表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
101/101

第101話 〜お兄ちゃんは再び目覚めたようです〜

 ▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁




「……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「……落ち着いて、大丈夫ですから……」


 赤子のように大きな声で、泣いてる声が聞こえる。


 その泣き声は聞き覚えのある、昔から聞いてる声だ。


 只ここ数年、聞いてなかったから忘れかけていた。




 お前は昔から強がりで、泣き虫だったことを――――。




 ▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁




「……さっきも見た天井だ」


 再び目を覚ました俺は、ボーッと天井を見上げる。

 左手の近くに何かを感じて、視線を向ける。


 ……そこにはベッドに突っ伏して眠っている、妹の姿があった。


「………………」

「おはようございます、ヤヒロさん。調子はどうですか?」


 妹に手を伸ばしかけた時、反対側から幼なじみの声が聞こえた。


「おぉ、イオか。おはよう……つっても、さっきも起きたんだけどな」


 妹を起こさないよう、静かに上半身を起こす。


「ヒナは?」

「ヤヒロさんが再び倒れたあと、張り詰めた糸が切れたみたいで……。ヤヒロさんが最初に倒れたこの一ヶ月、ほぼ付きっきりでしたから。疲れて寝ちゃいました」

「そっか……心配かけさせちまったな」


 俺は寝てる妹の頭をそっと撫でる。

 目元は軽くれて赤くなり、涙のあとが少し残っている。


「イオも、心配かけて悪かったな」

「私は別に、そんな…………っつ!」


 伊織の両目から、ポタポタと涙がこぼれ落ちる。


「……急に倒れて、本当に心配したんですからね……!」

「心配してくれてありがとな、イオ。今は本当になんともないよ、大丈夫だ」

「はい……!」


 妹と同じで、ずっと我慢していたのだろう。泣きだす伊織の頭を、安心させるように俺は撫でる。


 ……と。


「目覚めて早々、お連れ様を泣かしてるよ姉様」

「そうね。目覚めて早々、最低すぎるわね兄様」

「……君らは『空気を読む』って言葉、知らないのかな!? 今、結構いい雰囲気だったじゃん!」


 部屋の隅でそう話してる二人に、俺は思わずツッコミをいれてしまう。


「嫌だな、お客様。姉様ほど空気を読める人は、他にいないよ。ところで『空気を読む』って、どういう意味なのお客様?」

「そうよ、お客様。兄様ほど空気を読める人は、他にいないわ。ところで『空気を空気』と読んだところで、なにか意味はあるのかしらお客様?」

「『雰囲気を察して』ってことだよ! 姉様の方はわかってて煽ってるなら、かなりタチ悪いぞ!?」


 二人は顔を見合わせると、互いに首を傾げ合う。本当に意味が分からなかったらしい。


「どうやらヤヒロさん……私たちの知識とこちらの世界の知識や認識は、若干ズレているようなんです……とは言っても、あのお二人はかなり毒舌みたいで……」


 伊織と一緒に、二人を見る。


「なにか怒らせたのなら、とりあえず謝るよ……姉様が」

「なにか怒らせたのなら、とりあえず謝るわ……兄様が」

「いや……あの二人自身が、そもそもかなりズレてるだけなんじゃ……?」


 頭を抱えながら、俺は深いため息をつく。

 すると、『コンコンコン』と三回ノック音が聞こえる。

 視線を向ければ、ヒイラギさんが立っていた。


「よぉ、旦那。起きたみたいだな」

「まぁ何とか、な」


 ヒイラギさんは近づいてくると、トレーを差し出す。


「ずっと口にしてなかったからな、とりあえず軽いものから少しずつ慣らしていくといい」


 そう言って差し出されたトレーには、甘く優しい香りのする何かが器に盛られていた。


「これは……?」

「アプルの実をすりおろして、蜜と水で煮て作った粥だ。ここらじゃ伏せってる時によく食べられる、一般的な家庭料理だ」

「へぇー、美味そうだな!」


 思い出したように、ちょうど腹の虫が空腹を訴える。俺はすぐに受け取って食べよう……とすると、ヒイラギさんがトレーを下げる。な、何故だ……!?


「な、何故……?」

「先の言っておくが、絶対にがっつくんじゃないぞ。ゆっくり食べろ。今の旦那の腹は空っぽだ。空腹感に任せて急いで食べても、腹が痛くなるだけだ。すりおろして煮てるとはいえ、最低でも三十回はしっかり噛んで食え」

「はい……」


 俺が頷くと、ヒイラギさんは器を手渡す。人肌に温められている粥を、俺はスプーンですくって食べる。う、美味い……!


 すりおろしたアプルの実の……リンゴのような味と食感に、蜂蜜のようなほのかな甘さ。隠し味にはなんだろう……レモンのような少しサッパリとした味と、シナモンのような香辛料の香りが更に俺の食欲をそそる!


 一口目を飲み込んで、二口目を食べようとスプーンですくったところで……横から無言の圧力を感じる。


「がっつかず……一口、最低でも三十回……」

「は、はい……」




 俺は隣からの圧力に屈しながら、ゆっくりと時間をかけて粥を食べたのだった……。

お読みいただきありがとうございます。


良ければブックマークや感想、アクションや評価など入れてくださると今後の励みになります。


これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
面白い!気になる!と思ったら( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ
小説家になろう 勝手にランキング

小説家になろうアンテナ&ランキング
小説家になろうSNSシェアツール
感想・考察・ブックマーク・評価・レビュー、etc…
お気軽にいただけたら嬉しいです!よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