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〜記録1〜


 これは私が、とある田舎町で起きた事件について調査した記録である。事件そのものは十五年前のことであるが、長き時を経て、事件の再調査を申し込まれたため私が担当することとなった。

 というのも、我が国には少々変わった制度がある。

 殺人事件の時効は十五年。しかし、犯人が分からずじまいで闇に葬り去られていくというのは、被害者遺族にとっても、被害者の友人たちにとっても、捜査官にとっても後味が悪い。犯人を野放しにしたという悔しさ、その犯人がのちに新たな事件を起こす可能性。あらゆる面で嫌な事態だが、しかし、物騒な世の中だ。

 王侯貴族が狙われた歴史的な重大事件ならばともかく、庶民の間で起きた些細な(私はそうは思えないが、上の者は些細だという)事件の資料を何十年も保管するのは難しい。資料が紙のため色褪せていくためでもある。

 そのため、我が国では以下のような法がある。

 『殺人事件において、時効までの年月が残り半年となった場合、事件関係者(被害者遺族、事件当時居合わせた者等)には再捜査を請求する権利があるものとする。』

 この後にも長々と文章は続くが、ずばりまとめると。

 『時効まで残り半年となった殺人事件は、事件関係者が望めば徹底した再捜査を行う。請求した者の意思に沿い、当時の捜査官、現在の捜査官、警察と協力関係にある探偵が関わることが可能である。警察は徹底的に捜査協力をすることを命じる』だ。

 最後の一文、探偵が関われるというのは、当時の捜査官が不正を働いていた可能性があるため、外部の者が捜査に加わることを望む事件関係者がいるためだ。

 怪しい探偵事務所に頼むわけにはいかないため、一応は警察と協力関係にある探偵事務所のみという制約があるが、基本的にはきちんと国に認可を貰っている事務所ならどこでもいい。事件関係者が選べるようになっている。

 ここまで言えば分かるかもしれないが、私はその探偵だ。

 事件当時は新聞で読んだ程度だった事件のため、私は一から全てを洗い出す方法を取った。聞き込み、証拠品集め等。余計な先入観なく一から調べるという点が、事件関係者が私を選んだ理由かもしれない。(でなければ、誰が王都外れにある寂れた煉瓦造りの建物の二階にある寂しい雰囲気の我が事務所に頼むものですか。依頼人が友人とはいえ、私の能力を買ってくれたのだろう)。

 とにかく、これは全ての捜査を終え事件の全貌を特定した現在の私による、警察へ提出するための捜査記録である。

 警察が裁判で使用するため、私がどのように調べ上げ、犯人特定を行ったのか、そのいきさつを細かく書いていく。万が一、私の推理が間違っていた場合、あるいは訂正すべき箇所があった場合、警察が裁判当日までに再度捜査をするからだ。

 …

……。

………。

 さて、前置きはこの辺りでいいんでしたっけ。まあ、ここまで読めば私が何者かによって嘘八百を書かされているのではなく、自分で事実を書いていこうとしていると分かってもらえるだろう。全く、そんなところまで考慮して前書きを入れろとは、裁判所も面倒くさいことを言う。

 まずは事件内容、そして再捜査が始められる前の段階において分かっていた事件概要を述べたいと思う。その後、私の捜査について記述していくこととする。


 最初に一つ述べておく。

 これは、吐き気を催さずにはいられない残虐な事件であったと。


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