85話 イケメンは心もイケメンだった
お待たせしました。
後半に当たる部分です。
一応何故夜中のうちにまとめて更新しなかったかと言いますと、
眠かったからです!(ババーン!※効果音
……すみませんマジで限界だったんです。
茶番はここまでにして、では本編をどうぞ。
85話 イケメンは心もイケメンだった
「僕には最初から見えていたんだよ。君に集まる沢山の精霊様たちが。」
「………?」
「しかも数が多いだけじゃない。集まっている精霊様はその多くが高位精霊様でその属性も多種多様だ。つまり君は『高位精霊様に気に入られる程に魔力の質や量が多く、その属性も沢山適正を持っている』という事なんだ。」
「……あっ!?……そういうことですか。」
「ふふふ、わかったかい?そんな人物が魔法を使えない筈がない。それなのに戦闘は武器ばかりを使っていて魔法は使っていないと言うんだ。それなら力を隠していると考えるのが妥当だろう?」
「確かにそうですね。」
「まぁ安心してよ。君が態々隠している事を言いふらしたりはしないし、してないからさ。……いくら僕でもそんな君を敵には回したくないんだよね。」
ケルヴィンはそう締めくくって頰を掻きながら苦笑いしている。
なるほど、それは迂闊……というかどう仕様も無かったな。
俺には精霊が何を好むかなんて知識は無かったし、ケルヴィンがそんなスキルを持っている事も変えようが無かった事だ。
やっぱり俺一人でどれだけ頑張って隠蔽しようにもどこかでボロが出るもんだな。
幸い、ケルヴィンはそのことを知ったからといって、言いふらしたり、悪用したりとはしていないようだ。
それに俺が異世界人だという事も、チートスキルがある事もバレてはいない。まぁこの辺がバレていたらやば過ぎるなんてもんじゃないんだけど……。
そしてケルヴィンはそこまで知っておきながら俺たちにお願いをしている。
脅迫ではなくお願い。
それはケルヴィンの人の良さ故なのか、それとも彼が頭がキレるだけなのか……。多分両方だな。
ここで俺と敵対してメリットは無いに等しいだろう。というより魔物の軍勢が迫っている中、戦力に成り得る者を敵に回すなんて馬鹿だろう。
腕が立つ事が分かっているなら、取り入れて利用した方が遥かに良策だ。
つまりケルヴィンは俺たちの要求を飲むからこの街のために助力してくれ、と言っている訳だ。
しかし、そうなると一つ疑問が出てくる。
「……話の流れは分かりました。今回の防衛戦で暴れて戦力の差を埋めてくれ、そう言いたいんですね?」
「うん。そういう事なんだ。話が長くなってごめんね?」
「いえ、何の説明もなしにお願いされるよりもずっと良いですから気にしてませんよ。それよりも一つ聞きたいことが。」
「何かな?」
「……それほどまでにこの街の防衛は厳しいのですか?」
これが俺の疑問だ。
自分で言うのも何だが、俺が刀だけを使って戦闘しているだけでもそこらの冒険者よりもずっと強いと思う。
それなのにケルヴィンは俺に魔法も使って戦えと言う。
そうなれば行き着く答えは自ずと決まってくる。
「うーん、厳しいといえば厳しいし、大丈夫だと言えば大丈夫なんだよね。」
「どう言う事ですか?」
「君たちのおかげでこの事態にも早急に対策を打つ事が出来た。そのおかげで街に多少の損害が出るかもしれないが、街を守ることは出来ると思う。」
「はい。」
「だけど人間って生き物は欲張りでねぇ……。損害をもっと抑える事が出来るかもしれない。そう思うとお願いせずにはいられないんだよ。」
「……買いかぶり過ぎだと思うんですけどね。」
軍勢相手に人、一人の強さが変わったところでたかが知れてると思うんだけどなぁ。
ランチェスターの第二法則でも分かるように、戦いは数なんだよアニキ。既に歴史がそれを証明している。
しかし、ケルヴィンはそうではないと言いたいらしく、首を横に振る。
「そんな事はないと思うよ。確かにハヅキくんがいかに強いとは言え白兵戦しか出来ない人ならここまで頼んだりはしないさ。でもハヅキくんは違う。魔法が使える。それもそこらの魔法使いとは格が違うレベルで。」
「……。」
