第100話 〜お兄ちゃんは見てしまったようです〜
「ヒナコっ! イオリっ!」
俺は長い廊下を彷徨いながら、ドアを手当たり次第に開ける。
「どこだ!? 二人とも……っ!!」
(……違う! ここも違う……っ!)
「ヒナ……!」
「ぎゃああああ! 誰ですかアナタ!?」
大量の本に囲まれた薄暗い部屋に誰かがいたが、妹じゃないと確認するとすぐに閉める。
そうやって屋敷中のドアを開ける勢いの俺の肩に、ヒイラギさんが手を置いて制止する。
「落ち着け、旦那」
「離せっ! 落ち着いてられるか……っ、うっ……!」
急に走ったからか、泥沼にでもハマったかのように身体中が重い。
「急に走って叫ぶからだ。大丈夫、ゆっくり息を吸って吐け」
この一ヶ月の間で『もし、二人に何かあったら……』そう思うと、今にも不安と自己嫌悪で吐きそうになる。
「安心しろ。旦那の連れ二人はウチの客人として、ちゃんと保護してる。旦那の心配するようなことは、何一つ起きちゃいねぇさ」
「……その言葉、本当か?」
「ウチのお嬢に誓って、保証しよう」
俺はヒイラギさんの肩を借りて、ゆっくりと立ち上がる。
「……ここからなら部屋に戻るより、食堂の方が近いな。旦那もなにか、軽く口にした方がいい」
「そう、だな……」
食堂に向かって歩きながら、内心では不安は拭いきれない……だがここで不安に押しつぶされて、俺自身が折れてしまっては意味がない。
俺は軽く首を振って、邪念をはらう。
(きっとなんだかんだで、ロキやセージも一緒にいてくれているはずだ……俺がこの世界で出会って、信じたヤツを信じよう!)
「着いたぜ、旦那」
食堂にたどり着いたのだろう。両開きの大きなドアが、目の前にあった。
(……今はとりあえず、体力を回復させ……)
ドアの向こうから、何やら楽しそうな会話が聞こえてくる。
「……なんか、やけに賑やかそうだな?」
「そうか? なら、それはおそらく……」
ヒイラギさんがドアを開くと、そこには……。
「じゃじゃーん! お姐様にお願いして、ロキロキとお揃いにしてもらったのー!」
「あんの、クソババァ……!!」
「二人とも、凄くお似合いですよ!」
「イオもお揃いにしてもらおうと思ったら、イオに断られたんだよぉ」
「当たり前でしょう!」
一番最初に目に入ったのは、テーブルの上でミニスカのフリフリメイド服を着た我が妹の陽菜子と……何故か同じものを着せられているロキ。
そしてその二人を見守るように、椅子に座っている……幼なじみの伊織と、セージの姿があった。
「一度着てみたかったんだよねー、メイド服! やはりこのニーハイソックスとスカートの丈が、いい感じに絶対領域をチラチラと……」
「ちょっ、ちょっと! 只でさえ短いスカートの裾を、上げようとしないでください!!」
「ロキは何を着ても、似合いますね!」
「お前はちょっと黙れ、セージ……」
和気あいあいとしている妹たちを横目に、俺は無言無表情でヒイラギさんを見る。色々と言いたいことをとりあえず飲み込んで、俺はヒイラギさんをジッと見る。大事なことなので二回言った。
「ま、待ってくれ旦那! これは俺のせいじゃない! 物凄くなにかを言いたげな目と顔で、俺を見るな!」
どうやら俺たちに気づいたのだろう。妹が俺たちへと声をかける。
「ヒロくーん、見てみてー! ミニスカメイド服だよー! どぉー? 似合うー?」
「お兄ちゃん的には、お淑やかなロングの方が好き……じゃなかった、ナニコレ?」
いつもと変わらない妹の態度に、思わず普段通りに反応してしまう。ナンダコレ?
妹の隣をチラッと見る。触れていいのかわからず、俺はとりあえず……。
「似合ってるなぁ、ロキ」
その瞬間、椅子が飛んできたと同時に目の前に現れたロキに顔面を掴まれる。
「はははっ、冗談ッスよロキっつあん。痛いッス……いだだだだだ!」
「忘れろぉ……今すぐ忘れろ、バカ兄貴ィ……っ!!」
ロキの握力で顔面がメキメキと、立ててはいけないような音を立てはじめる。
「忘れます! 忘れますから! それ以上は、顔が物理的に割れる!」
手を離して貰えたと同時に、床に突っ伏す。死ぬかと思った……。
人影が近づいてきたと思い視線をあげると、先程の人形のような子どもが俺を覗き込んでいた。
「……無様だね、お客様」
「本当に。無様だわ、お客様」
「何たる、理不尽……」
こうして俺は、再び意識を失ったのだ。
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