61話 新しい通り名と頭痛と吐き気
改稿作業の途中ですが次話の投稿です。
こういった厨二っぽい通り名を考えるのが苦手です……。
61話 新しい通り名と頭痛と吐き気
「あれ?ハヅキくん言ってなかったの?」
「……そんな事わざわざ自分から言うことじゃないでしょう。」
「いやいや、冒険者たるもの自慢話の一つや二つ持っているものだよ。」
「それなら私とは話が合わなかったってだけですね。私にそんな趣味はないです。」
「ははあ、そっかーハヅキくんにとってはゴブリン・ハイロードなんて相手にもならないって事かー。流石だねー。」
「茶化さないでくださいよ。言いふらすメリットがないって話です。それに一人で討伐したわけでもないです。」
「えー?またまたー。」
「……。」
あーもう、本当にこの人は!
ケタケタと笑うケルヴィンを睨みつけると、その視界の隅にポカンと口を開けたノルンがチラチラと映る。
どうやら話についてこれてないようだ。
「ん?おーい、ノルンくん?みんなもどうしたのさ?」
ケルヴィンがノルンたちの目の前で手を振ったりとしているとようやく戻ってきたのかものすごい剣幕でケルヴィンに食いついた。
「……!?マスター!さっきの話はどう言うことですか!ハヅキが一人でゴブリン・ハイロードを討伐したって言うのは本当ですか!」
ノルンもそうだが他のみんなもすごい剣幕だ。特にセーラなんか目がマジすぎて怖い。
「ちょ、ちょっと落ち着いて。僕は嘘は言ってないよ。君達も彼の戦いは見たんだろう?」
ケルヴィンが詰め寄ってくるノルンたちを必死になだめる。
俺は無関心に見えるように装っているが内心は『ザマァ!』の一言でいっぱいだ。これが人をからかった報いよぉ!
「……はい。正直CランクとBランクの差がここまでのものとは思いませんでした。」
「あぁ、あれはやばかったな。刀を抜いたと思ったら既に切り終わってたからな。音も静かだった、鍔の音しか聞こえない。」
「私にも、全く見えなかった…です。」
「それどころか切る時の音も全くしなかったように思います。……まるで音そのものを切ったようでした。あれは一体どういう魔法なのでしょうか。」
「魔法じゃない、と思う…です。魔法の独特な感じがしなかった…です。」
「ふーん、僕はハヅキくんの戦闘を見たことがないけどそんなにすごいんだ。まぁそれくらいじゃないとゴブリン・ハイロードを単独討伐なんてできやしないだろうしね。」
「思い返してみるとそんな気がします。あれはそうそう出来る事じゃないと思います。」
「へー、ノルンくんがそこまで言うんだ。通り名なんて普通は名付けるものじゃないけど……切った後は鍔の音だけが響くか。……『鍔鳴り』なんてのはどうかな?どうせ通り名なんていつの間にかついているもんだし、ここでつけたって変わりないだろう。」
「『鍔鳴り』ですか、いいですね。ハヅキの戦闘を象徴しているようです。」
「あぁ、確かに分かりやすいな。」
「はい、かっこいい通り名…です。」
「私は『音断ち』を広めようと思っていたんですが、そうですね……。刀と言う珍しい武器を持っていることも加味してですか。流石です。」
「いやー、ありがとう。僕のネーミングセンスも捨てたもんじゃないね。はっはっは。」
……ドウシテコウナッタ。
いや、確かに今回の依頼の間は実験を兼ねて抜刀術でしか攻撃してないから刀身が見えない云々は分かる、分かるがどうしてこうなった?
というかセーラ、広めようと思っていたってどういう事だ?
「いや、はっはっはじゃないですよ。私の意見は無しですか、そもそも通り名なんて無くてもいいじゃないですか。」
俺が口を開くとケルヴィンはふぅとため息をついてやれやれ顔で俺に向き直った。……微妙にムカつくなこの人。
「たまにこう言った通り名とかを嫌がる人はいるんだけどね、いつも言っている事は同じなんだ……諦めなよ。この通り名っていうものはその冒険者に対して畏怖と敬意を称して呼ぶ事が多いんだ。小さな子供が英雄に憧れるようにね。」
「……。」
「それに君は面相ごとが嫌いなんだろう?『通り名が立つほどに腕が立つ冒険者』ならそんなに面倒なことに巻き込まれたりはしないんじゃないかな?」
いや、でもなー。
俺が腕を組み悩んでいるとケルヴィンはとどめの一撃を放ってきた。
「なら、『皇帝殺し』と『鍔鳴り』どっちがいい?」
「………鍔鳴りでお願いします。」
負けたよ。惨敗だった。
ま、まぁこれなら字面的にはかなり良くなったはず……。
「まぁ、そのうち慣れるよ。慣れた頃にはそう呼ばれるのが快感になってるかもね?」
勘弁してください……。
とまぁ、依頼とは関係のないところで一悶着あったりもしたが無事?に報告を終えて1階の受付へと俺たちは帰ってきた。
「それでは依頼の方を完了させていただきます。こちらが報酬の金貨3枚です。討伐された魔物の報酬は別途用意させてもらいますので少々お待ちください。」
各々ギルドカードを出して今回討伐した魔物の討伐報酬をもらう。
魔石もいくらか回収していたが俺とは違って収納魔法の容量が少ないためノルンたちの魔石の量は討伐量と比べてかなり少ない。
まぁ俺も今回はその辺は隠すために魔石なんかはあまり持って帰ってきてないんだが。
「今日までありがとう、ハヅキ。ハヅキがいなかったら今回の依頼はやばかったかもしれない。」
「あぁ、俺からも礼を言うぜ。ありがとう。」
「うん、とっても助かった…です。」
「そうですね。ハヅキさんがいないとあれは切り抜けられなかったと思います。ありがとうございます。」
なんか改めてお礼を言われると照れるな。今までこんなにまっすぐお礼を言われることなんてそうそうなかったし。
「いや、ノルンたちならあれくらいはすぐに倒せるようになるだろ。俺にしたっていい防具の素材を手に入れる事ができたし、おあいこ様ってことで。」
「え?……いや、分かった。そう言うことにしとこう。」
ん?一体何が分かったんだ?
俺は微妙な顔つきで頷くノルンの考えがわからないでいた。
「それとハヅキ、今回の依頼の完了を祝って飯でも食いに行かないか?いい店を知ってるんだ。」
ノルンの言葉に頷く面々。うーんどうしよう。……行くか。嫌なことは酒を飲んで忘れるに限る!
「いいね、ただ先に宿に帰ってもいいか?このままの格好だと気が張ってな。」
「分かった、それなら俺たちは先に行ってるよ。店の名前は『飲み過ぎ呑んだくれ亭』だ。」
なんだその碌でもない名前は!アル中しかいなさそうな名前だな!
いや、さっきの俺の発想もアル中みたいなもんだったが。
俺はノルンたちと別れた後、黄金色の盃亭へと戻り風呂を堪能した俺は例の店へと足を運んだ。
店の料理はとても美味しく、何より酒が最高に美味かった。結局夜遅くまで盛り上がってしまい、次の日には完全に二日酔いになっていた。
……気持ち悪い。
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ブクマ、評価ありがとうございます!




