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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
バンボの村の巻
25/44

記録の24 グワハハハハって感じのは出てこない


 やはりウンボバンボ、ソボンボバンボ、イルブンボバンボには悪霊が取り憑いていた


 斬魔の剣で斬った3人から黒いモヤが浮かび上がり、やがてひとつにまとまって新たな姿を成す


「ちょっとちょっとぉ〜。どうなってるのこれ〜? なんか外に引き摺り出されちゃったわぁ〜?」


 骨と皮しかないひょろひょろの体を包むショッキングピンクの全身タイツと、たてがみのように逆立てた金髪は見る者の目に痛みを与える


 どこかその辺で買ってきたような安っぽい作りの二本角と黒翼。浮遊しながらも翼が動いていないということは飾りなのだろうか


 そして何故かずっとクネクネ動いてる。踊っているのか? それとも新手の攻撃か? どちらにせよ見てていい気はしない


 恐らくこいつが例の悪霊……なのか? 確かに見た目はおぞましいが――


「なんかすっごいの出てきちゃったわね。悪霊っていうくらいだからもっと『グワハハハハ!』って感じのが出てくると思ったわ」


 身の危険を察知したのか、スイは私の隣に来ていた

 ラビトは目を覆ってあからさまな嫌悪感を示し、オルトナリアは放心状態


「んもぉ〜。あなたかしらぁ〜ん? アタイをこんな目に遭わせてくれたのは〜?」


「いや、そうなったのはお前の選んだ生き方だろう」


「ムキーッ! そうじゃないわよぉ〜! せっかくもうちょっとでこいつらの仲を引き裂けたってのに邪魔してくれやがったじゃないの〜!」


 どこから取り出したのか、ハンカチを噛み締めながら地団駄を踏んでいる


「やはりお前が悪霊の正体か。いったい何が目的でそんなことをするんだ?」


「そんなの決まってるでしょ〜? せ・か・い・せ・い・ふ・く。魔王様が世界を支配する為のお手伝いよ〜ん!」


 感情がコロコロと忙しい奴だ。見た目といいキャラといい、魔王もこいつの扱いには困ってそうだな


「バンボの村で起こった事件も貴様の仕業か?」


「ご名答。いや〜楽しかったわよ〜。訳もわからず戸惑い争う愚かな人間を眺めるのは……ね」


 村の方は粗方崩せたんで今度は近くにいたバンボ達に目を付けたってところか。なかなかのクズっぷりだな


 まぁなんにせよ奴が魔王の手下と分かった以上、斬る以外の選択肢はない


「世界征服、か。その野望……阻止させてもらおう!」


 斬魔の剣は肉体ではなく悪しき心だけを斬るもの

 しかしそれでは生温い。魔王の手下ならば二度と悪さをしないよう跡形もなく消すべきだ


 普通の剣に持ち替えた私は悪霊との一瞬で距離を詰める

 水平に振るった剣は奴の胴体を上下に両断した


「終わりだ。口程にもないな」


「そんなこと言わないで……もっと楽しみましょうよ〜ん」


「なっ!?」


 確かに私の剣は奴の体を真っ二つにしたはずだ。しかし奴の切断面から血が滴ることはなく、代わりにどす黒いモヤで覆われていた


「なんなんだ貴様は……化け物か……?」


「最初に悪霊呼ばわりしたのはあなたでしょ〜お? アタイはそれに応えただーけー!」


 奴の体は依然として上下に分かれたまま。それぞれが意志を持っているかのように宙に浮いている


 果たして悪霊だからで済まされる問題なのか? しかし厄介な相手であることは間違いない


「普通の剣で倒そうとした私が愚かだったか」


 悪霊ならば存在そのものが悪ということ。つまり私の目に映っているあの姿はあくまでも仮の姿。あってないようなものだ


 私とは違い血も骨も皮も肉もない。奴自身は悪しき心の集合体なのだ


 だったら何故、あのような奇抜な格好をしているのか。それは考えるだけ無駄だろう

 きっと個人の趣味とかなので私が口出しすることではない


 要するに奴を倒すにはやはり斬魔の剣しかないということだ。なにも難しいことなどない


「次こそ必ず斬る」


「やぁ〜ってみなさ〜いよ〜! 出来るもんならねぇ〜?」


 上空から余裕たっぷりで見下ろしてさぞいい気分だろうな


 しかし私がその程度で狼狽えると思ったか?

 天と地の違いは足場があるかどうか。それだけだ


 ないなら作ればいいだけの話。ハリセンで床を叩いて45度くらいにめくり上げる

 そこを滑走路のように使えば奴との距離も簡単に縮められる


「ん〜、確かに速いけど……来る方向が分かってれば避けるなんて造作もないことよねぇ〜ん」


 攻撃は呆気なく避けられた。しかしこのくらいで取り乱していてはテッセ王国最強騎士の名が廃るというもの


「ならこんなのはどうだ?」


 先程捲り上げた床を、今度はハリセンで砕いて無数の瓦礫を飛ばす

 実体を持たない奴にとってこの程度は避けるにもあたいしないだろう


 しかしそれらを足場にして伝っていけば、360度全ての方向から奴を捉えることが可能になる


「こぉれはちょっと厄介ねぇ〜。じゃあ分裂しちゃおっと〜」


 攻撃が当たる寸でのところで奴は黒いモヤへ姿を変えると、分裂して方々に散っていく。その数およそ10


「くっ! 舐めるなよ!」


 空中で身を翻し、散ったモヤの内の1つに斬魔の剣の切っ先がギリギリ届いた


 触れたモヤが霧散したのを見るに、やはり斬魔の剣が奴への対抗手段になることは間違いないことを確信する


「……なかなかやるじゃな〜い。けどそれくらいじゃ痛くも痒くもないわ〜」


「さっきより縮んだ気がするが、それでも効いてないと言えるか?」


 9つのモヤが集まり再びあの強烈な姿へと戻る。しかし奴の体は先程より一回り小さくなっていた


 分裂出来るとは言え、あのモヤこそが奴の実体のようなもの。1つでも消えれば当然、奴にも影響が出る


「ふふっ。よぉくわかったわねぇ〜。けどそれを踏まえたうえで言ってんのよ〜」


 久々に骨のある奴に出会えたな。倒すべき敵は強ければ強いほど、こちら楽しくなるというものだ


「面白い……。では、続きといこうか!」


 奴の体の一部を削ったはいいが、私が不利な状況にあるのは変わらない


 奴を地に降ろして初めて対等な立場で戦うことが出来る。まずはその方法を考えて――


 ……フフフ。頭も体もフル稼働させて戦うこの感じが堪らない

 テッセ王国ではもちろん、これまで戦ってきた敵にも空を飛ぶ奴など居なかった


 さて、どうやって攻略していこうか


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