41 ノームと勝鬨とお客人
56体もの魔物がいる。何度も確認してみても探索の結果は変わらない。アリオスを先頭に、私たちは足音を立てないよう気をつけながら、奥へと進んでいく。次第に聞こえてくる喧騒。魔物同士が戦っている?手前で足を止めるとアリオスが人差し指を唇の側で立てた。
壁際に身体を隠しながらアリオスが、ゆっくりと奥を覗き込む。奥からは、けたたましいぶつかり合う音と叫び声が聞こえてくる。少し離れて私たちは、いつでも動けるように待機していた。
アリオスが、ちょいちょいと手招きをして見せた。振り向いた表情は、なんだか笑いを噛み殺しているように見える。人差し指は、唇の前で立てたままなため、私とバートは、ゆっくりと息を潜めつつアリオスに近づいた。徐々に明確に聞こえてくる怒声は、妙に甲高くて可愛らしい。
「おうおうおう、おめえら気合いを入れろ!」
「お客人がまもなくここにくるぞ!」
「ここは、オイラたちの縄張りだ!」
「お客人のために!」
「お客人のために!」
アリオスに誘われ、バート、続いて私とゆっくり顔を出して奥を覗き込んだ。その光景に思わず声を上げそうになり、慌てて両手で口を覆った。
ゴーグルが着いたヘルメットを冠った小人たちが、白いふわふわした綿毛のような魔物に生えた二本の触角を手綱のように握りしめ、馬に跨るようにして乗っている。小人の手綱捌きに従って、高速移動を繰り返す綿毛は、中央で暴れる猛毒を持つ蛇型の魔物、キングカブラに向かって突進していく。その勢いに合わせて騎乗している小人達が一斉に、キングカブラに向かって槍を投げつけた。
「親方!いまだ!」
「おうおうおう、おめえら準備は整ったぜい 離れろ」
「おう!」
「おう!」
「おう!」
親方と呼ばれたリーダー格の小人が、肩に乗せて構えたのは、バートの変な筒だ。狙いを定めてボタンを押すと、チリチリと火花を纏った何かが勢いよく放出された。
「ケサランパサランと精霊ノーム」
アリオスが、ぽそりと呟いた。ケサランパサランは、別名チギレモグラと呼ばれる見つけただけでも幸運をもたらすと呼ばれる精霊の類いの魔物。それと土属性の精霊ノーム。土竜の正体は、彼らということなの?
火花が、キングカブラに見事命中し、ドカンと爆発を起こした。変な筒ってあんな使い方も出来るんだ。作成者であるバートも興味深く大きく目を開いてノームたちの戦いの様子を見ていた。ノームたちの勢いある攻撃にキングカブラが中央でのたうち回る。
「致命傷に欠けるな 嬢ちゃん 加勢出来るか?」
「はい」
「手加減間違うなよ」
「わかった」
手加減、ノームたちを傷つけるなという事。もちろん、そのつもりだ。
「アイスバーン展開」
キングカブラは、蛇型の魔物、急激に熱を奪われると動きが鈍くなる。私は、キングカブラの真下の地面を氷結させた。急激に体温を奪われ、動きが鈍くなっていくキングカブラ。好機といっせいに向かっていくノームたち。次々と槍の雨を降らせていく。
「もう隠れる意味はないな 特等席で拝ませてもらうか」
アリオスは、壁際から離れるとノームたちの動きが良く見える場所へ移動し、よっこらせと腰を落とす。バートも私もアリオスに倣って、隣にちょこんと座った。
「なるほど、あの筒に詰めて放出できれば……」
バートは、ノームたちの戦闘を見て何かヒントを得たのだろう、ノートとペンを取り出してアイデアをまとめ始めた。錬金術の魔法陣だろうか、迷いのないペン筋が描く紋様は、とても緻密で美しい。私の視線に気がついたのか、「見るなよ 恥ずかしい」と日記でも読まれたかのように頬を染める。
「おうおうおう 勝鬨をあげろ!」
「おうおう!」
「おうおう!」
「おうおう!」
小さな体のノーム達が、ケサランパサランに跨って、「おうおう」叫び声を上げながら、動かなくなったキングカブラの周りを飛び回る。観客状態の私たちに目を向けることなく、勝利を喜びあっていた。
「おうおうおう!……ってお客人!」
「お、親方!報告であります」
「おうおう!なんだ、言ってみろ」
「お客人たちが、オイラたちを見ております!」
「な、なんだって!」
マジで、今まで、気づいてなかったの?目をまんまるくして、ケサランパサランに跨ったノームたちが、慌てふためいている。
「よっ!」
アリオスが、にっこりと右手を上げて、ノームたちに挨拶をした。
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次回予告 マカロンとから揚げと宴




