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エレナの、最低最悪な我儘

たぶん賛否別れる内容。

否が多くなりそうで怖い…(ガクブル)

どうも。エレナさんに殺害予告をされた変態、篝です。

ただいま昨日、彼女から渡された紙に書かれた内容を読んでおります。

俺たちを待ってる場所だけでなく、ルミナリア侵攻計画の中止や、なぜか一緒にいるという魔族のダクネスのことが事細かに書かれている。


なんで仲間の情報を売ってんだ?あの人…。向こうは俺たちのことを知っておいて、こっちは知らないではフェアじゃないとかか?

何を考えてんだかマジでわからん…。


呼び出された場所はルミナリアの南門から出て南東にある森……この場所は確か、俺と鳴が出会い、契約した場所だ。


「……マスター。そろそろ行きましょう。エレナさんと魔族のところへ」

「……………なぁ、鳴。俺は戦争になんてこれっぽっちも興味ないんだ。本当に戦わないとダメなのかな…。ルミナリアはもう諦めたんだろ?だったら戦う理由もないだろ」

「紙には、『一先ずは』と書いています。ということはいずれまた、ここに来るということでしょう。でしたら今のうちに、倒しておくべきです」


だよな〜…。鳴はそう言うよなぁ。

俺は産まれてこの方、人の命を奪ったことは当然まだない。

冒険者をやって行くうちに、いずれ人と殺し合う日も来るかもしれないって考えはあったから、心の準備だけは出来ていたつもりだった。


だが相手が相手だ。向こうは人間からの侵攻に抗い、戦っている魔族……とてもじゃないが、戦いづらい。

多少の戸惑いは生まれる。


「例え元は被害者であろうと、どこまでも正当防衛が成立する訳ではありません。今は彼らも侵略行為を行っているのは事実。でしたらそれ相応の対応を私たちも取るべきです」

「……はぁー。それでも気乗りしないな。これから人間側の為に戦うみたいで」

「でしたら、考え方を変えてみましょう。私たちは私たちの幸せの為、そしてルミナリアの為に戦うのだと。そう考えれば、気が楽になるのでは?」

「まぁ、頭ではわかっちゃいるんだがな…」


俺だってそこまで子どもじゃない。戸惑うし、戦いづらいが、向こうが本当に殺る気ならこっちも殺る覚悟で挑むつもりだ。


―――だけど、しばらく一緒に冒険して苦楽を共にした人と戦うのは……やっぱり、辛いものを感じる。


――――――――――――――――――――――――


―――ダクネス―――


「……そろそろ、終わってる頃(・・・・・・)か」


ルミナリアから南東にある森。そこで俺はエレナが戻って来るのを待っていた。


『カガリくんたちはボクだけで片付けるよ。ダクネスはここで待ってて。大丈夫、絆されたりなんかしないから。だから目玉は飛ばさないでね?飛ばしたら今度こそ殺す』


そんな理不尽なことを言って出立したのが三十分ほど前。

アイツの実力なら、もう例の親子を始末し終えてるはずだ。

本当ならもっと早くに終わりそうなものだが、親子だけでなく麒麟までいるんだ。それなりに時間は掛かるだろう。


やっぱり情が湧いて見逃す可能性も無くはないだろうが、しっかりその辺の始末はして来た女だ。

今は信じて待つのみ。


「にしても、これを使えずじまいだったのは、預けてくださった魔王様にかなり申し訳ないな…」


そんなことを呟きながら、俺はジャケットの胸ポケットに入れている紫色の玉を……玉を……………ん?


「ない?」


反対のポケットだったか?……いや、ない。

ズボンのポケットにも……ない。


「ど、どこだ?どこにやったんだ、俺!?」


あれは魔王様お手製の魔道具だ!無くしたなんてことになったら洒落にならないぞ!?

昨日の昼前には確かにあったはずだ。一体どこで落とした?


あれは魔大陸にいる配下の魔物たちを転移させる、特別な魔道具だ。

それを持たないまま帰還しては、魔道具を無くしたから任務を遂行出来なかったと誤解されてしまう!

周りから軽蔑されることも間違いなしだ!?