「僕の見立てでは上級や特級、果ては聖級クラスの魔法まで使えるんじゃないかな?それもいくつかの属性を。」
俺はケルヴィンの問いに沈黙する。
沈黙は是なりと言うが、寧ろその程度だと勘違いしてくれる方が俺としては好都合だ。
ケルヴィンは俺の沈黙を肯定と受け取ったのか同じく黙ってしまった。
沈黙が続く。その沈黙を先に破ったのはケルヴィンだった。
再び勢いよく頭を下げ俺たちに懇願する。
「お願いだ!僕たちにその力の一片でも良い!どうか力を貸してくれ!」
「……分かりました、その話を引く受けましょう。ですが条件があります。」
「……!?ありがとう!本当にありがとう!!!最初から君の条件は飲むつもりだったんだ。早速、聞かせてもらえるかい?」
ケルヴィンは余程嬉しかったのか立ち上がり俺の手を取ろうとしてくる。
まぁ、元々この防衛戦には参加するつもりだったし、他の冒険者の旗頭にもなるつもりでいた。
そこに向こうからのお願いという形で防衛戦の参加を依頼されたのだ。断る理由が無い。
寧ろ、それに託けてこちらの条件を提示出来るんだ。万々歳じゃないか。
俺が座ったままなのを見てケルヴィンも少し落ち着いたのだろう。再び椅子にかけて一度深呼吸をした。
「……ごめんね。嬉しくてつい興奮しちゃったよ。」
「いえ、気にしないで下さい。それでは俺たちの要求ですが、俺とララの身の保証をギルドと言う組織がして下さい。特に国家相手には厳重にお願いします。」
「……それは命の保証という考えでいいのかい?」
「いえ、この際ぶっちゃけますが俺たちは国に仕える気なんて一切ないんです。例えば、王への謁見だ〜とか、爵位をやろう〜とか、領主が会いたがっている〜とかいう話は迷惑なだけなんです。俺たちは権力者や組織に対して弱い。だからそう言った部分をギルド側で事前に守って欲しい。」
「確かに個人で出来る事にはある程度限界があるからねぇ。……例えば王様が感謝の言葉を伝えたいっていうのもダメなの?」
「それが建前だって事くらい分かりますよね?」
「だよねぇ〜。」
ケルヴィンはどうやら予想はしていたようで、それほど驚いてはいないが苦笑いだ。
まぁ、普通に考えて王様の命令を無視しろなんて言われても、普通はハイそうですかなんて言えんわな。
しかしケルヴィンは苦笑いしつつもそれを了承した。
……え?まじでいいの?てかそんな事保証できんの?
「……そんな事約束しても大丈夫なんですか?約束を無視されたりしたら俺でも流石に怒りますよ?」
「ははは、それは怖いね。でも、大丈夫だよ。ハヅキくんも知っている通り、冒険者は国に属さない。そしてそれはギルドも同じなんだよ。要はギルドは超法規的存在なんだ。世界中にギルドは存在するけど、国の命令なんかに従う必要はない。命令なんか突っぱねてその国から撤収すればいいだけの話なんだ。魔物なんか放っておいて、後は軍の人間を使って対処してね?って。」
「……。」
「でもそれはどの国も出来ない。軍だけで魔物を捌いて、仮想敵国を警戒し続けるなんて不可能なんだ。だからどの国もギルドには過干渉できない。……まぁ、一部のギルドは冒険者のなんたるかを忘れて買収されたりしてる奴らもいるけど、それはごく少数なんだ。」
確かボルチーニも言っていたな。
皇国の皇都にあるギルドは国に買収された狗だって。
「だから君たち冒険者が身の保証をしろというなら僕たちギルドは断らないさ。それが僕らがここに居る理由だからね。当然それを盾に君たちを強請ったりもしないよ?」
「……ありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。」
どうやらケルヴィンは思った以上に俺たちや冒険者のことを考えていてくれたようだ。
軽薄そうに見える彼がギルドマスターとしてやっていけている理由はこういうところなのかもしれない。
イケメンのドヤ顔は腹が立つが、俺はこのギルドマスターを嫌いになれないでいた。
ご視聴ありがとうございます。
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