1-7:▼LCU整備 其の壱
ー第九弍零地区 Vの整備庫ー
クレーンを使って畜雷ユニット上部の変圧器を整備庫の中央に下ろすVの姿が見える。
その上面にあるラジエターガードと焼け焦げたラジエターを外すV。
その音で目を覚ますエル。
時計は16時を回っている。
大きなあくびをしながら車を降りるエル。
腕組みをしたVが声をかける。
「おはよう、寝坊助くん!よく眠れたかな?!」
「ごめん、寝ちった…打ち抜き始めるね。」
「頼むぜベイビー!」
「うん。」
両頬を2度軽く叩いてから、むき出しになった雷撃分散盤をメンテナンスモードに切り替えるエル。
ゆっくりとせり上がってくる分散盤。
27本のネイルと呼ばれる直径12mmの金属の棒が所々鉄の枠と融着しぶら下がっている様子が見える。
厚手の革手袋を付け、鋼の棒とハンマーをツールボックスから取り出すエルの手元が見える。
その棒を融着したネイルにあてがい思い切りハンマーで叩くと大きな音を立ててネイルが抜ける。
一部融着が激しい場所は軽くグラインダーで表面を削ってから打ち抜く必要がある。
庫内に金属が叩かれる音と削られる音が響く。
火花散る庫内の奥から荷札やバーコードが多量に貼られた大きな箱をフォークリフトで持ってくるV。
変圧器の真横にそれを置き、無造作に蓋を開ける。
シート状になったゲル状の冷却プレートが箱いっぱいに詰まっている。
ちらっとその様子を見るエルに間髪入れずにVが声をかける。
「さっき寝てやがったから、これエルの仕事な。」
「えぇぇぇぇ!?だからごめんってーっ!」
「いいや、ダーメ。頼んだぞーっ!」
そういうと車体をひるがえして倉庫の奥へと戻っていくV。
ネイルを打ちかけたまま唖然とした表情のエル。
「また押し付けやがった!もーーーっ!!!」
一層大きな金属の打撃音が庫内に響き渡る。