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VSダクネス2

勇者武器『付喪神』。

戦と鍛冶の神様の加護を得た鍛冶師の内の一人が鍛造した至高の一作。

勇者武器にはスキルが宿っており、付喪神は名前と同じく『付喪神』というスキルがある。

発動条件は『使い手が死ぬこと』。付喪神に使い手の魂が宿り、己が付喪神という武器となるというものだ。

そうして新たな付喪神となった者は、次代の使い手の力となるのだ。

付喪神は生前のスキルを使用することが出来るし、使い手の意識に干渉して戦闘スタイルを継承させることも可能(乗っ取りみたいで怖い…)。


だが、付喪神となった者が力を貸すかどうかは、付喪神自身が決めること。

付喪神に宿った魂は、認めた相手でなければその力を貸すことはない。

故に勇者が付喪神を軽く持ち上げることは出来ても、全員が付喪神の力を扱える訳ではない。その場合、死んでも付喪神になることもない。

ちなみに認めた相手でも、不要であればスキルを使うことはないし、使い手と付喪神が互いに息を合わせないと存分に力を発揮出来ないという欠点もある。


―――今こうして『破壊者』のスキルを使えたのは、シュリさんが俺を認めてくれている証ってことだよな…。


派生スキル『スレッジハンマー』。

これは『空を飛ぶ者に威力倍増』の効果があるスキルで、実はエレナさんの見立て通り、ヒヒイロカネゴーレム戦でも発動していた。ちゃんと発動出来た今なら、それがわかる。

ただ鳴曰く。付喪神に宿っている魂……つまりシュリさんと息を合わせないと100%の力を発揮出来ないのだ。

たぶんシュリさんは、ずっと俺に合わせようとしてくれていたんだと思う。それを知らなかった俺は、雑にぶん回して攻撃することしかして来なかったから、スキルらしいことが出来ずにいたに違いない。

実際、ヒヒイロカネゴーレムの時よりも威力がバカ高い。


「にしても、なんで最愛の旦那様を傷付けた俺なんかを認めてくれたんですかねぇ…」


薄らとした記憶だけど、オークキングは『まるでシュリの派生スキル!?』って驚いていた気がするし……もしそうならシュリさんってば、自分で旦那殺そうとしてません?

まぁシュリさんとしての意思はあっても、喋ることが出来ない以上は考えても仕方ない事ではあるんだけど。


地面に危なげなく着地して、叩き落としたダクネスの方を見る。

やがて土埃の向こうから姿を現した彼は……頭から血を流してはいるものの、ほぼ無傷であった。


「ペッ!なかなかやるじゃねぇか。思った以上に楽しめそうだ…!」

「俺は面倒臭くて嫌になる」


血を吐き出して、笑いながらそう言う。

大事な任務中はあまり表に出すことはないが、ダクネスは戦闘狂のきらいがあるとは書いてあった。

そういう奴ってどんなに手痛い攻撃をしても立ち向かって来るイメージだから、あまり相手にしたくない。

ダクネスはかなり頑丈なタイプなようだが。


「発想も戦い方も、本当にハンマー女そっくりだな。やっぱあの女の血縁者か何かか?」

「……ハンマー女…」

「シュリっていう五十年前に失踪した勇者のことだよ。お前、あの女のこと知ってんだろ?いきなり俺たち魔族とは戦いたくないとか言い出して、勝ち逃げしやがったんだよ。……教えろよ。今アイツはどこにいる?」


「それよりもまず、ご自分の心配をされては如何ですか?」

「ッ!?」


気配無く後ろから忍び寄った鳴が、ダクネスの羽に触れる。

そして一気に溜め込んでいた電気を放出した。


「2万V」

「コイツ!?」

「霹靂神!」


ダクネスに激しい電撃が襲い掛かる。

その直前、彼は両手の爪を地面に突き刺した。


「ぐぬぅおおおおぉぉぉぉぉぉ!?コイツは、効くねぇ…!」

「くっ。地面に電気を流して、威力を抑えましたか」

「正、解ッ!」


電流が弱まったところで、片方の爪を地面から外して鳴に振るった。

直撃する前に鳴は引き、俺の横に移動して来る。


「ヒヒイィィィィンッ!」


―――ドゴーン!


