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隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?  作者: こころ ゆい
最終章『番ではない私でよろしいのですか?』

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6 あたたかな祝福につつまれて②

 彼女の髪の毛と瞳は、父であるヴォルフ陛下の白銀色の髪や瞳と、同じ色合いだ。


 以前は眼鏡に隠れて見えなかった瞳も、今は眼鏡をかけておらずはっきり見える。


 どうやら留学するにあたり、身分を隠すため、人間には珍しい色合いの瞳を判別しにくくしようと身につけていたものらしい。


「今日は、めでたい場ですもの、叔父上とお呼びしても宜しいですわよね。


叔父上、そして、ジャスミン夫人、

ご結婚おめでとうございます。


そして、


その節は大変、お世話になりましたわ。

改めてお礼を言わせて下さいませ。


本当に、ジャスミン夫人がいなければ

私は牢に入れられていたでしょう。


両親が気づいてくれたとしても、

少なくとも数日は冷たい牢で心細く過ごしていた。


それに....


私、嬉しかったんですの。

『不完全』の私に、周囲はいつも厳しかった。


でもあの時、あなたは私の傷ついた心に気づき、フォローして下さいました。


あなたの優しい言葉や気遣いに触れて、とても救われた気がしたのです」


 シルヴァ王女は、耳や尻尾がない。


 両親や弟のマーナガルム様にはある獣の特徴を、有さずに生まれた。


 時折、『先祖返り』として、完全なる獣の姿で生まれる者がいるが、シルヴァ王女はその逆だった。


 非常に稀であり、女性という性別。

 もちろん、耳や尻尾の特徴を有していないだけで、優秀な頭脳や、民を思う心、的確な判断力、時には腹芸もこなすほど、王としての素質を備えていたのだが、気づけば、周囲からーー


 特に女性蔑視派の貴族達から、『不完全』と呼ばれることが多くなり、傷つくことに慣れていった。


 留学先でも、トランドル男爵令嬢の嫌がらせに耐えて、心をすり減らしていた時の一件で、ジャスミンには感謝してもしきれないほどだった。


「いいえ。私の方こそ、その節は大変申し訳ありませんでした。でも、とてもお元気そうで安心しました」


「ええ。留学は終えました。今は次期国王として、学びを更に深めております。将来、国を背負う者として、頑張って参りますわ」


「シルヴァ王女でしたら、きっと、立派に国を治めていかれるのでしょうね。私も微力ながら、お支え致しますわ」


「ありがとうございます」


 シルヴァ王女とジャスミンは、笑顔で手を取り合った。


「フェンリル叔父上!ジャスミン夫人!


ご結婚、おめでとうございます!


とーっても綺麗!


へへ!みんな笑顔だし、叔父上達はとっても仲良しで嬉しいし。食べ物もジュースもぜーんぶ美味しいし。


僕、幸せだよ。


ね、ジャスミン夫人」


 満面の笑みでお祝いを述べてから、ちょいちょいと耳を寄せるよう手招きするマーナガルム様。


「ん?」


 そっと半歩近づくと、潜めた声で耳打ちしてくる。


「今度こそ、いちごタルト、一緒に食べようね?」


「まぁ。ふふ、ええ。ぜひ、ご一緒させてくださいね、マーナガルム様」


「やったぁ!絶対ね」


「はい!」


「....近すぎだ」


「うわぁっ」


 嬉しい返事に、近い将来の約束を交わした所で、フェンリルがメラメラと嫉妬の炎を燃やして、甥っ子をジャスミンから引き剥がした。


 突然、首根っこを掴まれたマーナガルム様は声を上げる。


「.....まぁ」


 こんなに小さな子にまで、ヤキモチを妬くフェンリルに、ジャスミンは驚き....


 そして、愛情溢れる笑顔を向けた。


「もう、フェンリル様ったら」


「...........っ」


 罰の悪い顔をする愛おしい夫へ、背伸びして


 ふわりと。


 心を伝えるキスを贈る。


「フェンリル様....」


 ーーこの世の誰よりもあなたを、愛しています。


「ジャ、ジャスミンっ!」


 その直後。


「「ストーップ!」」


 初めて妻から贈られた口付けに感極まったフェンリルを、テリウェル陛下とヴォルフ陛下が揃ってチョップしたのは《ご愛嬌》ということでーー。



 麗らかな春の風が、楽しい笑い声を運んでいく。


 婚約破棄された令嬢は、隣国で愛する人と出会い、幸せを掴んだ。


 二人の物語はこの先もずっと、ずっと....

 続いていく。


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