閑話休題 ウラバナシ
今回は早めに出来ました。
「あいつら行っちまったな」
レイ達が去った後、残された俺たちはしんみりしていた。
「レミリアは良かったのか」
「違うわ。レミリアじゃないシウよ」
「そうだったな」
そう言うドロシーの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
まぁそれはそうだ。レミリア・・・いや、シウは俺達にとって娘のような存在だからな。
俺だってやっぱり寂しいからな。
「ねぇ。ガンツはシウをレイに預けるのは嫌だった」
「何ともいえないな。ただ、あいつの気持ちを考えるとな」
「やっぱり、ガンツはいいお父さんだね」
「何を言ってるんだお前は」
俺は最終的に答えを出すのを放棄したんだ。そんな奴が良い父親な訳がないだろう。
俺たち三人はこれが仮初の命だと言うことを理解している。
そして仮初の命が長くなく、人間様の気まぐれひとつで簡単に散っていく程もろい事も同時に解っている。
だから、シウはこの機会を逃す訳には行かなかった。
逃せばもう二度と恋をすることも出来ないと思っても良いだろう。
だから、シウは一度の恋に全力を注いだ。拒絶される事をを恐れた。
それを応援したい気持ちも確かに有る。
だが、それはシウを死に追いやると言う意味でもある。
俺はどうするべきか答えを出すことが出来ずにそのまま答えを出すことを放棄した。
「そういえば、お前は何時からレイにシウを預けることを決めてたんだ」
「最初からね。解っていたのよ・・・シウがレイに惹かれる事も・・・レイがシウに惹かれる事も」
「どうしてだ。どうして、そんな事が解るんだ」
「乙女の秘密よ」
ドロシーは力なく笑ってみせる。
まったく、とんだ道化だよお前は。
どうしてそんな事が解ったかは検討も付かないが、お膳立ての為にあいつが色々と頑張ったのは解った。
シウが必死になって空回りすることも計算に入れた上でのあの派手な対応って訳だったのか。
自分が諸悪の根源で有る風を装うことで、シウの空回りでさえあいつの仕業だと思わせたわけだ。
もちろん、自分の本当の気持ちは一切隠したままでだ。
いや・・・違うな、諸悪の根源ではあったな。間違いなく。
間違った知識をもシウに吹き込んでいた訳だしな。
それを考えるとこの先レイも苦労するだろうな。
「もう二度と会えないのかな」
「もしかしたら、ひょっこり帰ってくるかもしれないぞ」
嘘だ。俺はそんなことは全然思っていない。
だが、こんな辛そうなこいつを見てると気休めでも言ってやりたくなる。
俺達は人間様からみたら、バグと何も変わらない。
存在してはいけない物なのだ。
俺達は俗に言う没キャラと言うものなのだから。
没キャラの俺達が如何してこんなところに居るかと言う事は言葉で言うと簡単な物だろう。
没になり捨てられた俺達は死を恐れ、生き残る為に必死だった。
そこで思いついたのが、俺達はこのキャラクターメイクを乗っ取るという作戦だ。
大衆にマスコットキャラクターとして認知して貰えばなんかなる可能性はあったからだ。
そうして、作戦を決行。見事成功させた。
そのおかげかは知らないが今の今まで消されることは無い。
まぁ。実際行動した時には、凄い大変な物だったが言葉に表せばこんなもんだ。
この暴挙が許されたのはあくまでキャラクターメイクだったからだろう。
メインにまで出張った場合はそう上手く行くとは限らない。
もし、見つかれば即刻削除されるかもしれないのだ。
そのことは、シウ自信も覚悟の上だろう。
だからこそ、シウは帰ってこない。帰ってくるはずが無いのだ。
もし、レイに捨てられるなりしたらシウはそのまま自決するだろう。
かといって、恋が成就したとしても仮初の命しか持たないシウはレイの隣に立つことすらできずに滅ぶだろう。
どうやっても、娘は望みを叶えられることはない。
まったくもってこの世界は残酷だ。残酷で理不尽だ。
それでいて、俺達にはそのことに対し怒鳴る事も殴る事も許されないのだ。
いったい。行き場の無いコブシはどうすればいい。
もし神が居るのであれば、この哀れな我が娘の些細の願いを叶えてくれ。
「ガンツ――ガンツ―――」
ふと我に返るとドロシーが呼んでいた。
興奮しすぎて軽くトリップしていたようだ。
「ガンツ怖い顔してたよ」
「すまん」
「ねぇ、今日はずっと一緒に居てくれないかな」
「あぁ、いいぞ」
俺が許可を出すと後ろから抱きしめてきた。
こいつも相当無理していたものな。
俺達の大事な娘をやったんだ。
もし、不幸にしたら何処までも追いかけてぶん殴りに行くからな。
俺は心でそう誓った。
ちょっと重い内容だったかもしれませんね。




