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第51話 ゴミ掃除

「カラミナ〜どこいくんですかぁ〜」


 カラミナ、ベルゼ、テュテュは集落から離れ一度魔王城に戻る最中だった。


 そんな中、カラミナが確かめたいことがあると言ってひたすら歩いていた。

 カラミナが作った、大地に沿った巨大な刀傷を辿って。


「それにしても、派手にやりましたね。これ治すの大変なんですよぉ」


「テュテュー」


 そんな小言をいうベルゼを尻目に、カラミナは歩みを進める。


 そして、


「……ここだな……」


 その歩みは止まった。


 そこは巨大な岩山の麓……だった場所。

 カラミナの斬撃で山は跡形もなく吹き飛び、後には深く抉れた窪地しか残っていない。


「ここがどうしたんですか?」


「……死体がない」


 そう、本来ここには必要なものが一つ足りない。

 この絶大な斬撃を放った相手、景晴の死体がどこにもない。


「……粉々になったのでは? もしくは瓦礫の下敷きになって見えないとか……」


「違う……あれを見ろ」


 そう言ってカラミナは指を指す。


 そこには大量の血の跡が続いていた。

 血の跡は一箇所で大きく広がり、そのまま赤黒く太い一本の道を形成しながら続いている。

 それは、景晴があの斬撃を耐え、尚且つこの場から離脱した確固たる証拠だった。


「嘘でしょ? あの一撃を正面から受けて耐えたんですか……?」


 ベルゼはその事実に驚嘆する。


 だが、さらに恐ろしい事実がそこにある。


 血の跡は最初は太く、長く続いていた。


 しかし、次第に細くなり徐々に途切れ途切れにはり、最終的に完全に消えている。


 つまり景晴は山ひとつ消し飛ばす斬撃を喰らってなお歩き出し、あまつさえその傷を完全に回復させたのだ。


「……「悪辣の十将」、想像以上ですね」


「まあよい。次会ったら塵も残さず、徹底的に殺してやろう」



×          ×

 

 


「ふ〜ん♪ ふ〜ふ〜ん♪」


白薔薇城ホワイトローズキャッスル」のとある一室、薄暗い部屋の中でカコは鼻歌を歌っている。


 大事そうに腕で抱え込み、布で丁寧に、熱心に磨いていた。


「……こんな薄暗い部屋の中で何してるのあんた……」


「あ! ソフィアさん! 見てくださいよーこれ!」


 部屋に入って来たソフィアに向けて手に持っていたものを掲げ見せる。


 それは、女性の生首だった。


 すでに長い時間が経過しているのか首の断面からは血が一滴も垂れていない。

 そして、魔術の効果か死体特有の腐乱臭もしないし、見た目の劣化もほとんどない。


「……本当に何やってんのよ……」


「これはこの間仕留めた盗賊団の頭、その娘の首です! 本人が自慢して回るほどの美人だと評判だったんですが、噂通りでした!

 なので僕のコレクションに加えようと!」


「はぁ……。あんた、罪人の身内には手を出すなってうちの掟があるってのに……。

 またあの女に殺されるわよ?」


「わかってますよぉ。だからこうして、こっそりひっそりと集めてるんですよぉ」


 その言動に一切の罪悪感はない。


 まるで大事なトロフィーを念入りに手入れしているかのように、キラキラした瞳で青ざめた生首を磨いている。



「それより、どうしたんですか? わざわざ僕の部屋に……。

 あっ! ついにあなたも僕のコレクションに……!」


「さっきウォーカーちゃんから連絡があったって伝えに来たの。

 無事終わったって」


「無視しないでくださ〜い。

 あっ! でもそれは嬉しいニュースですね! いやー! やっぱウォーカーさんは優秀ですね!」


「ええ……本当に……」


「でもよかったんですか? 採掘場手放して。あれはあなたの財源のひとつでしょ?」


「うーん。まあそうなんだけどねぇ。

 正直、採掘して私のところまで持って来るの意外と難しいからコスパ悪いのよね。

 魔王の状況を常に監視できるんなら、十分お釣りが来るわ」


「ふーん。

 あ、そういえばメイデさんは? 確か一緒に行ってましたよね?」


「あぁ。メイデちゃんね。

 あれから連絡が全然ないのよねぇ」



 

「お……お待ちください!」


 そんな会話を2人がしている最中、

 突然、外が騒がしくなる。

 廊下を見張らせてた聖騎士が何か叫んでいる。


「ん? なんでしょう?」


 カコがつぶやくと同時に、扉が勢いよく解放された。


 そこに立っていたのは血反吐を吐き、ふらふらとした足取りで入るメイデの姿だった。


「はぁ……はぁ……ソフィア……様……!」

 

「あら? メイデちゃん」


「メ、メイデ様! いけません! そんなお身体で!」


 ボロボロのメイデの後ろから、ソフィア直属の聖騎士が付いてくる。

 おそらく彼らがソフィアがここにいることを伝えたのだろう。

 聖騎士の静止を無視してメイデは口を開き始める。

 

「ソ……ソフィア様……。

 も、申し訳ございません……。任務に失敗し敗走してしまいました」



「……そう」


「う、ウォーカーのやつが悪いんです! あいつが……私の足を引っ張るから! ジルコアも! 全然使えないし……!」


「そうなの」


「つ……次! 次こそ必ず! あなたの願いを叶えて……!」


「メイデちゃん……」


 自分の名前を呼ぶソフィアの言葉に、ビクッと、メイデは体を震わせ身構える。


「……ご苦労様」


 しかし、身構えるメイデとは対照的に、ソフィアは穏やかな口調で労いの言葉をかける。


「よく頑張ったわねメイデちゃん」


「あぁ……! ソフィア様……私は……!」



 


「じゃあ死んでね」

 



 バン!


