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エレナさんはアタッカー型タンク〜ボクが守るよ〜

―――時は遡り、篝&エレナサイド―――


オレンジの宝石みたいな謎のボタンを押した後、エレナさんと一緒にフロアを調べていた。

すると、突然フロアの出入口が閉じてしまった。


「……なんで?」

「さぁ?ボクにも何がなんだか…。本当に初めての仕掛けだらけでわからないなぁ、このダンジョンは。……ん?カガリくん、あれ!」


エレナさんがオレンジのボタンがある台を指す。

……台が、地面に埋まり始めていた。


「猛烈に嫌な予感がするんですけど、気のせいですかね?」

「ううん。ボクも嫌な予感プラス、あの台の下から嫌な気配を感じるよ。何か来るね、これは」


ハンマーを構えて警戒する。

エレナさんが嫌な気配と言うからには、それなりに厄介な魔物が出ると思った方が良さそうだな。


やがて台が地面に埋まり切る。同時に、俺でもわかるくらいプレッシャーのような物が押し掛かって来るのを感じた。


台が埋まった地面から、勢い良く何かが呼び出して来た。

土煙が立ち、そこから飛び出して来たのは……


「……ゴーレム?」


さっき俺が押した、宝石のようなボタンと同じ色をしたゴーレムらしき存在が、空中に浮かんでいた(・・・・・・・・・)


オレンジ色に眩しく輝く身体。こちらを見下ろす機械的な赤い瞳。

アイアンゴーレムと同じく、ゴツゴツしてはいるが、どこか滑らかさも感じさせる綺麗な身体をしてるように感じた。

ただ大きさはアイアンゴーレムよりも、ものすっごい小さい。浮いててわかりにくいけど、たぶん二メートルもないぞ?


さらには手足の形も特殊だ。アイアンゴーレムが人の手足を模しているのに対し、このゴーレムは剣みたいな手足をしている。

剣になっているのは肘から下と、膝から下の部分だ。どれも鋭く尖っていて、なんでもスパスパ斬れそうだし、貫きそう。


「エレナさん。あのゴーレムみたいなのは?」

「ごめん。ボクもカガリくんと同じく、たぶんゴーレムなんだろうなってこと以外、全然わからない。あんなのは見たことないよ…。でも雰囲気的に……」


自身の手足の調子を確かめるかのような仕草をしているゴーレムを見て、エレナさんは今まで見せて来なかった、緊張した様子を覗かせていた。


「強さはAランクだと思った方がいいよ。ミスリルゴーレム以外で、こんなゴーレムは見たことないけど、それは確実だよ」

「マジか…」


ミスリルゴーレムが何かは知らないけど、彼女の様子からして油断出来ない相手だというのは嫌でもわかる。


深呼吸をして、ゴーレムの一挙手一投足を注視する。

空中に浮かぶ敵。俺に出来ることといったら、魔力玉を投擲するか、接近して来たところを迎え撃つのどちらかだろう。

それはエレナさんも同じだろうし、相手取るには少々分が悪い魔物だ。


鳴みたいな遠距離技を持つ奴がいないと厳しいのは明白。

……置いて来るんじゃなかったと後悔してます、はい…。


―――シャキン、シャキンッ!


自分を両手を打ち鳴らすゴーレム。

そしてその次の瞬間―――ゴーレムが、瞬く間に俺の目の前に移動して来た。


「あら〜。貴方、すっごくお早いんですね〜…」

「―――ガガガ、ピピピピ」


そんな機械音を鳴らしながら、ゴーレムが手を振り下ろして来る。

あ。死んだ?


「セイッ!」


しかしそれは、エレナの鋭い蹴りによって阻止された。

エレナさんが蹴ったのは肘。しかもいとも容易く外れて、俺の足元に突き刺さった。エレナさん怖い…。


自分の腕をもがれたゴーレムは、素早く飛び退き、赤い瞳を大きくさせて驚いたような様子で自分の腕を見つめる。

今までのゴーレムは四肢をもがれても、気にせず襲い掛かって来たのに…。感情を持ってるのか?


「大丈夫!?カガリくん!」

「はーい。無事でーす」

「軽っ!?ボクがいなかったら、今ので死んでたんだよ?もうちょっと焦りなよ…」

「いや、これでも結構焦ってます…」


見よ。この冷や汗を。

身体が一瞬冷え切った感覚から来る恐怖による汗だ。

アイツ図体の割に早くてビックリしたし、マジで死んだって思ったもん…。


それでも不思議と落ち着いてる俺がいるのも事実なんだけどさ…。


「ピピピ」


ゴーレムから機械音を鳴らす。すると、もがれて地面に刺さっていた腕が浮かび上がり、ゴーレムの元に戻っていった。


「「えっ?」」


そして『カシャン!』と元の腕にくっつき、くっついた腕の調子を確かめるよう曲げたり伸ばしたりするゴーレム。

……見る限り完全に元通りである。


「自己修復すんの!?」

「卑怯だよそんなの!ズルだズル!」


「ガガガガ?」


俺とエレナさんのバッシングを受けて、首を傾げるゴーレム。

自己回復するタイプの魔物とか、プレイヤーからすげぇ嫌われる奴だぞ!

