12.ゴブリン1´
――あるプレーヤー視点――
失敗した。
「お疲れ様です。改善点はいくつかありますが、その前にまずは魔石を取り出しましょう」
「あ、ああ。そうだね」
なんとか返事をしながらも、顔から血の気が引いていくのを感じている。
「魔石ってどうやって取り出すんだい?」
「知らないんですか?」
彼女、いや、彼はとても不思議そうな顔をした。
おそらく彼にはこんなにグロい景色など見えていないのだろう。
この世界で生きているNPCと同じ景色を見ようと、全ての描写をリアル準拠にしたのが運の尽き。今日は寝られないかもしれない。
まだ手に残っている、肉を、骨を切った感触。
「この心臓の横に付いている、輝いている鉱石が魔石です。錬金術ではよく使いますね」
それ以外は知りませんけど、と言いながらも彼は手を止めない。
「ほら、あなたは頭を叩きつぶしてしまったので、脳漿が飛び散っているでしょう?こういう汚い殺し方をしていると、装備がすぐに駄目になりますよ?」
「わ、わかった。次から気を付ける」
ひょっとして、彼にも同じ景色が見ているのだろうか。
そうだとしたら、彼はとても異常だ。
ただでさえ高いPS。それに加えて、生き物を殺しても何も思わず、冷静に殺し方を分析している。
「魔石を突いても殺せますが、これは最終手段ですね。魔物などの生物において、最も高く売れる部位が魔石ですから」
「そうなのか」
そもそもどうして彼はそういうことを知っているのだろうか。
今日はゲーム開始日のはずだ。僕と会った時はゲーム開始すぐだった。それなのにかなりの金額を持っていたようだし、魔物の特徴も熟知している。
そこまで考えた時、一つの可能性に思い当たった。
「ひょっとして、君はβテストプレイヤーなのか?」
「そうですけど、何か?」
彼は少しも表情を動かすことなく答えた。
「ああ、そうか。道理で――」
「あ!逃げますよ!」
彼は急に僕の手を引っ張っていった。
こんなことを言えば彼に殺されそうだが、外見はどう見ても美少女なので、不意打ちには緊張してしまう。
「何があったんだ?」
「ゴブリンです」
ゴブリン?さっき簡単に殺していたじゃないか。
「ゴブリンなら――」
「無理です。出来るだけああいった手合いとは戦いたくありません」
「ああいった手合いってなんだよ!訳わかんねぇよ!」
彼は真面目な顔でいった。
「あのゴブリンの戦闘力は、騎士団長級です」