 と、部屋中に一発の銃声が響き渡る。


「……へ?」


 メイデは訳もわからずその場に倒れ込む。


 自分は何をされたのか、じわじわと痛む腹部に手を当てて、ようやくと状況を理解する。


 自分が、尊敬する上司に撃たれたのだと。



「……ソ……ソフィア様……?」



「あー。もううんざり。あんたには心底がっかりよ」


 さっきまでの慈愛に満ちた視線とは異なり、吐瀉物を見るように地面に倒れ込むメイデを見下す。


「こっちは毎度毎度迷惑してんのよ。

 私が何も言ってないのに勝手に行動して、勝手に人殺すし、そのくせ本人は全然悪びれることもなくまるで私が望んだからやりました〜みたいな顔して報告してくる。

 ほんっと気持ち悪い!」


 メイデは腹部の痛みと浴びせられる罵倒に顔を歪ませる。


「そ……そんな……私は……あなたのために……」


「だったらちゃんとやりなさいよ!」


 ソフィアはメイデの腹部に蹴りを入れる。

 傷口にブーツの先が突き刺さる。

 血が飛び散り、肉が裂ける音が響き渡る。


「あ゙ぁ゙あ゙あ゙っ!!」

 

「何が任務失敗しましたよ! ふざけんな!

 あんたは! 言われたことも! ちゃんとできないわけ!?」


 怒りのまま罵詈雑言と蹴りを浴びせ続ける。

 ひと蹴りごとに骨は折れ、肉は裂けていく。

 最後には靴先は内臓まで突き刺さり、メイデは赤黒い血反吐を吐く。

 

「痛い……痛いよぉ……!」


 蹴りが止んだ頃にはメイデは仰向けの状態で白目を剥いていた。

 最早腹部を腕で抑えることを諦め、涙と鼻水、血でぐちゃぐちゃになった顔でうわ言を呟いていた。


 そんな様子のメイデをソフィアは容赦なく髪を掴み持ち上げる。


「でもありがとう。最後にあなたは役に立ってくれた。捨て駒としてね。

 あなたがバカみたいに派手に動いてくれたから魔王の注意はあなたに向いた。おかげでウォーカーちゃんがスムーズに魔王城に侵入できた。

 ほんっと、ゴミでも役に立つって感心したわ!」


 何もいえずただただ涙を流すメイデに対し、ソフィアは銃口を突きつける。


「ひっ……!」


「というわけで、あなたはもう用済み。

 まったく、死ぬんなら私の手のかからないところで死んでよ。最後まで迷惑をかけるゴミね。あなたは」


「い……いやぁああああっ!!!」


 彼女は最後に、情けない絶叫を上げ一発の弾丸を頭に喰らい死亡する。


 人を虐げ、人を見下し傲慢な振る舞いを続けてきた彼女。


 その最後はあまりに情けなく、あまりに慈悲のない最後となる。




「あー! なんて事するんですかソフィアさん! 殺すんだったら顔は綺麗な状態にしてくださいよぉ!

 こんなぐちゃぐちゃじゃ僕のコレクションに入れられないじゃ無いですかぁ!

 彼女顔だけは良かったのに!」


「はっ、冗談でしょ? こんな女の顔二度と見たく無いわ。

 ちょっと! この肉袋とっとと片付けて!」


 そう言って外に待機していた聖騎士に命じ、自分は椅子に腰をかけ興奮を落ち着かせる。


「……でもぉ? 良かったんですかぁ? せっかく隊長職に1人加えたのに、また選び直しですよぉ?」


「ああ、それは大丈夫。

 もう代わりは見つけてる」

メイデ

人の身をつねって人の痛さを知れ(シュメルツ)

生前は2000年代のフェンシングの競技者だった。実力は本物でありオリンピック選手に選ばれるほどの実力者。しかし、生まれ付きの過剰な自尊心と他責思考が災いし周囲に多くの反感を買った。加えて家が裕福であったこともあり、選抜選手の枠を金で買い、ライバルは虚偽のスキャンダルやわざと怪我をさせるなどの裏工作で蹴落としていった。

実力でないところに頼った彼女は最終的に誰からも信用を失い、スポーツ界から追放。失意の中、膨れ上がる自尊心と現実のギャップに耐えきれなくなり自ら命を断つ。それでも彼女は最後の最後まで自分は悪くない、周りが悪い、環境が悪いと思い続け死んでいった。それは異世界転生した後も変わらない。二度目の死を経験してなお何故こうなったのか、彼女は理解できない。

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