18話 天使がいるんだが
今日も今日とてお休みなので少し多めに投稿します。
こうして話を書いていると自分の語彙力のなさにびっくりしますw
10月30日に改稿してます
18話 天使がいるんだが
「おはようございます、ご主人様。」
「おはよう。」
挨拶をされたので一応返したが、まだまだ眠たい。
二度寝に入ろうと目を閉じたところで強烈な違和感を覚えたので一時中断する。
ん?俺は違和感の正体を探るべく目を開けると目の前に先ほどの声の主である少女、いや美少女がいた。うん重要だからね。
というか正確に言えば、抱きつかれていた、それも満面の笑みで。
彼女が誰なのかというのはよく知っている。昨日知り合ったばかりとは言え俺のパートナーなのだから。
「おはようございます、ご主人様♡」
「……おはよう、ララ。」
先程と同じセリフ?を変わらない笑みのまま言う彼女の名前はラナンキュラス。この世界で言うところの俺の奴隷だ。奴隷だが……。
え?なんでこんなことになってるの?いや、マジで。
「あの……ララ?」
「はい?ご主人様。」
「この状況はどういうこと?なんで俺は抱きつかれてるの?あと今の時間は?」
「はい、私が起きた時にはまだご主人様は寝ていましたので、起こすのも悪いと思いそっとすることにしました。それとご主人様の温もりを感じていたかったのでこうさせて頂いてます。時間はまだ朝なので宿の朝食には間に合いますよ。」
おkおk、まだ朝食の時間内ではあるのね。しかし……この子は何を言ってるんだ?
「そうか。ありがとう。それじゃ、起きて朝食に行こうか。」
「はい、ご主人様。」
色々と限界だったので、早々とベットから出て服を着替えたり顔を洗ったりと準備を済ませて下に降りる。
既に何人かが食堂を利用していたが空きはまだまだあったので二人がけのテーブルで手早く済ませた。
昨日言った事を覚えているみたいで、ララは床に座ろうとせずきちんと椅子に座って食べた。
「ララ、今日の予定だけどまずは武器屋に行って俺たちの装備を揃えようと思う。念のために言っておくけど命を預けることになるから遠慮なんてするなよ。」
「はい、ご主人様。(ニコニコ)」
「その次にララの冒険者登録をしにギルドに行こう。身分証がないと困るだろうしね。」
「はい、ご主人様。(ニコニコ)」
「登録が終わったら今日はそのまま外に出て稼ぎに出よう。依頼は本登録しないと受けられないけど、魔物の素材やらは売れるから適当に狩ろう。あと、本登録のために薬草も集めないといけないから見つけたら採取しといて。」
「はい、ご主人様。(ニコニコ)」
ララは俺の説明に適度に相槌を打ちながらしっかりと聞いている。聞いているのだが……なんでこんなに笑顔なの?いや、仏頂面よりも遥かに喜ばしいのだが朝起きてからずっとこの調子だ。正直、昨日との落差についていけない。
「じゃあ、早速行こうか。」
「はい、ご主人様。」
食休めもほどほどに俺たちは宿を出る。行き先はギルドで教えてもらった武器屋だ。
目的地はララと他愛のない話をしながら歩いているとすぐについた。
ギルドの紹介とだけあって建物はかなり大きく見た目清潔だ。看板には冒険装具店と書かれていて、剣と盾が組み合わさったようなマークがついている。
ギルドでエリエットさんに教えてもらったことだが、冒険者の識字率は高いというわけでは無く、偶に文字すら読めないという人がいるらしい。そのため看板のマークはそう言った人たち向けの工夫だろう。
因みにギルドは剣と杖のマーク、宿屋はランタンのマークがついている。
俺たちは冒険装具店(面倒なので次からは武器屋)と書かれた看板をくぐって店に入る。
中は外観通り広くその壁には色々な武器や防具が所狭しと並べられている。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件ですか?」
キョロキョロと店内を見て回る俺たちに店員であろう青年が声をかけてきた。
「俺とこの子の装備を揃えようと思って、軽く見繕ってもらえますか?」
「新人冒険者の方ですかね?大丈夫っすよ、希望の装備があれば言ってください。」
いかにも軽そうな兄ちゃんだが大丈夫だろうか……。
一抹の不安はあるもののそれぞれ希望のものを言っていく。
俺は刀に胸当てかあれば革製の鎧、それに黒い外套。ララは短剣を二本と同じく胸当てと外套。
俺の不安もなんのその、武器屋の兄ちゃんはきちんと俺たちの希望に応えてくれた。
……見た目で判断してごめんよ。
一応、俺たちの装備の説明をしておくか。
まずララだけど、ステータスを見た感じでは斥候タイプなので、スピードと器用さを生かしつつヒットアンドアウェイで戦う感じになるだろう。
短剣を二本持たせたのは二刀流にさせるためだ。ララのDEXなら十分対応できると思う。それに短剣は他の武器に比べてリーチが短いため攻撃と防御を同時にできるのは大きい。
もし扱えなくても一本は予備にしておけば腐ることもないし特に損もないだろう。
因みに短剣にしたのは単にスキルの関係だ。
防具に関してはさっき述べた通り、スピードを生かしての戦闘になるので、最低限急所を守れる程度にとどめておく。これ以上重くすると持ち味のスピードを殺しかねないからだ。
外套は……説明必要だろうか?ララはエルフで美人だ。これ以上言うことがあるかね?
