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女性を助けるため、暴漢を殺めてしまい全てを失ったが、助けた女性が「今度は私が…」と手を差し伸べてくれた。  作者: nayaminotake


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第14話

良彦の初公判が始まる前日、定時となり会社を退勤した真理は、オフィス街の裏路地を歩きながら花音へとメッセージを送っていた


【真理:今から花音さんの事務所に向かいます】


【花音:了解です、こちらも当日の資料を纏めておきます】


短いメッセージのやり取りを追えスマホを肩にかけたバッグにしまおうとしたその時


!?


急に背後から誰かに口をハンカチのようなもので塞がれた


一瞬であの日、公園で襲われた出来事がフラッシュバックする真理


だが、そんな真理の意識は一瞬で途切れる。




「――こ、ここは……」


気が付くと真理はベッドの上にいた


すこし身体がしびれて上手く動かないが腕の力で何とか上体を起こし周囲を見渡す


「どこ?ここ……」


見慣れない部屋の間取り、雰囲気的にホテルの一室だと思われるが


「え?どういうこと!?」


窓の方へと視線を向けるが窓は外から何か金属の板状の物で塞がれ、外の様子が見れなくなっている


「そ、そうだスマホ!」


服のポケットやベッドの周りを探してもスマホが見当たらない


いまだに上手く動かない身体を引きずり芋虫のように這いながらベッドから転げ落ちると何とか入口付近にまで進みドアのノブに手を伸ばし全体重で引っ張った


ガチャ


しかしノブを引いても一向にドアが開かない


「え?鍵がかかってるの?」


よく見ると内側からの鍵のつまみは外されており、中の構造部を目隠しするように、これまた金属のプレートが溶接で取り付けてあった


「な、なんなの…これ」


ドンドン!!


「だ、だれか!!誰か助けて下さい!!」


何度も何度もドアを叩き助けを呼ぶが周囲には人の声どころか、車のエンジン音も聞こえてくることは無かった


「な、なんで私こんな所に……」


真理はドアノブを支えにフラつきながらおぼつかない足で何とか立ち上がると部屋の壁つたいに移動していく


見渡すとそこは約20畳ほどの部屋の広さで、先ほど真理が横になっていたベッドと奥にはトイレ、バスルームに洗面所、そして大型の冷蔵庫が備え付けてあるキッチンが確認できた


しかし、電話の類やパソコなんかは見当たらず大型のテレビだけが壁に設置されていた


真理は倒れ込むようにベッドへしがみ付くと、ベッド脇に置いてあるテレビのリモコンを手に取り電源をつける


テレビに映る日付は4月5日……


「今日は鳥居さんの初公判の日だ……」


真理はチャンネルを動かしニュースを探す……


「本日初公判を迎える―――」


!?


そして国営放送のチャンネルでリモコンを操作する指が止まる


「先月、深夜の公園で住所不定外国籍の男性ガド=マウイ氏 54歳を酒に酔った勢いで暴行し殺害した容疑で現行犯逮捕された鳥居良彦被告34歳……」


画面には鳥居さんの顔が小さくワイプで映し出されている


「酷い…これじゃ――」


そうこれじゃ、例え無罪となっても良彦は周りから「殺人罪で起訴された男」として白い目で見られてしまい肩身の狭い生活を送ることになるだろう


「くっ!!」


真理はテレビの電源を切りリモコンをベッドの上に叩きつけた


そして仰向けに寝転がり天井を見上げる


「何としてここから出なきゃ……」


―――しかし、真理の決意とは裏腹にこの部屋からの脱出は困難を極めた


窓ガラスは内側からは割れても、その外は金属の板はビクともしない


ドアの外に向け連日のように助けを求め叫ぶが応える人はおろかそもそも人の気配すら無い


日の光も差し込まず時計すら見当たらない部屋の中で、唯一時間を確認出来るのはテレビのみ…


真理はニュースの時間になれば必ず確認するようにしているが、初公判以降で良彦の裁判についてのニュースが報道さることは無かった…


――真理が監禁されて一週間が経過した……


大型の冷蔵庫には飲料水と冷凍食品が大量にストックされており、1週間経過しても真理ひとりでは半分も消費しきれてない


冷凍食品を電子レンジで温めてる時、ふとその袋に目を向けた


≪角田フーズ冷凍シリーズ≫


「そうだ……1週間も私が行方不明になっていたら、お父様やお爺様が必ず…必ず」


そう、父や祖父なら必ず警察や興信所を使って私を探してくれてるはず……


「きっと……」


「速報です、本日3回目の公判を行っていました、〇〇公園ホームレス殺害事件についての続報です」


「!?」


国営放送のニュースキャスターが良彦の裁判についての速報を伝えてきた


真理は食い入るようにテレビの前に跪くとテレビを抱えるように両手で握り女性キャスターの次の言葉に耳を澄ます


「鳥居被告には懲役4年、執行猶予なしの有罪が確定しました、担当弁護士のコメントをお聞きください」


愕然としながら床に頭をこすりつけ泣きじゃくる真理


「あぁ――私の……私のせいだぁ―――うっう…‥‥」


「この度、鳥居氏は上告する意思はないとの事で検察側との話し合いの結果……」


「え?」


テレビから聞こえて来たのは、花音の声ではなく男性の声


「え?何で?なんで花音さんが弁護してないの………」


この時、真理は初めて花音が良彦の弁護から降りたことを知った。


シュ―――


その時、部屋のエアコンのダクトから何か空気のようなものが送り込まれる音がしていたが、真理はそのことに気付く間もなく意識を失うのだった。





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