのがこの''ライラプス''またの名を残虐性100%な一撃必殺 なら首に直撃した目の前のスコルウルフェンの状態とは?
「...あの...えっと...その...旧代暦の時神族関係の者が''ライラプス''を見た瞬間逃げ出した理由が分かりましたわ...これは...確かに...」
『っう...やっぱり苦手だよ...グロすぎて...』
目の前に倒れているスコルウルフェンだった物 ''ライラプス''が貫通した所から骨や神経を始め脳髄や心臓 眼球までもが首に空いた穴から飛び出していた 誰が見てもあまりのグロさに気絶しそうな光景だ
とその時 すこし動揺してして制御を怠ったせいかミドヴィアとスコルウルフェンを覆っていた【デスサイスハリケーン】が晴れる 勇者達が近づいてくる スコルウルフェンだった物を見る
「「「「オェェェェェ」」」」
「「っうぷ...」」
「ユサハとアカリ以外吐きましたわね...」
『だって''ライラプス''だもん 残虐性100%な一撃必殺だもん 仕方ないね』
それから数分後 皆が落ち着いてやっとスコルウルフェンを倒した時に開いたいつの間にかあった扉を通る
ダンジョンをクリアした事で得ることが出来る罠や気配などを感知できる風の固有魔法【エアスキャナー】の知識を会得出来る石版ともう一つ隣にポツンと佇んでいる文字が刻まれている石碑
「なんだこれ なんかの文字っぽいが...分かんねぇや んで【エアスキャナー】だっけ?さっさと情報貰って練習練習〜」
「そだな」
「だね〜」
「ミドヴィアさんこの文字いつ頃の文字か知ってる?」
「えぇ旧代暦 俗に神代と呼ばれている時代の初期に神々が用いていたと仮説がある神聖文字ですわ かなり昔から研究されていますが未だ数文字しか解読出来ていないとか」
「なるほど この世界の人ですら分からないなら俺達には分かるはずないな」
「いえ 私の身内に分かる人が5人いますわ」だなんて口が裂けても言えませんわ 国に従わない彼らでもどこからポロッと出るか分かった物じゃありませんものね
「さて レヴィこれなんて書いてありますの?」
『あぁ...どう見ても主からの伝言的な物だねどう見ても「チィーッスレヴィちゃん!元気してた?俺は元気してるよ!まぁ今はチョォォット面倒事に巻き込まれてて連絡出来ないから伝言置いといたよ レヴィちゃんはよくCランクダンジョンで遊んでたもんね?んでレヴィちゃんは目覚めてまず''レイフォース''に接続して分かっただろうけど大陸が1つになってる つまりは...アレだよアレ新勢力介入による世界征服進行だよ 僕がそっちに戻るまで征服されちゃダメだからね?それと「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」するのはOKだからそこんとこ判断よろしく〜」だってさ...はぁぁぁ...面倒事が増えたよ...早めに全員揃えないとね 勇者達と一旦分かれてこっちに戻ってきてもらっていいかな?』
「まさか全文読むとは...いいですけど...何かなされるので?」
『うん 当面4番機の捜索に本腰を置くよ 捜索系や探知系のアーティファクトに僕達 もちろんミト達にも協力してもらうからね』
「ふふ 了解しましたわ 皆さん私は先に戻るのでお先に失礼しますわ」
「ほ〜い じゃな〜」
「バイバァイ」
「機会があればまたいつか」
部屋の奥にある魔法陣...転移陣に足を踏み入れる 光が体を包んで収まれば目の前はダンジョン入口...ではなく''ベルセルク''へと戻っていた 目の前にはモニターの前に椅子に座ってこちらを微笑みかけている 愛しき主の姿
「ふぅ...やっぱりレヴィの近くが1番落ち着きますわ」
「そりゃそうでしょ 何たってずっと一緒にいた関係だからね」
「ふふふ...そうですわね」
「そうだよ さて暫く休憩しようか 僕ちょっと疲れたよ...」
「そうですわね ちゃんと寝てなかったせいか私も疲労が溜まってますわ ではレヴィおやすみなさい」
「ふぁ〜ぁ...おやすみ〜」