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四属性魔法使いvs土属性魔法使い


 師匠に魔法を教わって十年、俺は未だに師匠に勝ったことがない。


「"火よ、球となれ"。"風よ、吹け"」


 俺の詠唱と共に火の球が生まれ、それはすぐさま師匠の元へと飛んでいく。


「"土よ、壁となれ"」


 しかし、師匠の足元から生えた大きな壁にぶつかった球はジッと音を立てて消えた。

 師匠に一息つく間も与えぬように、俺はすぐさま新しい詠唱を開始する。


「"土よ、球となれ"。"風よ、吹き飛ばせ"」


 今度は重い土の球と強い風が生まれる。


「"土よ、強固な壁となれ"」


 しかし、再び師匠が生み出した土の壁に阻まれてしまう。


「悪くない攻撃ですが、少々常識に囚われ過ぎているかもしれませんね」


 その後も師匠に傷一つつける事は叶わず、早朝の模擬戦は終わった。


「マリユス、学校生活は順調ですか?」


 模擬戦が終わった後、師匠は涼しい顔でそんな事を聞いてくる。


「順調だけど。どうしたんだ急に?」


「王都で暗殺ギルドが設立された、なんて物騒な噂を聞いたもので。何事も無いなら、それで良いのです」


「ふーん。あ」


「おや、何か心当たりが?」


「昨日決闘を申し込まれたんだけど、あれってもしかして暗殺ギルドが送り込んだ暗殺者だったり?」


 師匠はしばらく考えて、口を開いた。


「暗殺者は面と向かって決闘を申し込んだりはしないと思いますよ」


 おっしゃる通り。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「あはは、レグウスさんは相変わらずだね」


「あの人には冗談が通じないんだよ。顔色ひとつ変えやしない」


「確かに、レグウスさんが笑うところは想像つかないかも」


 昼休み。学園の生徒であれば自由に使える演習場で、友人のカールに土人形(ゴーレム)の作り方を教わりながら雑談に花を咲かせていた。


「"土よ、人となれ"」


 土が人の姿へと形成される。と思ったら、砂の山へと成り果てた。


「クソっ、また失敗か」


「うーん、まだ硬さが足りないかな。もっと屈強な人間を想像してみて」


「んー、いまいち人を作るってのが想像できねえんだよな」


 俺の魔法を評価するカールの横には、人とは思えない大きさのゴーレムが佇んでいる。


「前から思ってたんだけど、レグウスさんに教えてもらった方が良くないかな? 僕の教え方じゃ限界があると思うんだよね」


「師匠は土魔法は使えるけど、ゴーレムは作れないんだってよ」


 だからこそ、ゴーレムの魔法を覚えることに意味がある。師匠に勝つためには師匠のできない事で攻める。それが勝利への近道になるはずだ。


「最強の魔法使いでもできない事があるんだね」


「何言ってんだ、師匠はできない事だらけだぜ。水魔法だって使えねえし」


「三属性使えるだけでも凄いことなんだけどね。四属性使えるマリユスがおかしいだけで」


 魔法の属性は全部で四種類。基本的に人が扱える属性は一種類だが、俺や師匠みたいに例外はいる。


「マリユス・サーチャル!! 決闘を受けなさい!!」


 演習場内に、聞き覚えしかない不快な声が響いた。


「......また来たのかおまえ」


「おまえじゃないわ、ミリエラよ!!」


 目の前に現れたのは、黒髪ロングの女子生徒。吊り目で俺を睨みつけてくる。


「俺は今友人と楽しくおしゃべりをしてるんだ。邪魔しないでくれ」


「私との決闘を終えたら、いくらでも雑談させてあげるわよ。どう、受ける気になった?」


 本当にしつこいな、この女。このまま、毎日来るつもりだろうか。


「......分かった。受けてやるよ」


「ほんと!?」


「ああ。その代わり、もう二度と俺の前に現れないでくれ」


「構わないわ。あんたに勝ったらもう用はないもの」


 ほう、こいつ俺に勝つつもりか? 世界で二番目に強いこの俺に?


