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13 富裕層の地球脱出計画

短編作品「逆にゴブリンがこっちの世界に転移してきたら」を分割したバージョンです。

内容は変わりありませんが、少し読みやすくなると思います。

(短編バージョン)https://ncode.syosetu.com/n6469ji/

ニューヨークの摩天楼と呼ばれるビル群の一角に、タケダ並びにゴブリン事業を推奨していた著名人や言論人が一堂に会していた。


彼らは日本が危ういと感づくや否や、早々にそこから脱出していた。この集まりは、実業家のホリキタが企画した懇親会だった。


「いや、タケダさんも、悪党ですよね!ゴブリンを増やして大儲けして、次はゴブリン駆除のシステムで大儲けじゃないですか」


「人聞き悪いことを言わないでくれ、タカヒロくん。私は国の為に尽くしたのだ。だが、国が私を信じてアメリカからの要請を突っぱねなかったから、こうなったのだよ」


普段なら気にも留めないユーチューバーもタカヒロの軽口に、タケダは珍しく不快感を露にする。そもそもタケダは愛国の士であり、真剣に日本という国を憂いでいた。


だが、彼の愛国心に、国民は含まれていない。


タケダにとって国民とは、競争に勝ち上がった「勝者」のみを指しており、皆が勝利を目指し競争する力こそが、国を発展させる原動力と信じていた。さながらサーキット場のレースカーの如く、スピードがスピードを釣り上げ、さらなる加速を生み出す力が、無限の成長を生むのだと。

それ故に、コースから脱落した者は障害物でしか無いのだ。本来なら社会から完全に消えて欲しいが、それが無理なら、せめて成長の加速熱を冷ます愚行をしないでくれ、という訳だ。

だが、だからと言って脱落者に向けたケアを考える能力は、タケダには持ち合わせていない。「好き」の反対が「嫌い」ではなく「無関心」と言われるように、タケダは敗者には、とことん無関心なのだ。

それ故に、タケダは私利私欲と言われることが、どうしても我慢ならないのだ。


「全ては国家の為に粉骨砕身の想いで尽くしているが、これは後世の歴史しか理解も評価も出来ないことだろうな・・・」


タケダがちびりとワイングラスに口をつけると同時に、ホストであるホリキタが登場する。


「お久しぶりですね、皆さん。いや今日はお集り頂き、ありがとう御座います」


言うや否や、ホリキタは壁に映像を映し出す。どうやら何かのプレゼンテーションを始めるつもりのようだ。


「皆さん、うちの事業が宇宙開発に着手してることはご存じですよね?」


ホリキタは様々な事業を手掛けているが、近年は特に宇宙開発事業に力を注いでいる。多くの者は「現実派の彼が、なぜ子供じみた夢に財産を費やすのか?」と(いぶか)しがったが、知恵の回る者は、単純な宇宙に浪漫とか言う話でないことは、すぐに理解出来た。宇宙と言うものには無限のビジネスチャンスが潜在しており、その先駆者が莫大な利益を手にすることは容易に想像できる。

だが、狙いべきは1位ではなく、2位だ。誰かに先頭を歩かせ、やぶ道を抜けてから満身創痍の1位を踏みつけるのがビジネスの鉄則なら、ホリキタは少々、勇み足に映っていた。


「この度、私は『宇宙移住計画』を立ち上げ、その資金を募っています。支援者には、一等の区域に優先して居住できる権利を差し上げることが可能です」


稀有総代なホリキタの計画に、一同は失笑ならぬ、爆笑が会場を包む。だが、ホリキタは想定の範囲内の反応とばかりに、余裕の表情でプレゼンテーションを続ける。


「皆さんは祖国が終わると判断したや否や、素早く国を捨てる判断力と瞬発力をお持ちの面々なわけです。さて、日本から()()出来ても、世界から避難する準備は、ありますか?」


ホリキタは、ある映像をプロジェクターから映し出す。そこには、銃器を持ったゴブリンが闊歩し、爆弾を抱えたゴブリンが戦車に突撃していく様子が映し出される。


「すでに海外ではゴブリンを軍事転用する動きが強くなっています。これは訓練の様子ですが、実際の戦場に投入される日も、そう遠くないでしょう」


ゴブリンの軍事利用・・・

考えてみれば、労働力よりも先ず思い付くのは、普通はそこである。そういう意味では日本の特殊性がそこに至らなかったといった所だろう。


だが、同時にこれは、世界の戦禍が過熱することを意味していた。

なんせ、ある程度の知性を持ち、しかし愚かなので制御しやすい。そして彼らの本質が暴力と無秩序である以上、労働力で活用するより戦場のほうが遥かに適していると言えよう。

さらに着目すべきは、その繁殖の高さだ。猿1頭から5〜6匹産ませることができ、1年かからずに前線に送り込むことが出来る。いや、猿など使わずとも、占領地の人間の女性捕虜を使ったって、構わないだろう。

これはすなわち、誰でも容易に()()()()を用意出来る時代が来たという事だ。これは核爆弾を誰でも使用出来るに等しいリスクと言えよう。


「あまり、時間が無いかもしれませんね。私は出資しましょう!いや、是非、出資させて欲しい!」


ひとりの男がそう叫ぶと、それに続くように我も、我もとホリキタに押し寄せる。タケダはその様子を呆然と眺めていた。


「ゴブリンが兵器として使われる・・・か。かのノーベルも、今の私のような気持ちだったのだろうな」

※登場する人物はすべて架空の人物であり、特定の人間を揶揄するものではありません。

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