プロローグ 災厄の魔王誕生!?
眼前に広がるのは、火の海だった。
村全体が赤々と燃え上がり、夜空を焦がしている。
パチパチと木が爆ぜる音、煙の臭い、熱風が俺の小さな羽をビリビリと震わせる。
その横で……、少女が地面に膝をついて大絶叫を上げていた。
「なんでぇええええ! なんで村が焼かれてるのよぉぉ!」
彼女は髪を振り乱し、涙目で炎を見つめている。
無理もない。助けに来たはずが、結果は村ごと焼き討ちだ。
なにしにここまで来たんだと言いたくなる気持ちは、俺も同じだった。
俺は彼女の肩の少し上に浮かび、念話で優しく語りかけた。
『まあ、こういう日もあるさ。人生……もとい蚊生、いろいろあるよ』
瞬間、少女の頭がガバッと上がった。
「……あなたのせいでしょ! この害虫!」
立ち上がるや否や、両手をブンブン振り回して俺を叩きに来る。
「このっ! 血を吸うだけの厄介者め!」
サッ。
俺は一瞬で横にズラした。蚊から見れば、人の動きなどスローモーションだ。
例え、彼女が「勇者見習い」の称号を持っていて、他の人間より少しステータスが高いと言っても、俺にとっては誤差の範囲内である。
少女の手が空を切る。
「え……? さっきまでそこに……」
『落ち着けって。俺を叩き潰そうとするのはやめろよ。当たったら死ぬほど痛いんだぞ……っていうか、死ぬ。』
「うるさい! そもそもあなたが疫病を……!」
再び両手をブンブン。勢いはすごいが、紙一重で躱す。
そう、「当たらなければどうということはない」のだ。
俺は彼女の指の間をスルスルとすり抜け、耳元で念話を飛ばした。
『おいおい、俺はただ大ネズミを倒しただけだろ? その獲物を横取りして小遣い稼ぎに横流ししたギルドの連中が悪いんだろ?』
「うぅ……あなたが大ネズミを倒すのに病気をばらまいたせいで……!」
少女は必死に俺を追いかけ回すが、すべて空振り。
蚊の俺からすれば、彼女の攻撃は巨大なハンマーが振り回されているように見える……がそれだけだ。
余裕で躱すことが出来るから脅威は感じない……筈なのだが……。
―――アブねぇ……こいつ、たまに予測不能の軌道で殴ってくるんだよなぁ。
たまに来る不可避な攻撃もなんとかかわし、何十回目かの空振りのあと、少女はついに力尽きてその場にへなへなと崩れ落ちた。
「もう……やだ……村が……」
肩を震わせて泣き始める。
俺は彼女のすぐ横にちょこんと降り、念話で慰めた。
『ほらほら、泣くなよ。人生、つらい事ばかりじゃないさ……って、俺は蚊だけどなっ』
少女は涙目で俺を睨みつけるが、もう叩く気力はないらしい。
そう、今の俺は蚊だ。
そして、このうずくまっている少女の名は、エルシア。
一応、「勇者」らしい……まだ見習いだけどな。
なぜ俺が蚊なのか?
勇者見習の少女と一緒にいるのか?
なぜ?とかどうして?とか疑問は尽きないが……そういうのは今は置いておこう。
それよりも重大なことがあるのだ。
俺は心の中で深くため息をついた。
「それよりさ……」
『何よ。』
エルシアがこちらを向く。
金色の長い髪が炎の光を受けて輝き、いつもの怜悧な美貌が俺を射抜いた。
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
『誠に申し上げにくいのだが……』
『さっさと言いなさいよっ!』
彼女の声が少し苛立つ。相変わらず短気だな、この勇者(見習い)様は。
俺は覚悟を決めて、ぽつりと言った。
『………俺、魔王になったみたいなんだ』
一瞬の沈黙。
そして――
「………………………はぁっ??」
エルシアの瞳が、文字通り点になった。
美しい顔が、徐々に真っ赤になり、そして真っ青に変わるという、珍妙なグラデーションを見せた。
うん、わかるよ。
痛いほどわかる。
俺だって、ただの蚊に、いきなり「魔王」なんて言われたらそりゃそうなるわ。
エルシアはじっと俺を見つめていた。
その視線が、だんだん「思いつめた」ものに変わっていく。
やがて、ゆらりと立ち上がる。
「そう……あなたが魔王……」
彼女の声が、低く、静かに響いた。
「つまり、あなたを倒せばいいのね……」
次の瞬間――
シュンッ!
聖剣が抜かれた。
神々しい光を放つその刃が、焚き火の炎を反射してキラーンと輝く。
……ちょっと待てっ!
落ち着けって!
そんな物騒なものしまいなさいっ!
「魔王なら……勇者が倒さないとねぁ……!」
ブンブンブンッ!
聖剣が猛烈な勢いで回転し始めた。
周囲に風圧が巻き起こり、近くまで迫っていた火の粉が舞い上がる。
いや、たかが蚊を相手に聖剣振り回すなよなぁ!
俺は慌てて、剣先を躱して後ろに飛び退きながら、全力で叫んでいた。
『待て待て待て! 落ち着け!話せばわかる! 誤解だ! ほら、話し合い――うわっ!』
俺は必死に身をよじって剣閃をかわす。
聖剣が岩壁を掠め、ガガガッ! と派手な火花を散らした。
一撃で岩が半分削れるという、恐るべき破壊力。
華麗に剣を振り回すエルシアと、情けなく逃げ回る俺。
燃え上がる村をバックに、響くのは少女の気合の叫びと、俺の羽音(悲鳴)。
「魔王! 覚悟なさいっ!!」
『だから待てってばぁぁぁ!』
いや、エルシアの気持ちはわからないでもないが……、
あえて言おう……
……どうしてこうなった?
新作です。
更新止まってるの書けよ!
と言われそうですが……あえて新作です!
他サイトで、ラブコメ書いてたのですが、一日10~20PVという情けなさ。
なのに、1か月前、いきなりPVが爆上がり、一日5千~7千PVで、現在20万PVに届く勢いです。
なので、そちらに集中していたのですが、一区切りついたところまで書き上げた時にふとこの作品を思いついてしまい……
まぁ、とてもくだらない思い付きをどうしても形にしてしまいたく手ですねぇ……
先のことは考えてないので、多分20話前後で完結するかと。
まぁ、人気が出れば続けますが。
とりあえず、本日三話までは連続更新の予定です
気になる!、続きが読みたい! 他の作品の続きを書け!と、思われた方は、評価とブクマ、オネガイシマス。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。




