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何か書きたい。  作者: 冬の老人
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タケミカヅチの十拳剣

ズバババ

前話の「日本が滅ぶなら農家から」っていう話。

前話で農家の偉い人が酔った勢いで日本への不満をぶち撒けた話、別に思うだけなら良いんだ。


実際、もう狩りや木の実で飢えを凌ぐ生活なんてヒャッハー的な世紀末な世界にまで追い込まれない限り、現実的に考えて農業のない社会と言うのは不可能だ。

そしてその農業従事者が不当に下に扱われている、というのは分からないでもない。

でなければ後継者不足など言われていない。


しかしそれは全て社会が悪いのか?

ここで3分割。

自分(農家)と相手(農家以外の人間)と環境(日本)で考えると農家以外の人間の責任は3割超え程度しかないと思ってる。

とはいえ仕方ないだろう。

確かに人間である以上、食べなきゃ死ぬから農業とはどれだけ遠ざけても切れない縁がある。

とはいえ、皆自分の事で手一杯で自分の仕事の他に農業についても知識を得るなんてそんな時間も金もない。

そして前話でも語ったように農家もまた他業種を見下すほどに他業種への知識はない。

現代農業において無くてはならない農機具、簡単なメンテや修理くらいならできるだろうが大掛かりな物はただの農家には無理だ。

また農作業を終えて帰ってくる安全に暮らせる住居について何を知ってる?

今や当たり前のパソコン、スマホ、ネットについては?

もはや無くてはならないのは農業だけではない。

特別でありたい、そうした虚栄心は誰しもが持っている。

とはいえ農業だけは人間にとって別枠、と3大欲求を盾に自分達を特別扱いしろ、なんてどうしてそんなことが言えるのか。


また農家には他にも問題がある。

仕事の現場が田畑で動かせない以上、その土地に住む事になるがそれ故に地域の活動、結びつきが強くなりすぎる事だ。

昔ならそれでも良かったかもしれない。

しかし今の状況、人口や結婚、子供の状況を考えた場合、どう考えても塩梅がいいとは言えない。

後継者自体は自分のような「長男だから」というかなり消極的な理由の者もいるが、やる気に満ちた者もいる。

そう、男はまだいる。

しかし女はどうか、といえば自分の参加した研修でも5%以下。

勿論、その研修は現時点、あるいは将来的に経営者となるための研修であり、従業員を兼ねた嫁はいる。

しかしながら独身者が多かったし、なんなら研修を重ねる内に小さい子供もいるのに離婚して若干荒んでいた者もいた。

近所付き合いも会社勤めよりずっと密にならざるを得ないし、旦那の実家に住むとなれば義理の親との同居が多数を占めるだろうから介護の話もある。

ツイフェミだとかを擁護したりするわけではないがどれだけ農業は人間に重要だと理解していようがそれだけ田舎に住む、農家に嫁ぐ、そのリスクがデカい。

そこには無知ゆえの恐れも含まれてはいるために誇張されたものもある。

しかし決して全てのリスクが虚構ではない。確実にある。


また自分が農家をやり始めた頃、ラジオで農業の手伝いを「無償」で、つまりはボランティアを募っていた。

バイトですらない。

農業は仕事だ。住んでいる町だとか砂浜のゴミ拾いとは話が違う。

最近では流石に農業バイトマッチングサービスなどが出てきた事もあり大々的にボランティアを募ることはないとはいえ、個人レベルではまだまだある。

そして農家でない者からすればそれは「地域」を盾にした村八分をチラつかせる脅迫と捉えられても仕方ない。


こうしたボランティアをやれ、という考えはやはり農家が農閑期以外が殆ど休みなしという事もある。

会社勤めの人間が休みの時に「自分達は休みなしで働いている」という不幸アピール、という訳でもないがそうした考えた方から来ているように思える。

事実、ローカルラジオの番組では農家だと言うリスナーが多く投稿しているが毎回毎回「仕事しながら聞いてます」と一言おいてメッセージが送られてくる。

繁忙期などそれに加えて露骨に「休みなし」を強調してくる。

確かに辛いが農家は基本的辺りが暗くなれば仕事は終わりだ。

だが会社勤めだと暗くなっても残業があったり、あるいは暗くなってから仕事という場合もある。

そんなの考えれば誰でもわかる。

皆それぞれの生活がある。農家だけが辛いなんてのはあり得ない。


田舎と言われる県において基幹産業、特色には農業と強く繋がりがある。

田舎≒農家が牛耳るというのは誇張し過ぎかもしれないがそれでも都会と比較すればそう言っても良い。

だからこそ、農家が弱体化、衰退するのは田舎の衰退である。

だけど自業自得なのだ。

原始、古代の農業は男性的な土台がスタートだったのだろう。

「挑戦」「豊作」「様々な新しいもの」

そこを生活の範疇から行き過ぎないように女の性質がブレーキをかける。

しかし現代の日本の農業は

「我慢する」「最低限」「価値があるものしか認めない」

そうした女の性質の上に男の性質が乗っかっている。

それは農業における情熱だ。

だから非常に美味いし安全で品質が良い、過去に比べて効率的でもある。

だからこそコストも高い。

土台が女の性質で固められているからあとは男の性質は上に上にと目指すしかない。

常に100点を目指そうとする。

だが10点を60点にするより90点から95点に上げるほうが難しい。

農家全体の体力と地域の活力のバランスが保たれていた時点でどうにかしなければならなかった問題を棚上げして農家として100点を目指し続けてきた結果、地域の活力がもうちょっとやそっとではどうにもならないところまできた。

80点で納得し、農業が3大欲求に根ざした特別な物であるからこそ、人を成長させる道のりをしっかり開拓し、農業も地域に住む人の活力もバランスが保たれた状態からさらなる発展をしなければならなかった。

今からやるのはもう手遅れ。

なぜなら既に競走相手は世界だから。

農業を90点から95点にしようと手間取る間にかつて馬鹿にしていた30点、40点の国がドンドン点差を詰めてきた。

今更どうしようもない。

さらに点差はさらに詰められるし、地域の活力も若者の流出は止まらない。


高品質のために新たな事に挑戦するためには若さがいるが無視してきた。

自分達を若いと考え、何時までも夏の真っ只中にいる感覚だから。

気づけば高齢者。

かつては怪力を誇った農家という国津神。

だがその国津神の力が更には弱まれば都会という高天原からの使者、タケミカヅチの十拳剣は相撲をするまでもなく首を刎ねる。


それで日本全体として見れば良い方向に向かうかもしれないが平定されるってのはつまり従属、奴隷になるようなものだからね。

「やっぱり農家って奴隷として下に置くべきなんだ…」と思われるのがオチ。

だから農家が変わらなければ今の日本は滅ぶ。

それが自然淘汰であり変化だと受け入れるなら、それも良し。

だが変わるなら自分達の手で、と思うなら。

そのために農家は土台を女の性質から男に変え、その上に女の性質を乗せる必要がある。

そして今まで農業を盾にして蔑ろにしてきた、逃げてきた様々な事に力を注ぎ込むしか十拳剣から逃れる術はないように思う。

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