しかもダンジョンの床に突き刺さるいうな剣だぞ?攻撃力高い奴が回復技を持ってるとか、勘弁してくれ!


「ガガ、ピピーッ!」


しかしゴーレムは、こちらの気持ちなどお構いなく襲い掛かって来る。

そりゃそうだ、魔物だもん!オークキングみたいな奴の方が珍しいんだよ…。


「ボクが相手だよ!挑発っ!」


エレナさんの挑発を受けたゴーレムが、彼女に斬り掛かる。

手足による斬撃はどれも速く、鋭く、一太刀でも受ければ容易く真っ二つにされそうだ。


しかしエレナさんはそれを全て紙一重で躱し切っている。さすがとしか言いようがない。


「ハァッ!」


やがてカウンターを繰り出し、今度はゴーレムの両腕を肩から外した。俺の目には一回しか蹴ってないように見えたぞ?

エレナさんはそのままの勢いで、ゴーレムのコアを狙って胴体に蹴りを放つ。

しかしゴーレムは空中へ飛び退き、ギリギリのところで躱した。


「ピピピ…。ガガガガ」


そしてまた外れた腕を浮かび上がらせて、自己修復しようとする。


「させねぇよ!」


俺は魔力玉を生成し、思い切りぶん投げる。

しかしそれは容易く足の剣で斬られてしまい、無事に修復されてしまった。

ズルい…。


魔力玉ではダメか…。

でもだからと言って下手に空中へ追い掛けたら、足で応戦されるし、最悪斬られる。どうしても攻めあぐねることになるな…。


「俺じゃゴーレムのスピードに着いて行けないしな〜…」


エレナさんだから戦えてるのであって、俺ではまず太刀打ち出来ないのは明らか。


オークキングやミノタウロスとは訳が違う。

ワンランク上がるだけで強さが段違いに変わるものなんだな…。

どうしたものか…。これは完全に俺は足手まといだぞ?


「大丈夫だよ、カガリくん」


と、そう言うエレナさんを見る。

そしてなんとも頼もしい微笑みを浮かべて、檄を飛ばしてくれた。


「ボクがいるじゃない?大丈夫!君のことは、ボクが絶対に守るからね」

「……(きゅんっ)」


やだ…。カッコいい。

いつもドジしてる人と同一人物とは思えない…。


「さぁ!次だよ次っ!次こそは決定打を与えてやるんだから」


エレナさんがそう言うと同時に、ゴーレムが再び彼女に襲い掛かる。

ゴーレムの攻撃を躱し続けるが、今度は反撃する様子がないエレナさん。


不思議に思ってると、エレナさんから視線を向けられてることに気が付いた。

ギザギザ歯を隠すことなく、笑顔で。


―――ボクが守るから。来て。


俺には、そう無言で訴え掛けて来てるように見えた。


「すぅー……はぁー…」


深呼吸一つして、ハンマーを振りかぶる。


「ちゃんと……守ってくださいよ…!」


そしてそのまま飛び出し、ゴーレムに向かって全力で振り下ろした。

もちろんそれは容易く避けられて、地面を叩くことになる。


―――ドゴーンッ!


「ガガッ!?」


エレナさんのように壊せはしないが、フロア全体を揺らすほどの一撃。ゴーレムは何やら驚いた様子を見せた。

だがそんなのを気にすることなく、横薙ぎにハンマーを振るう。


「ピピーッ!」


それも余裕で避けられて、剣が振り下ろされる。

しかしこちらには、アタッカー型タンクがいるのだ。


「挑発!」


振り下ろされた剣が俺の真ん前で止まり、ゴーレムは焦った様子で瞳を揺らしながら、いつの間にか距離を取っていたエレナさんの方に方向転換しようとする。

だがそんな隙を見逃すほど、俺も戦闘初心者じゃない!


「ぜぇりゃあーッ!」


俺はもう一度ハンマーを全力で横薙ぎに振った。

今度は見事にヒットし、エレナさんがいる方向へぶっ飛ばしてやった。

空中を自在に移動するゴーレムでも、さすがに急ブレーキを掛けることが出来ずに飛んで行く。


俺からのパスを、エレナさんは高速で何回転もしながら待っていた。

そして―――


「胴回し回転地獄蹴りッ!」


回転の勢いのまま上から蹴り下ろし、ゴーレムを思い切り地面に叩き付けた。

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