「来た道を戻れば、どこかに……ッ!?」


魔王様の魔道具を探しに行こうとした瞬間、嫌な予感がして、慌てて横へ飛んだ。

すると同時に、俺がいた場所に一筋の閃光が通り過ぎて行った。


「5000V・ライトニングブラスト!」


だが避けた矢先、俺を軽く飲み込めそうな大きさをした電気の弾が閃光から放たれた。

それを空を飛ぶことで回避し、閃光の正体を見る。


ソイツは雲みたいな羽衣を纏ってるような黒い馬に乗っていた。

紫色の瞳に銀髪……以前見たあの少女だ。


「テメェは……エレナが殺しに行ったはずじゃあ…」

「やはりいないのですね。なぜかあの人の気配だけ無いので、罠かとも思いましたが……半分嘘とは、この事だったのかもしれませんね。エレナさんが貴方の情報を渡して来た理由にもなります」

「はぁ?テメェ何言って……ッ!」


また嫌な予感がして、後ろを振り返る。

そこには、父親である男が俺に向かってハンマーを振り下ろしてきていた。


「不意打ちしてごめんなさい!」

「ちっ!」


なんとか男の攻撃を躱し、直撃を避ける。

だが腕にハンマーが掠ってしまい、そこから血が流れて来る。


「いつッ!ハンマーの癖に肌切んじゃねぇよ!」


悪態を突いて、さらに上空へ逃げる。

なぜだ?なぜコイツらがここにいる!?一体どうなってやがるんだ!

エレナの奴は何をやってやがる?まさかやられたのか、こんな奴らに!?


「テメェら!なんでこんなとこにいやがる!?エレナはどうした?アイツはテメェらにやられるような奴じゃねぇはずだ!」


人間界隈じゃ『絶対回避』だの『無敵』だのと呼ばれてるような奴だ。

魔族でもエレナのことを知ってる奴は、そう呼ばれるのも納得だと頷く。


そんなアイツが……負けた?

そんなはずねぇ。あの化け物を倒せる奴なんて、魔王軍幹部クラスでもねぇと難しい...!


「……その、俺たちはエレナさんがここにいると思って来たんだけど…。どうしたって聞かれても、わからないとしか答えられないっす」

「はぁ...?」


待て待て。マジで一体、どうなってやがる…?

エレナの奴、まさか呼び出し場所ミスったのか!?そんなドジをしでかしたとかじゃねぇだろうな!?


――――――――――――――――――――――――


「そろそろ始まってる頃かな〜」


ルミナリアからカガリくんたちが出て行ったのを確認したボクは、猫の冠で優雅にティータイムを楽しんでいる。

いくら量が多いメニューばかりと言っても、さすがにデザートは常識の範囲内のようだった。


「ごめんね、ダクネス。別に魔王軍を裏切る訳じゃないんだけど……」


昨日、ダクネスを蹴り殺そうとした時にくすねた紫色の玉を転がしながら、誰に言うでもなく呟く。


「やっぱり……ボクには殺せないや」


どクズで、最低な行いをしたと思っている。今までつるんで来た仲間を売ったんだから。

それでもカガリくんは……カガリくんだけは、殺したくなかった。


―――あの子が、初めてだったから。家族以外で、ボクの歯を見て気持ち悪がらなかったの。嫌わずに、いてくれたの。


『ひっ!?なにその歯…』

『魔物だ……魔物の子だ!?』

『いや、魔族だ!魔族の血が入ってるに違いない!』


『やーい!獣女ー!その口で何人食って来たんだぁ?』

『人は食ってなくても、生肉をいっぱい食ってそうだよなー』

『違ぇねぇ!」

『『『あはははははははははは!!!』』』


ふと、ボクの歯を知ってる人たちを思い出す。

皆。例外なくボクを気持ち悪がったり、馬鹿にして来たりした。


それなのにカガリくんだけは、ボクの歯を見て可愛いだとか、好きだなんて言っちゃって……とんでもない変態さんだ。


「でも……たぶんカガリくんしかいないしなぁ。あんなこと言うの」


だからごめんね、ダクネス。これ以上キミを裏切ったりなんかしないからさ。

ボクの最低最悪な我儘を……許してね。

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