続いて俺の装備だが……特に説明がない。というのも刀はスキルがあるのだからこれ以外の武器は考えられないし、防具だってそうだ。
俺もスピード重視の武器を使うためあまり過度な防具はつけにくい。なので金属系の鎧よりか革製の鎧が好ましい。
つまり俺の装備は使う武器をメインに考えられた編成だ。ネトゲでいう純アタッカー……リザ早くしてぇ。
外套に関しては身を隠す装備は持っていた方がいいから。
相当な時間がかかると踏んでいた装備選びだったが思いの外早く終わった。30分くらいで……。
しかし、完璧な仕事ぶりだというのに青年の表情は冴えない。というのも……。
「悪いねぇ、そっちの兄ちゃんの言う刀はうちには置いてないんだよ。」
と言うことだった。
曰く、この世界で刀は美術品としての価値はあるが、武器として使われることはあまりないらしい。
この世界の剣は重量に任せて押しつぶすように切るのが一般的なのに対して刀、日本刀と呼ばれるものはただ『切る』ことに重きを置いていて、当てて引いて初めて切れるため西洋剣と同じように振るっても切れない。それどころか折れる。
そのため、冒険者の間では『折れず曲がらず』が信条の日本刀は『軽いだけの折れやすい美術品』という扱いらしい。
こういったこともあり、この店のような新人冒険者向けの店にはまず置いていないし、置いてある店の大半は骨董品やらの美術品扱いで武器としては使えないだろうとのこと。
しかし、幸いというか彼は刀を扱っている鍛冶屋を知っているということなのでその店を教えてもらうことにする。
彼の情報に感謝しながら会計をすませる。
俺の武器を除いた装備に剥ぎ取り用のナイフを二本、その他用のナイフを一本とポーションなんかを入れておく腰につけるようなポーチを2つ追加し金額は8万ゴールドとちょっとだった。
服より安い……。
俺たちは購入した装備を早速装備して店を出る。
どうでもいいことだがこの世界の装備品は服とは違い、装備する人の体型に合わせて勝手に調整される。なので大男が着ようと、か細い女の子が着ようとサイズはぴったりだ。これは装備の特徴なので特に魔法の付与とは関係ない。
……妙なところでファンタジー設定だな。
因みに魔法の付与がされている装備はそれを装備することで付与された魔法(例えば、炎無効など)の効果を得ることが出来るみたいだ。まぁ、そのぶん馬鹿高いらしいが。
つまり、長くなったが何が言いたいかと言うと俺とララの見た目はすごく似ているのだ。というか外套に至っては全く同じだ。
恋人でもないのにペアルックとか精神的につらい。いや恋人同士でもなかなか辛いだろう。
……まぁ恋人なんていた事が無いので分からないんですけどね。
「ご主人様、装備お揃いですね!」
隣を歩くララに満面の笑みで言われた。……気にしないようにしてたのに。
普通気まずくない?服とか被ったら気まずいよね?
「あー……そうだね。悪いね似たような格好になって。」
「いえ?私は嬉しいですよ!ありがとうございます、ご主人様。」
……天使かな?天使だわ(確信)。
俺は顔がにやけるのを必死に耐えながら教えてもらった鍛冶屋へ足を運ぶ。
ご視聴ありがとうございます
ブクマ、評価ありがとうございます!




