レース開始
しばらくの、短いようで長くもある、異様な静寂。
次の瞬間、飛行船の大型ランプに、青色が灯った。
瞬時にして手が手綱を引き、3匹が船を力強く牽引する。
全てのドラゴンたちの動きで、
一旦は鏡のようになっていた湖面が、一瞬にして、再び激しく波打つ。
タイミングよく一手先を捉えた俺は、集団から抜き出た。
すぐ後ろでは、大型の船とドラゴンが作り出す波に、中型 、小型の船が飲み込まれる。
そのどれもが、転覆や、波の上で弄ばれるように振り回されていた。
船を引くドラゴンたちも何とか抗うが、次々と波間に消えていく。
『さあ、巻き起こされた波で早くも半数の船が沈んでしまいました!
その中で一早く抜きん出たのは、やはりこの乗り手、
ソルベル・ホーリード!
そのすぐ後をエルフのグローム兄妹、
更に背後から押し潰さんと迫る大型の船が続々とやってきます!』
そんな実況がこだまする頃、船は既に湖から幅広い河川に差し掛かっていた。
河とは言え、その幅はそこらの大河よりも広く、下へ下へと急激に傾斜している。
その上を、どこまでも続いていそうな背の高い大きな橋が横断していた。