42 マカロンとから揚げと私
イタズラが成功したかのような笑顔を振り撒くアリオスに、ケサランパサランに跨ったノームたちが、声を「わーわー」と上げながら、右に左に飛び回る。にやけ顔のアリオスは、絶対にわかっててやったんだろうと私は思っている。
「おうおうおう! お前ら落ち着きやがれ お客人の前だぞ!」
「おうおう! 親方!」
「お客人の前だぞ!」
「かっこよく かっこよく」
「おうおうおう!」
お客人とは、私たちのことなんだとようやく理解した。理由は、わからないけど、私たちのために、キングカブラと戦ってくれたんだ。それにしても、探索に反応していたのが、二十人以上のノームの集団とは、想像もできなかったな。レア中のレアであるケサランパサランが、ノームの乗り物だということも、驚きの事実だった。
リーダー格であろう親方ノームの号令に合わせて、私たちの前にノームたちが、横一列に並んでいく。微妙に列が揃っていないのが、可愛らしい。
「お客人 見苦しいものを見せちまった おうおうおう! 申し訳なかったな」
親方ノームが、ぺこりと頭をさげる。親方に合わせて、「さーせん!」と子分ノームたちも頭を下げた。
「オイラたちは、ここ一帯を預かっているノームだ 以後お見知り置きを」
「アリオスだ! こっちの嬢ちゃんがアル、そっちの赤髪の男がバートだ」
親方が手を差し出してくる。アリオスも手のひらを広げて親方に差し出すと、親方はアリオスの人差し指をぎゅっと握った。なんとも可愛らしい握手だ。親方に倣って、子分ノームたちもわらわらと手を差し出してきたので、私とバートもアリオスと同じように手のひらを広げて、指先での握手を交わす。
「本来なら、ここにもお宝置いて、影から見守るつもりだったんだが…… まあ、見つかっちまったもんは仕方がねえ! このキングカブラをお前さんたちにやろう ぜひ、納めてくれや」
いや、いらないから。自信満々に笑顔で微笑まれたとしても、蛇の死骸で喜ぶことはないから。どうやって断れば角が立たない?
「親方 ありがたい申し出だが、俺たちは今までも多くの土産をもらっている そこまで良くして頂くにはもったいない 気持ちだけで十分だ! キングカブラは、親方たちで頂いてくれ」
おお、さすがアリオス、大人な回答だ。私だと、いらないってバッサリ言っちゃいそうだし、バートなら断れずに貰ってしまいそうだ。こういう言い回しも、私にはまだできない。
「あの、俺たちはここで採掘できる鉱石を採掘しに来ただけなんだ」
「あの、バートは、錬金術師で、その材料を調達して、その素材でアイテムを作るんだよ」
「おうおうおう それってこの素晴らしき魔筒ってのも、赤髪あんちゃんが、作ったってことかい?」
素晴らしき魔筒? ……って、親方が大事そうに抱えているバート作成の変な筒のことらしい。親方が、撃つと火花が散って大砲みたいな役目を果たしていたね。
「ああ、全部…… 俺が作った」
バートがゴソゴソと鞄の中に仕舞っていた変な筒を取り出して、バラバラと目の前に並べると、親方をはじめノームたちが「おうおうおう!」と嬉しそうな声を上げて寄ってくる。
「おうおうおう! こりゃたまげた! 素晴らしき魔筒がいっぱいだあ」
「えっと、……いつでも作れるんで、よかったら譲るけど?」
「おうおうおう! なんだって!」
ノームたちが、大興奮して「おうおうおう!」と雄叫びをあげ始める。変な筒の周りを取り囲んで、ぐるぐる回りながら踊りだす。
「おうおうおう! おめえら、宴の準備だ お客人を最高にもてなせ!」
「おうおうおう! お客人 宴の準備が整うまで ごゆっくりお寛ぎくだせえ」
「おうおうおう!」
「おうおうおう!」
あれ? キングカブラは、いらないよって話をしていたはずなのに、なぜか宴に招待されちゃったよ?
「いやあ、娘っこが暴れ出したときは、オイラたちの縄張りを荒らしにきたふてえ奴らと思ったが、あんちゃんたちいい奴だ」
「あ、その節は、すみません」
うん、暴れたって、トラップを破壊しまくったアレのことだよね。アリオスにもしこたま迷惑をかけて、アーくんにも心配をさせてしまった。
「銀髪あんちゃんが、取りなしてくれたから、いいってことよ オイラたちも娘っこの気持ちは、受けとってらあ」
「おうおうおう! カップケーキうまかった!」
「バカ弟子が、暴れて悪かったな」
「いいってことよう いいってことよう」
私もアイテムボックスに両手を突っ込みゴソゴソ漁る。アーくんが、おやつにと作ってくれたマカロンを引っ張り出した。
「こっちもアーくんの自信作です」
「おうおうおう! 娘っこ」
「おうおうおう! オイラたちも食べていいのか?」
「お近づきの印にどうぞ」
カップケーキ同様、マカロンもノームたちはお気に召したようで、おうおうおうおうと大騒ぎ。
「おうおうおう! お客人! 宴だ宴! 楽しもうや」
「またとない機会だな 嬢ちゃん、バート! せっかくだ、楽しんでいこう」
アリオスの意見に大賛成! どうせなら、みんなで美味しく楽しもうじゃん。討伐されたキングカブラは、ノームたちが捌いてから揚げにするという。
「おうおうおう! キングカブラってのは、淡白な味わいで見た目と違い うまいんだぞ」
「へえ…… そりゃ 楽しみだ!」
バートは、ノームたちと鉱石や錬金術のアイテムなどで、和気あいあい親睦を深めている。アーくんの作ったマカロンをパクリ。サクサク、ホロホロ、口の中いっぱいに甘味と果実の風味が広がった。




