岩屋堂
「申し訳ありませんが玉藻様は別用で留守でございます。 行き先を申し上げることはできませんし、お帰りも恐らく2.3日後位としか…」
「そうですか、では日を改めます」
里長の玉藻に挨拶に訪れたルナだったが、かごめに留守を告げられてしまった。
「では、土人形の核についての情報収集から先にやろう
時間がもったいないからね。
ジェイド達は、土人形についてなにか知っていることはないのかい?」
「うーん、土の魔力が滞留した所におるっちゅう位の事しかわからんなぁ
フィリアはどや?」
「私は以前、魔術を使う人間は戦ったらダメだっていう話を聞いたことがあります。
理由までは……ちょっとわからないんですけど」
「そうか、ちょっと情報が少ないな……
アッシュはカラクリ師殿から何か聞いてないのかい? 」
「あー、スマンが特に何も言ってなかったと思う
麻酔が効いててボーッとしてたしな…」
「あ、あの… 」
近くで話を聞いていたかごめが珍しく話かけてくる。
「皆様は土人形をお探しなのですか? 」
「ええ、そうです
アッシュの治療に必要でして… 」
「でしたら、お手伝いができるかもしれません」
かごめの話ではこうだ
最近、里の外れにある岩屋堂という名の御堂に雷が落ちてきて壊れてしまった。
御堂が壊れただけでなく、床板も大きく破損し地面が剥き出しになるほどの衝撃だったという。
様子を見るため里の者が数名で御堂を確認しに行き
足を踏み入れたところ、突然地面が崩れて大きな縦穴と繋がってしまったと……
縦穴からはトゲトゲ土竜やクレイボア、オオドドロ等の魔物が出現し里の人が対応に追われていて大変だと
「確かに、トゲトゲ土竜やオオドドロは土の魔力が濃い所にでる魔物や。
土人形もそこにおる可能性は多いにあるで!」
「かごめ殿、案内を頼めないだろうか?」
「ええわかりました
今日はもうだいぶ日が傾いてしまっているので明日の朝からでよろしいてしょうか? 」
「構いません、お願いします
あと、お願いついでにもうひとつ教えてほしいことがあるのですが… 」
「なんでしょう? 」
「里に来る途中の戦いで、武器を失ってしまったのです。 何処か武器を手に入れられる店か何かは無いのでしょうか?
できれば、槍かそれに近い物が手に入るとありがたいのですが…」
「わかりました。里に武器を売っている所はございませんがお貸しすることは可能です。
しかし、外部の方に里の装備を全てお見せすることはできませんので、私が準備致しましょう
後程、数本選んでお届けに参りますので気に入ったものをお使いください」
「本当ですか! 何から何までありがたい。
よろしくお願いします」
「では、失礼致します……」
かごめを見送り、寝所に戻るルナ達一向
夕食時になるころ、かごめが数本、長物の武器を持って来てくれた。
「どうでしょう?
お気に召す物はございますか? 」
寝所を出て、一本一本試しに握って感触を確かめる。
しばらく、吟味した後
納得した様子で一本選び出した。
「これにします!
少し大きいですが、バランスが良い
馴れれば扱いやすそうだ」
「剣槍ですか…
扱いの難しい武器ですがルナ様のその様子なら大丈夫でしょう
それでは、明日お迎えにあがりますので」
槍のように柄の長い握りの先に末広がりの形状をした両刃の剣が取り付けられている
槍のような刺突だけでなく縦横の凪払いにより切りつけることもできる変わった形状の武器だ。
一礼し残りの武器を抱えて退散するかごめ
辺りは暗くなってしまっていたが、
ルナは、もう少しだけ感触を確かめてすこしでも馴れておこうと思って
しばらく剣槍を振る練習をすることにした。
____ハッ! ブゥン!!
____ハッ! ブゥン!!
少しづつ手に馴染んできたような気がした頃
ゴツッゴツッという足音が近づいて来る音が聞こえる。
「その辺にしといた方が良いんじゃないか?
明日は朝早いぞ」
「アッシュ……
少しでも馴れておこうと思ってね
見てくれ! 」
剣槍を構え、以前アッシュに習った基本の型をいくつか披露する。
鋭い剣槍の一撃が空を切るのを見てアッシュは言った。
「そこまで、振れれば上等だろう
剣先に変なブレもないし、体幹でしっかりと武器を扱えている
でも、普段の槍よりも少し重いな?
それに、若干リーチも違うだろう…
慌てず、落ち着いてやればその内馴れるさ…」
「見ただけて、そこまでわかるのか
さすが、私の先生だよ」
「明日……気をつけろよ
本来であれば、俺はルナの護衛だ
魔物がいるところにルナだけ行くのを黙って見ていて良いはずがない
でも……」
「わかっているよ、アッシュ
そんなに心配しないで欲しい、ジェイドやフィリアも助けてくれるし、私は君の為だけに行くのではない
この先も、私は誰かの助けが必要になる時がかならず来るだろう
その時に、他でもないアッシュに助けて欲しいんだ
情けない主人で申し訳ないが君の支えが心強いんだよ
だから私は必ず無事に戻ってくる
心配するな」
「ルナ……
そうだな、心配しすぎだな俺は
気をつけてな……騎士が主を失うなんて不名誉はゴメンだぜ……」
「あぁ、任せてくれ
それと無事に帰ったら、君の隠し事も話して貰おうかな」
「ん??」
「気がつかないとでも思ったかい?
アッシュ時々、目を逸らすだろう?
君の事だ……理由があっての事だと思うがやっぱり気になるからね
何より、君がそのせいで苦しそうな表情をしているのを見たくない
私には重荷を分けろと言ったんだ
君も一人で抱え込むな」
「…………ルナ」
「土人形の核を手に入れた後にしてくれよ
今は、そっちに集中したいんだ」
「あぁ……スマン
ありがとう……」
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翌朝、アッシュを除くルナ達一向はかごめに連れられ里の外れに向かっていた。
大木から山の斜面に向かって吊り橋がかけられており
山の斜面には石造りの長い階段
階段の途中には朱色の鳥居がいくつも建てられている
山の斜面にはびっしりと竹がはえており、赤と緑のコントラストが美しい。
「では、行きましょう
階段を上りきった所に岩屋堂がございます」




