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第1話 読んで損した小説

最後まで読んでいただきありがとうございました。


少しでも面白いと思っていただけましたら、評価や感想をいただけると励みになります。


また次回もよろしくお願いいたします。

「ねえ、美桜!」


放課後の教室。


鞄をまとめていた神谷美桜の机に、一冊のノートが置かれた。


顔を上げると、親友の由香が期待に満ちた目でこちらを見ている。


「できたの!?」


「うん! ついに完結した!」


由香は小説を書くのが趣味だ。


美桜は何度も感想係をやらされていた。


「今度は恋愛ファンタジーだから!」


「また?」


「またとは何よ!」


由香はむくれたが、すぐに笑顔になる。


「絶対面白いから読んで!」


「はいはい」


美桜はノートを受け取った。


表紙には大きくこう書かれている。


『神に愛された皇子と聖女の恋』


「うわ、タイトルからして長そう」


「ちゃんと読んでよ!?」


「気が向いたらね」


そう言って美桜は笑った。


まさか、この一冊が自分の運命を変えるとも知らずに。


◇ ◇ ◇


その日の夜。


美桜はベッドに寝転がりながらノートを開いた。


最初は適当に読んでいた。


だが。


読み進めるうちに眉間にしわが寄る。


「え?」


ページをめくる。


「えぇ?」


さらにめくる。


「なにこれ」


そして最後のページを読み終えた。


美桜はノートを閉じた。


数秒。


沈黙。


そして。


「いやいやいやいや!」


思わず叫んだ。


「何この皇子!」


主人公の婚約者である皇太子は、やることなすこと失敗ばかり。


騙される。


利用される。


逆ギレする。


そのくせ偉そう。


「頭悪すぎない!?」


美桜はベッドの上で転がった。


さらに問題はそこではない。


物語終盤。


神に愛された第二皇子が毒殺される。


すると神が怒り狂い、大洪水を起こした。


王都は崩壊。


国土の半分が海に沈む。


数十万人が死亡。


そして。


――終わり。


「終わったんかい!」


美桜は枕を抱えた。


「いやいやいや!」


「神様、好き勝手しすぎじゃない!?」


「なんで国滅ぼして終わりなの!?」


「起承転結は、どこいった!」


読み返しても意味がわからない。


「読んで損した……」


明日、学校で由香に言ってやろう。


書き直せと。


最低でも続編を書けと。


美桜は大きくため息をついた。


時計を見る。


もう遅い。


「寝よ……」


電気を消し、布団に潜り込む。


数分後。


美桜の意識は眠りへと沈んでいった。


◇ ◇ ◇


――眩しい。


ふわふわとした感覚。


夢だろうか。


美桜はゆっくり目を開いた。


そこには。


見たこともないほど美しい女性が立っていた。


銀色の髪。


透き通るような白い肌。


まるで光そのものが人の形を取ったようだった。


「え……誰?」


女性は悲しそうに微笑んだ。


そして静かに言った。


「貴方、私のユリウスを助けてくれない?」


「は?」


思わず聞き返す。


誰それ。


ユリウスって。


クラスにもいないし、知り合いにもいない。


「お願い」


「っていうか、貴方は誰なんですか?」


女性は答えない。


ただ切なそうな顔でこちらを見る。


「ユリウスを助けて」


「いや、意味分かんないんだけど!?」


すると女性は少しだけ笑った。


「きっと貴方ならできる」


「できるって何が――」


その瞬間。


世界が光に包まれた。


◇ ◇ ◇


「聖女様!」


歓声が響く。


美桜は勢いよく目を開けた。


「えっ!?」


飛び起きる。


見慣れない天井。


高い柱。


巨大なステンドグラス。


白い大理石。


まるでヨーロッパの大聖堂のような空間だった。


「どこ……ここ……」


周囲には豪華な服を着た人々が並んでいる。


全員が涙ぐみながらこちらを見ていた。


「聖女様がいらした!」


「神よ、感謝します!」


「万歳!」


「え?」


美桜の頭は真っ白だった。


なにこれ。


ドッキリ?


テレビ?


隠しカメラ?


混乱する美桜の前に、一人の少年が進み出た。


金髪。


整った顔立ち。


豪華な衣装。


見るからに身分が高そうだ。


少年は堂々と名乗った。


「聖女よ。よく来てくれた」


「私はカイル・アルヴェイン」


そして微笑む。


「この国の皇太子だ」


カイルは誇らしげに言った。


その名を聞いた瞬間。


美桜の心臓が止まりそうになった。


え?


カイル?


どこかで聞いた名前。


昨日読んだ小説の――



皇太子カイル!?


頭の悪い皇太子!?



まさか。


私……。



美桜は固まった。


いや。


ちょっと待って。



昨日読んだ小説。


頭の悪い皇太子。


神に愛された第二皇子。


国の滅亡。


そして――。



美桜の顔から血の気が引いた。


「私……あの小説の世界にいるの?」


誰にも聞こえない声が漏れた。




しかも。


あの読んで損した小説の…



その瞬間。


運命の歯車が静かに動き始めた。



読んでくださってありがとうございます!

5話ごとに登場人物のイメージイラストを公開していく予定です♪

まずは第5話で主人公・美桜が登場します。

作者のイメージではこんな子なんだな~くらいの気持ちで見ていただけたら嬉しいです!

それでは次回もよろしくお願いいたします!

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