「ぐえーーー!?」


そこに一瞬の隙が出来たダクネスのところへ、どこからともなくシルバーが光速で突進して来た。


「この馬、神出鬼没かよ!?楽しませてくれるじゃねぇか!」


シルバーはダクネスからの反撃を受ける前に引き、森の中へと消えて行った。

自身の素早さを活かし、木々を利用して姿を見失い安くする戦法で翻弄しているようだ。


「すみませんマスター。決め切れませんでした」

「いや、いいよ。お前が無事なら……!?鳴!お前、その腕…!」


鳴を見ると、右腕から血がだらだらと流れていた。

全然無事じゃない!?


「少々大胆に攻め過ぎました。服屋さんにまた服を修復してもらわないとですね」

「いやそんなことより、その腕!?大丈夫なのか?」

「はい。安心してください、ザックリ行ってるだけです。後でポーションを飲めば治ります」

「今飲め!」

「むぐぅっ…」


マジックバックからポーションを取り出して、鳴の口に突っ込む。ダクネスはシルバーにも気を配らなければいけないから、そうそう攻め込むことは出来ないしな。

全く、もっと自分を大切にして欲しいぜ…。


鳴は細目になりながらポーションを飲み切ると、腕の怪我は跡形もなく消えた。

上級ポーションを買い込んでおいて良かった…。一本金貨5枚するだけのことはある。


「んく…。あ、ありがとうございます。マスター」

「気にするな。お前はもっと自分を大事にしな。後回しにするな。怪我したら言え。俺も怪我したら言うから」

「……はい。最後の言葉はイマイチ信用出来ませんが、わかりました」


鳴は苦笑しながら言う。

俺も鳴に信用してもらえるよう頑張ろう…。


「それと……テメェこの野郎!?」

「あ?なんだよ急にキレて」

「よくもうちの可愛い鳴を酷く傷付けてくれたな!嫁入り前の子に痕が残ったらどうしてくれる!?」


「マスター?」


鳴を傷付けたダクネスに激しい怒りをぶつける。

オークキングの時は恐怖が勝ってしまったが、今はなんだか大切な娘を傷付けられた親の如く怒りが湧いて来る。


「もう許さんっ!泣いて謝るまでぶっ叩いてやる!?」

「ああ、そうかい。やれるもんならやってみやがれ。空を飛ぶ俺を、もう一度落とせるならな!」


そう言ってダクネス空へ飛ぼうとする。

が、しかし……


「おっととと!?な、なに…!」


ダクネスは、空へ飛ぶことが出来なかった。

見ると、彼の羽はボロボロになっていた。


「私の狙いは元からその羽だったのです。そのまま殺し切れれば尚良かったのですが、贅沢は言いません。機動力を奪えただけ満足します。したくないですが」

「やだうちの子。怖いくらいに欲張りだわ…」


だがこれで戦いやすくなった。

ヒヒイロカネゴーレムよろしく、空を飛ぶ奴はマジで厄介だからな。

鳴に感謝だ。


「よくやったぞ!鳴」

「ありがとうございます。お褒めに預かり光栄です」


「なるほどねぇ…。確かに少々やりづらくなったな。だがよ……それで勝率が上がると思ったら大間違いだぜ!」


ダクネスはそう言って、闇の衣を大量に噴出する。

そしてそれらを鎧のように全身に纏った。

しかも刺々しい装飾が施されていて、容易に刺し貫きそうな見た目をしている。

あの状態のこともエレナさんからもらった紙には書いてあったが、あんな棘があるだなんて書いてなかった。

シルバーの突進対策か?下手にぶつかればシルバーが怪我を負いそうだ。


「何も空中だけが俺の取り柄じゃねぇんだよ。闇の衣のことは知ってんだろ?攻防一体のスキルだってな。これやると重くて飛べねぇから嫌いなんだが……翼をやられてちゃあ、関係ねぇ」


気合いを入れるように、地面を踏み抜くダクネス。

容易く地面が陥没する辺り、相当重いようだし、爪攻撃じゃなくても十分致命傷を負いそうだ。


「さぁ。第2ラウンドを始めようぜぇ!」

明日は用事があるのでおやすみします。


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