13.ゴブリン2
次回は戦闘シーンです。(たぶん)
――ケイデン君視点に戻る――
βテストプレイヤーとはなんでしょうか。
「ああ、そうか。道理で――」
彼が何かを言いかけた時、私は遠くに小さな影を見ました。
「あ!逃げますよ!」
長年の戦闘訓練や模擬戦で培われてきた、危機感知能力が頭の中でガンガン警報を鳴らしています。
とっさに彼の手を引いて走り出します。
「何があったんだ?」
影がどんどん近づいてきます。
次第に輪郭がはっきりとしてきた時、私は先程殺したゴブリンの死体を見て、思わず顔を顰めました。
「ゴブリンです」
失態です。
同族の血の臭いに釣られてきたのでしょうか。もう少し血が出ないように、魔石だけを取り出しておくべきでしたか。
優男さんの殺し方が汚かったのでゴブリンの脳は諦めていましたが、諦めきれずに肝臓を探していたのがいけませんでしたか。
「ゴブリンなら――」
「無理です。出来るだけああいった手合いとは戦いたくありません」
「ああいった手合いってなんだよ!訳わかんねぇよ!」
彼に苛立ち紛れに怒鳴りつけられました。
確かに、言い方が悪かったかもしれません。しかし、彼が既に戦えるような状況でないのは明白です。おそらく、今まで生き物を傷つけたことがなかったのでしょう。そのせいで今になって動揺し、戦えなくなっている。愚かなことです。
「あのゴブリンの戦闘力は、騎士団長級です」
そう率直に告げると、彼は惚けた顔をしました。
おそらく彼は騎士団長を知らないと思われるので、だいたいの強さを口に出します。これなら彼もわかるでしょう。
「私の全力でギリギリ勝てるかどうか位です」
「それってやばくない!?」
「だから逃げてるんですよっ!」
勝率は三割程度でしょうか。
私だけだったら五分五分にまで持ち込めますが、後ろに剣士見習いを抱えているので好きに戦えないと思われます。
「あなたはすぐにギルドに戻って、騎士団長級のはぐれゴブリンが現れたと伝えてください」
「き、君はどうするんだ?」
どうする?そんなの決まっているでしょう。
「私はここでゴブリンを迎え撃ちます。あ、それと、くれぐれもギルドでは私の名前を出さないでくださいね」
「な、何で……?」
「そんなくだらないことはどうでもいいですから、走ってください」
私は彼の手を強く引き、自分の前に押し出しました。
「わかった。行ってくる」
彼は強く頷きましたが……。
「……もう少し速く走れませんか?」
「ハァハァ。こ、これで……ハァ、精一杯……です」
AGI特化の短剣使いと、物理攻撃専門の見習い剣士ではステータスに差がありすぎたようで、依然として私の方が速いままです。
「《強化・AGI》、《強化・STA》」
「うおっ!なんだ、これ?」
彼の速度と体力を光魔術で強化します。
後ろを見ると、先程のゴブリンがかなり近くまで迫ってきていました。
ここは私に任せて先に行け!という奴でしょうか。こういうのはあまり好きではないのですが……。
「では、これの足止めはしておきますので、町まで逃げ切ってくださいね?」
私は彼に向かって出来るだけ笑顔で言いました。
……もう戦闘準備は出来ていたので、かなり危険な笑みになっていたかもしれませんが。




