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3/3

さん。

ぐだぐだに近いですが、完結です。

 王宮。謁見の間。

 最奥の玉座、数段上から見下ろす陛下の表情は厳しい。いつもなら隣にべったり張り付いてる大根さんですら、玉座の下にいる。


 私達側室候補達は玉座と向かい合う位置に。

 ここにいるのは宰相閣下を含めて、全員関係者ってことね。


 私の護衛騎士ズとスフェナは壁際にいる。巻き込まれ防止のためよ。あと見慣れないのや初対面もいるけど、雑魚だから放置でいいと言われてるし。


「さて」


 宰相閣下が、書類を確認しながら話始めた。陛下は黙ったまま。大根さんがうるうると見つめてるけど無視。てか、こっちを見ないでくださる?


「レリ嬢より、側室候補様達から嫌がらせを受けていると、報告が上がりました。相違ありませんか?」


 自作自演乙。これは裏も取れてるし間違いないわ。涙目で震えてるけど、どや顔見えてたわよ。


「畏れながら閣下。嫌がらせを受けていたのはわたくしの方にございますわ」


 悲しそうなツルペタ公爵令嬢が目配せすると、彼女の侍女が証拠とされるものを差し出した。箱の中には虫の死骸や中傷の手紙など。


 それを見たお転婆侯爵令嬢、そしてのんびり屋を装う毒舌伯爵令嬢も、自分も嫌がらせを受けていたと、証拠品を見せて言い出した。


「そんな……! 陛下ぁ、あたしっ、ほんとに」


 それを見た大根さんが、陛下にすがるために階段を上ろうとしたけど、近衛騎士に槍の柄で止められてた。自分には証言だけで証拠がないからね。


 まぁ、どっちもどっちだけど。


「レリ嬢の証言を元に調べましたが、確かに候補様達がやった証拠はでませんでした。逆に、自作自演の証拠が山ほど出てまいりましたが、これ如何に?」

「っ!?」


 これが大根さんクオリティー。候補達は証拠隠滅までがセットでした。残すようなへまは、貴族女性としてあり得ない。ある意味淑女のマナー(裏)なのだから。


「そ、そんな、陛下! あたしを信じてくれないの!?」

「信じる要素がひとつもないからなぁ」


 そりゃ不敬に次ぐ不敬、国庫横領未遂、相手のいる殿方への不躾なアプローチ。全てが処罰の対象だもの。まともな人ならわかりきったことなのに、どうして許されると思ったのかしら。いや、聞こうとは思わないけど。まともな答えじゃないだろうし。


「そんな!? だって私ヒロインなのよ!? 逆ハー目指したんだもの、そうなるのが当たり前でしょ!?」


 いや、それ超謎理論。努力なしにあり得ないから。ちょっと声かけて上っ面だけ撫でるような軽い言葉だけで落ちるようなバカいないから。三段論法でもぶっ飛びすぎてるから。


「庶民だし多目に見てきたが、不敬が過ぎる。その行動も放置はできん。レリは北の修道院に入ってもらう」

「なんで!?」


 いや、不敬だからでしょ。


「だって、あたし陛下に愛されてるのよ!? 修道院とかありえないし!!」

「国王陛下へ対する不敬だけで極刑に処すこともできますが? これは庶民のあなたへの陛下からの恩情なのですがね」

「ほんとのことでなんで極刑とか! てか極刑ってなによ!? みんな! 助けてよ! あたしのこと好きでしょ!?」


 大根さんに接するのは、宰相閣下だけ。大根さんにまとわりつかれてた方々の、冷たい視線には気づけないようね。


「礼儀がなってませんこと」

「まあ、庶民ですし?」

「それにしても自分の立場がわからないなんて、よっぽどじゃありません?」


 ここぞとばかりに、側室候補達が大根さんに口撃をしかけるけど、陛下の興味はおろか視線すらもらえなかった。この日のために豪華なドレス誂えたみたいなのに、無駄になったわね。


 私? うちはそこそこ余裕のある子爵家だけど、あんなにドレスに予算は回せないわね。そんなお金があるなら領地に使うわ。見劣りするのは仕方ないからデザインとかでフォローしてるわ。


「あー、俺はレリは好きじゃない。もちろん、愛してもいない」

「陛下!?」


 大根さんの叫び声。悲鳴に近いそれは、大根さんの夢の終わり。だけど、陛下。


 だからあなたはどうして私を見て言うのよ?


 信じなかったから? だとしても場所を考えなさいよ! わかるでしょう、こんな所でそんなこと言ったらどうなるのか!


「マルグリド子爵令嬢?」

「……なんでしょう」


 つるぺた公爵令嬢の冷たい声。心持ち一歩ずれてみたわ。離れたい、今すぐに。三人に詰め寄られたら逃げにくいし。


「あなた、へい」

「カティア」


 だからなんで呼ぶのよ! しかもいつの間に玉座から降りて来てたの!?


「陛下!」

「なぜマルグリド子爵令嬢の名を?」

「いつの間に取り入ったのでしょうねー?」


 だからあなた方好かれないのよ。


「ティアは特別だからな」

「だから今言わなくてもいいでしょう」

「口にしないと伝わらないから」

「よほどあの時信じなかったの、根にお持ちなのね」

「いや、誤解させた俺のやり方が悪かった。もう間違わない。ティアははっきり言わないと」

「やめてくださるかしら」

「いやだ」

「陛下」


 ちょっと周りを見ましょうよ。ポカーンとしてるのよ? みんなポッカーンと。何事もない顔してるのスフェナ達だけなのよ?


 皆陛下のこんな姿見たことなかったのに、突然素に近いもの見せられたら、そりゃ驚くでしょうよ。


「気にするな。気になるだろう」

「気にしなさいよ!」





 まぁ、それからどうなったのかというとね。


 まず、大根さんは戒律のものすごく厳しい修道院に行ったらしいわ。これは表向きの話で、本当は国外追放とも言われてるけど。鉄格子のついた馬車に乗せられるその時まで、ヒロイン夢物語を叫んでいたから、とっくに狂っていたのかもしれないわ。


 側室候補達は、早々に実家に帰されたわ。陛下の前での自作自演は不敬だったのだけど、家柄的に不問にされて、即行で嫁がれたとか。彼女達もこんなのシナリオになかったとか叫んでいたから、やっぱり自分に都合のいい妄想の中にいたのかも。


 どちらにしても、もうシナリオは存在しないからどうしようもないと思うけど、監視はつけられるそうよ。なにかやらかされたら大変だものね。


 私はというと、なぜかまだ城にいるわ。

 奥宮は封鎖されて、陛下の部屋の隣に住んでるの。不思議よね、私も摩訶不思議。

 子爵領より広い領地の経営してみないか? という言葉につられて求婚をついうっかり受けてしまったからなんだけど、いや、まぁ、ねぇ?


 だって、陛下が実は溺愛体質だとか、浮気はしない主義とか、ちゃんと話を聞いてくれて構ってくれるとか、やだもうトキメいちゃったんだもの!


 あんな目標掲げといて、達成どころか一歩も進めなかったなんて、どうなの。


「わたくしにしてみれば、あの陛下相手に、逃げられると思ってらしたカティアさまが不思議ですわ。外堀埋められておりましたのに」


 ……なんですって、スフェナさん?


 やっぱり、目標を掲げないと駄目かしら。


「お腹のお子に障りますので、おやめくださいませね」


 理不尽だわーー!!





読んで下さってありがとうございました!

またどこかでお逢いできましたら幸いです!

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