「無様に負けても文句は言うなよ? 俺は女だからって手加減はしねえ」


「のぞむところよ!! あんたは私にとって通過点にすぎないんだから!!」


 演習場内にある模擬戦場へと向かい、ミリエラと対峙する。


「降参するか、場外に出るか、または戦闘続行が難しいとみなされた方が負け。これでいいな?」


「ええ、異議ないわ」


「おっけー、じゃあせ」

「戦闘開始よ!! "土よ、牢となれ"!!」


 俺に被せるように戦闘開始を宣言したミリエラは、手を空にかざして土魔法を唱える。

 すると、俺を取り囲むように四本の土の柱が生えてきた。


「"風よ、吹け"」


 強く吹いた風が俺を後ろへと飛ばし、土の牢から逃がしてくれる。


「不意をつけば勝てると思ったか? 俺にかかればこの程」

「"土よ、槍となれ"!!」


 今度は土で長い槍を作り、突撃をかましてくる。


「せっかちなやつだな。"炎よ、球となれ"。"風よ、吹け"」


「そんな炎、効くわけないでしょ!!」


 俺が飛ばした火球は容易く土の槍に弾かれる。


「へー、やるねえ」


「ふ、二人ともやめなさい!!」


 これからと言うタイミングで横槍が入った。いつの間にかそこにいた教師、カラスリ先生が静止の声を上げている。


「こ、校内での決闘は校則で禁止されています!! い、今すぐやめなさい!!」


 だが、あの教師は魔法を使えない影が薄いだけの男。魔法使い同士の戦いに彼は手出しをできない。悪いが、このまま続けさせてもらおう。

 

「"土よ、マリウス・サーチャルを縛る鎖となれ"」

「っ!?」


 カラスリ先生に意識を向けていた隙をつかれ、ミリエラによって創造された土の鎖が体にまとわりつく。身動きが取れなくなった。

 複雑な指示をする詠唱ほど魔力の消費は大きい。当然、人を縛る鎖を作る魔法は相当の魔力消費のはず。ミリエラはここで決めてくるつもりだ。


「もらったわ!!」


 再び、ミリエラは土の槍で突撃してくる。


「"土よ、盾となれ"!!」


 急拵えの盾で迎え撃つ。


「うおりゃあああ!!」


 威勢のいい声と共に放たれた重い一撃で盾は容易く破壊される。


「ちっ!! "風よ、吹き飛ばせ"!!」


「くっ!?」


 間一髪のところでミリエラを吹き飛ばし、何とか距離を取る。


「まずはこの鎖を何とかしねえと」


 動かずとも魔法は発動できるが、近接戦に持ち込まれると分が悪い。体を締め付ける鎖に触れ、詠唱を行う。


「"土よ、戻れ"」


 土の鎖からパラパラと砂が溢れていく。しかし、他人が形成した魔法を崩すにはどうしても時間がかかる。そんな時間をミリエラが与えてくれるとは思えない。


「"土よ、球となれ"」


 ミリエラは自分の顔くらいの大きさの球を創造する。だが、風魔法を扱えないミリエラにはそれを飛ばす手段はないはずだが。


「うぉりゃあああ!!」


 と思ったら、そのまま投げてきやがった!?


「"風よ、吹き飛ばせ"!!」


 向かってくる土の球に風の魔法を放つ。何とか勢いを殺すことに成功するが、ミリエラは諦めていない。


「"土よ、巨大な棒となれ"!!」


 さっきの槍よりも太い棒を作り出し、土の球を打ち返した。


 次から次へと、トンデモ戦法繰り出しやがって!!


「"風よ、思いっきり吹き飛ばせ"!!」


 さっきよりもニ段階強い風の魔法を放ち、もう一度球を弾き返す。凄まじいスピードで跳ね返った土の球はミリエラの腹に直撃した。


「ぐえっ!?」


 ミリエラはそのまま後ろへと倒れ、動かなくなった。


「......やったか?」


 思わず出てしまったその言葉がフラグになったのか、ミリエラの体がピクリと動く。だが、それ以上動く事はなかった。


 俺はどうやら勝ったらしい。


 そして、校則を破った罰として放課後教室の掃除をさせられることになった。


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