人魚マニアの男性との見合い!?
突然、にしきは1人の女性から声をかけられた。
「柚子野さん?」
すごく綺麗なひとだった。
にしきを知っているのだろうか。にしきは、相手が誰なのかわからなかった。
「そうですけど…」
にしきがそう答えたが、そのひとは人気者っぽくて、他の人達に呼び止められてすぐどこかへ行ってしまった。
ここは同窓会会場の入り口。にしきの母校の女子校の門の前だ。にしきは知り合いが1人もいなくてつまらないから早々に帰ろうとしていたのだ。
突然、にしきに意識が流れてきた。
前の金魚を飼っている世界では、綺麗な顔のこのミステリアスな女性は知らないが、この人魚を飼っている世界では、にしきは人魚部員だったのだ。先程の女性は、こちらの世界のにしきが所属していた人魚部の部長だ。
人魚部は、1年生~3年生まで30人位いた。人魚部員は、人魚の格好をして写真を撮っていた。それで皆人魚になりきっていて、でも水の中には入らず、空想の水の中に入った感で楽しんでいた。それを毎年人魚写真集として部員全員へ渡していた。
人魚のコスプレ衣裳を自分で作るのは、なかなか大変で、しかしそれが人魚部の醍醐味でもあった。皆それぞれ工夫をして、各々の考える人魚というものを作っていた。
前の世界のにしきの友人2人は、何だかんだと大学だ専門学校だと地元を離れ、北海道ではなく本州へ行ってそのまま向こうの人と結婚をして帰ってこなくなっていた。
何度か地元に帰ってきたときは数回会ったが、何だか向こうが眩しすぎて、こちらから避けてしまったのだ。
にしきは高校を卒業して、特にやりたいこともなく、実家から4時間パートに出ているのだ。
にしきは専業主婦希望で、そんなにしきでも良い、と嫁にきてくれと、言ってくれた男性も昔にいたが、男性の母親がしゃしゃり出てきて、年収の少ない外で働かない女はだめだと反対してきて破談になったこともある。(お付き合いはしていなかったが、見合いのようにいきなり結婚を前提の付き合いをしたいと男性に言われたのだ)
にしきは、あまり外で働くのは好きではなく、家で家事をしているのが好きなタイプだった。実家で母もパートをする兼業主婦なので、母がほとんどやってくれてはいるが、当然私も家事をやっていたりしたのだ。
こちらの世界ではにしきの恋愛事情は、どうだろうか?
にしきは、家に帰ってきた。夕方になっていた。
いつもは仕事でいない父と母が居間のソファーに座り、何やらにしきに、お見合い写真を持ってきた。
「人魚の写真集をみたという男性からの話なんだけどね」
母が言った。
その途端、にしきの意識に流れてきた。
この世界では、友人の水口、初瀬川も、にしきと同じ人魚部で、卒業と同時に人魚マニアの男性達と見合い結婚したのだった。そしてこれは、この世界での、にしきの高校の、長く続く伝統だったのだ。




