岩屋堂 2
階段を上りきった先は開けた場所になっており
注連縄が巻かれた巨大な岩
その手前に御堂が建っていたであろう残骸が散乱し
地面には大人3人分位の大きさの穴があいていた。
御堂の残骸の近くには周りを囲うように木札が立てられ
見慣れない文字が書かれた御札が貼り付けてある。
「こちらが、岩屋堂の縦穴になります。
魔物避けの封を施してありますので、魔物がこれより外に出てくることはございませんが
結界の中の魔物にはなんの作用もしておりません。
我々も穴の中まで調査は出来ておりませんので
中がどうなっているのかまではお伝えすることができないのが心苦しくあるのですが… 」
「充分ですよ、かごめ殿
案内どうもありがとうございます
里に戻ったらアッシュの事を頼めませんか?
きっと、一人でジッとしていられないと思うのです」
「承知致しました。
では、私は里の方へ戻りましょう
皆様にこちらをお貸ししておきます」
かごめはぼうっと黄色い光を放つ小型のランタンを差し出す。
里の至るところに吊り下げられ、照明の変わりをしている物だ。
「千年ホタルのつがいが入っております
里では照明として利用しているものですが
基本的にはずっと光りっぱなしなので穴の中で役立つかと… 」
「何から何まで用意を、
本当にありがとうございます。 大事に使わせて頂きます! 」
「いえ、これくらいの事しか出来ず申し訳ありません
御武運を!
里でアッシュ様と共に帰りをお待ちしております」
「では、行ってきます」
一礼するかごめに見送られ
ルナ.ジェイド.フィリアの三人は岩屋堂の穴の中に降りていった…
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___中は随分と暗い
かごめに用意して貰ったランタンが早速大活躍だった。
入り口付近に魔物はおらずルナ達は広い縦穴をゆっくりと下に下に降りて行く。
足場はあまり良くないが10分程降りた所で勾配が緩やかになり、広い横穴の洞窟のような所にたどり着いた。
ランタンの明かりがぼんやりと周りを照らし
湿った岩壁がキラキラと反射している。
魔物についての知識は、三人の中ではジェイドが圧倒的に博識であるため先頭をジェイドに任せ、一向は土人形を探して進む。
「ええか?
この前の復習になるかもやけど、基本的に洞窟に住んどる魔物は耳がエエ奴が多い
無駄に足音たてんと、ゆっくり進んだ方が身のためや
フィリアは後ろの警戒頼むわ
何かあったら知らせい、挟み撃ちはマズいからな…」
2人とも首を縦に振りジェイドに続く
少し進んだ頃、先頭のジェイドからとまれの合図があり三人は息を潜める。
どうやら前方に魔物がいるらしい…
ジェイドが指をさした先には、洞窟の天井から逆さまにぶら下がる吸血コウモリの群れがいた
「シーッ…朝やからあいつら寝とるわ
大きな群れや無いし、大したこと無い連中やから静かに素通りするで…」
そろそろと静かに吸血コウモリの下を歩く
もう少しで通りすぎると思った矢先、最悪のタイミングで前方から全身鉱石に覆われた巨体な蜘蛛が現れた。
「キャッッ____!!!」
小さく悲鳴をあげるルナ
その目はまっすぐ正面の蜘蛛を捉え、真っ青な顔をしていた。
「静かにせぇっ!」
慌てて、ルナの口元を抑えようとするジェイドだったが完全に手遅れ…
正面からは蜘蛛がこちらに向かって走ってきており
頭上では多数のコウモリがギィギィと鳴く音が鳴り響いた。
「ドあほう…後で説教や!
フィリア!ルナと一緒にコウモリの方頼むわ!
オオヨロイ蜘蛛は俺にまかせぇ! 」
「はいっ、わかりました! 」
言い終わると同時に魔力を練り始めるフィリア
魔力が高まるのを敏感に感じとり
吸血コウモリが一斉にフィリアのほう目掛けて牙を剥き出しにして飛んでくる…
「そうはさせるかっ! 」
フィリアの魔術の発動までの僅かな時間を稼ぐためルナはコウモリ達に向かって跳躍する。
足にシルフの力を纏わせ大きくジャンプし剣槍を使ってすれ違い様に羽を切りつける。
多くの吸血コウモリがバランスを崩し
飛んでくる群が一瞬だけ完全にストップした。
「ルナさんっ!ありがとうございます!
離れてください!
_穿て、''バレットスプラッシュ アシェット'' 」
フィリアの後ろに多数の水弾が出現し浮かんでいる…
杖を振る合図と同時にフィリアの水弾が一斉にコウモリの群れに向かって飛んでいった
吸血コウモリ達にフィリアの魔術が襲い掛かる
水弾によって翼に穴があき、バタバタと吸血コウモリ達は地面に落ちる。
その頃、アッシュもちょうどオオヨロイ蜘蛛を戦鎚で叩き潰した所だった。
「よし、これで終わりやな! 」
ルナはまだちょっとだけ顔色が良くない
「静かにせぇ言うたやんか?
どういうつもりやねん? 」
「い……いや…………これはその……
あまりにも突然だったものだから少し驚いてしまって……
ホラ、タイミングも悪かっただろう……?? 」
どうにも歯切れが悪い
それにジェイドの背中越しに見えるオオヨロイ蜘蛛の死体から目を背けるように、なんとなくうつむき加減だ……
「ルナさん……
もしかして……蜘蛛が怖いんですか? 」
「・・・・」
先程とは一転
顔を赤くして下を向きコクコクと小さく首を縦に振るルナ
「なんやそれ……しょーもな……」
呆れ顔のジェイド
「し、仕方ないだろう!
誰だって苦手な物はあって当然じゃないか…
蜘蛛と言うよりも虫全般がダメなんだ…
ウジャウジャした脚にあの異様なフォルム…
うぅ……思い出したくない……」
「しっかりせぇや
そんなしょーもない理由で毎回リアクションしとったらキリないで!
ちょっとはこっちの身にもなってや」
ルナを庇うようにフィリアが横にしゃがみこんでジェイドを睨む
「ジェイドさんっ
酷いです!そんなんだから女性にモテないんですよ! 」
「んなっっっっ!!!!!」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をするジェイド
そんな事無い! と力強く否定しようとした矢先
ジェイドの言葉をゴロゴロといった地響きのような音が遮り、3人に緊迫した空気が張りつめる。
先程ルナ達が通ってきた筈の洞窟から
洞窟を多い尽くすほどの巨大な、
ガスのようなモヤに覆われた大きな緑の頭とピンク色の目玉がニョキっと表れた…




