早速黒髪ロングにしてみた
あれから数日後のこと。
朝、学校に行くと、教室がザワザワしていた。
教室に入ると、見知らぬ美少女が窓際の席に座ってた。
黒髪ロングヘアの清楚系美人。
その彼女の周りで周りの人が言う。
「え、唯ちゃん、可愛すぎるんだけど!!」
「マジで黒髪超にあってる!」
「清楚すぎてヤバい……」
「でもなんか色っぽい……」
以前より増して、彼女の周りに人が集まる。
男子はもちろん、女子まで「唯ちゃん可愛すぎ!」って群がってくる。
唯さんは相変わらずニコニコしながらみんなに愛想を振りまいてるけど、ふとした瞬間に俺の方を見て、目で『どう?似合う?』って聞いてくる。
俺は胸がざわついた。
黒髪にしたら可愛くなると思っていたけど、あんな化け物並みの破壊力になるなんて…!!
てか、あんなに可愛い子が、俺の彼女だなんて……でも同時に、不安もよぎる。
間違いなくますますモテちゃうよ、これ。
そうだ、俺も変わるための努力をしよう。
そんなことを決意した。
◇昼休み
「こうくん!一緒にご飯食べよー!」と、唯さんが俺の机に飛びついてくる。
相変わらず周りの視線が痛いけど、唯さんは全く気にしない。
「なんであいつなんかと…」
「ものすぎだよな」
すると、俺の手を引いて廊下に出て、寂れた図書室に行き、2人で奥の席に座る。
「ん?こうくんお昼は?」
「コンビニのパンだねー」
「あ〜、だめだなー。高校生男児はもっとちゃんと食べないと」と、叱られる。
そうして、唯さんが鞄から取り出したのは……手作り弁当だった。
「てことで、お弁当作ってきた!今日は唐揚げと卵焼きと、ブロッコリーの胡麻和え!こうくん、確か唐揚げ好きだよね?」
俺は言葉を失った。
唯さんが……俺のために、お弁当作ってきてくれた。
「食べて食べて! 冷めちゃうよ?まぁ、もう冷めてるけど〜た
中を見ると彩よく飾られていた。
すげーうまそうだ。
「いいの?じゃあ、食べちゃうね」
そうして、俺たちは並んで座って、静かに弁当を食べた。
「「いただきます」」
唯さんが作った唐揚げはめちゃくちゃ美味しかった。
「どう? おいしい?」と、上目遣いで聞いてくる唯さんが、可愛すぎて死にそうだった。
「めっちゃ美味しい……ありがとう、唯さん」
「えへへ。よかったー!結構料理とかできるんだからねー?」
あぁ、なんて幸せなんだとそう思っていた。
◇
その放課後のことだった。
いつもように俺は一人で帰っていた。
唯さんは「今日はちょっと家の用事があるから!」と、校門で迎えにきた車でどこかに行ってしまった。
そして、校門を出て少し歩いたところで、突然囲まれた。
三年の男子が五人。
みんな体格が良くて、明らかに俺とは違う世界の人間たち。
「おい、お前だろ?唯と付き合ってるの?」
すると、リーダー格の奴が、俺の肩を強く掴んだ。
「…そうですけど」
「唯と別れろ」
「……え?」
顔を引き攣らせていると、思いっきり腹を殴られた。
「うぐっ…ッ!!」と、その場でしゃがみ込んだ。
「あいつと俺は付き合ってんだよ。二股してんだよ、あいつ。だからお前が引け」とか言われる。
何だこいつら。
何なんだ?
「……嫌だ」と、それでも俺は屈しなかった。
「…ぁ?」と、スイッチが入る感じになった。
いつかはこういう目には遭うかと思っていた。
けど、なんというか、こいつは惨めだと思った。
所詮、こんなことをしないと振り向いてもらえない勘違い野郎。
そう思うと、惨めすぎて笑えてきた。
「…別れないですよ、俺は」
「…いい度胸だな。覚えておけ」
そのままそいつらは帰っていった。
痛んだお腹を抑えながら家に帰宅した。
何とか家族にはバレないように行動していた。
そして、お風呂場でお腹を見るとかなり変な色に変色していた。
更に結構大きな痣になっていた。
「いったぁ…」
そのまま部屋に戻って、ベッドに倒れ込んだ。
すると、スマホが鳴った。
唯さんからだった。
俺は痛む体を起こして、できるだけ明るい声で出た。
「もしもし、唯さん?」
『…ん、こうくんおっはー!今用事終わって家に帰ってきたー』
「そっか、お疲れ様」
『あ、そうだ!この前おすすめしてくれたアニメって何だっけ?見てみようと思ったのにタイトル忘れちゃってさー!』
「あー、あれはキノコ王国物語だね」
『…名前は絶望的に面白くなさそうだよね?』
「確かに」
それから、いつものように雑談していると、『こうくん?なんか、元気ない?』と言われた。
「え? いや、そんなことないよ。そういえば、弁当ありがとう。めっちゃ美味しかった」
『でしょ!いやー、こりゃ明日も作るしかないかな!』
「じゃあ、俺も何かお返しするね」
『楽しみにしておく!』
それからまた少し雑談して、そろそろ寝ようかと思っていると、最後に少しの妙な沈黙が起きる。
「…んじゃ、そろそろ切るね」
『…ん…その…えっと…』
「ん?」
『……大好き』と言うと、電話が切れた。
本当に可愛い彼女である。
電話を切ったあと、俺はスマホを胸に押し当てて、目を閉じた。
唯さんにはこのこと絶対にバレないようにしなきゃ。
俺は……この関係を守るために、どんな痛みも我慢する。




