1ー2ー19 蠱毒戦3
連日投稿……。
いつからこうなったか。
ドットの頭の中は少し複雑な考えが張り巡らされていた。というのも先程のことだ。
入口付近で合図を待ち上のランクであるシルクの流す音が聞こえ、いの一番にパーティメンバーと中に入った。現れた敵もそこまで強くはなくランクで表すなら良くてE、数で言うならばFがほとんどの民衆に毛が生えた程度の実力しか兼ね備えていない。
だからこそ、ドットは油断しかけていた仲間に注意を促しながら慎重に進んでいたはずだった。
「クソッ!」
床を強く叩く。
それを見守ることしか出来ないのがパーティメンバーであるリックだけだ。もう一人の仲間はそこにはいない。
「……ジムが後退した可能性もある。下がるべきなんじゃないのか?」
「リック……いや、それはない。あいつは粗相こそ起こせどCランク上位の力を持っている。ましてや撤退したならば星の使いや魔倒、癪だがユラとかいう騎士の実力も計り知れねえ奴がいる。戻るだけ無駄だ」
ドットは馬鹿なわけではなかった。
洋平に喧嘩を売ったこと自体、戦って体で相手の実力を測りたかっただけであってその強さが自分以上であることは理解していた。だから戦いたがったのだ。
強けなるためには自分よりも格上と戦う。それが一番の近道であることはドットがよく理解しており、現にその性格を除けば依頼の達成率も悪くない。またその依頼自体も上のランクであるBの討伐依頼がほとんどである。
だが冒険者ギルドからすれば貴族に喧嘩を売ってしまうかもしれないドットをBに上げることは難しかった。Bランクより上になれば貴族と関係を築くことも行わなければいけないのだから。なのでギルドは重い腰を上げることもなくドットはCランク止まりである。
「グホッ……」
「ここからは敵も強くなってきたな。……にしても自我のないやつの戦うなんて心が痛えな」
「お前にそんな感情があること自体、驚きだよ」
「……自我のないやつと戦っても全力じゃねえだろ。こいつらが俺よりも格上なら話は別だけどよ」
その言葉通り強くなったとはいえ敵はドット達の実力にはほど遠いステータスである。それにステータスを見れば少し戦ったことがある程度の民衆がほとんどである。
その人達を殺すほどドットは落ちぶれてはいない。全て腹を一発殴り地に沈めている。
「……ここらで一度止まらないか? もう少しでロイさんやシルクさんも来るだろう」
獣の彷徨の中で一番の常識人であるリックにとっては一度、情報交換をしたかった。二人に会えばいなくなったジムの話も聞けるかもしれないし、戦いに関してはとても楽になる。
リックは面倒事が嫌いなのだ。それこそこの依頼の報酬が低ければドットに任せて自分は違う依頼を受けていた。仲間が嫌いなわけではない。自分が強ければどんな依頼も受けるがリックはあまり強くないことを理解していた。
Cランク下位の自分とBランクに届く力を誇るドット。ジムもドットには劣るがCランクとして申し分ない力を持っている。
だがリックの頭の中には解散という言葉はない。それはドットとジムも一緒であった。適材適所という言葉がある通り戦闘では二人が、話し合いなどでは自分が行けばいいと思っていたからだ。
洋平と話す際にもリックは行くことを望んだが珍しくドットが反論し、結果喧嘩が起こりそうだっただけである。実際、街の平和を守りや国の重鎮から期待されているシルクがいたために安心していたのかもしれない。
そしてリックの強みはただ後衛で構えているだけではない。先も言った通り適材適所という言葉があり、リックは後衛にて相手の能力を測ることができる鑑定眼を持っていた。大まかなステータス差しか分からないドットとは違い、相手のスキルとステータスが分かるリックがどれだけ重要なポジションにいるかは想像しやすい。
獣人にしては珍しい魔法職のリックが前衛に立つのは厳しいものがあるが、それでもCランクとしての成績を誇る彼にとってはある程度の敵を屠ることが出来る。そう、ある程度までなら。
「……ここで下がるべきだ。奥から変な感じがする」
「奇遇だな。俺もそんなことを感じていた。だけど、この先から感じたことのある気配もあるだろ」
一つの扉の前で手をかけたドットにリックは言ったが、返答に何も返すことが出来ない。当たり前だ、奥から感じる殺気や気配からは知らない者と、そしてよく知った存在のものがあるのだ。
だからこそ、リックは待ちたかった。
ドットが戦えば勝てる相手かもしれないし、もしかしたら違うかもしれない。中から放たれる殺気の中には自分達より格上の人がいるのは目に見えている。
ロイやシルクという最高戦力と捉えられる二人がいれば簡単にクリア出来るはず、そんな考えになってしまうのも無理はない。
どうしようか悩み結論を出せずにいた、そんな時だった。
「グギャアアア」
「ッツ!」
よく知っている悲鳴にドットの体は勝手に動いていた。そして、
「ガッ……」
ドットの腹は何かに貫かれていた。
それが何なのかに気付くには少し時間がかかりすぎた。それを認識した時にはもうドットは壁にぶち当てられ口から鮮血を垂れ流している。
「倒しきれなかったか。ふぅん、この馬鹿と同じ類かと思ったけど致命傷はないみたいだね」
「うるせえ、よ」
腰にかけた麻袋から一本の瓶を取り出し飲み込む。嫌いなポーションの味のはずがその甘みに驚きながらも立ち上がった。
「……ポーションかな。それにしてもいい効果だ。高かったんじゃないのか?」
「貰い物だ。気にすんなよ!」
ドットは飛び出し自身を貫いた存在を殴った。
「ガッ、グッ……」
「さすがに落ちねえよな。……リック!」
「落ちるわけがないだろ? 僕の能力で操りながらステータスを上げているんだから」
ドットはチラリとそう言う存在の顔を見た。
自分より若そうな、というよりも小さな少年。そんな存在に操られる要素がリックにあったかと考えた。
その一瞬の考えの最中に二人の攻撃が始まる。少年とは関係がないもう一人の男からの攻撃だ。
「ジム!」
そう叫ぶがジムと呼ばれた小麦色の肌を持つ獣人の目は定まらない。それはリックも同じだ。
ジムはドットに何度も連撃を仕掛けていくがどれも躱されるばかりである。というのもドットはジムの攻撃だけは躱すことを決めているからだ。何度か撃ち込まれたリックの火球は全て受けている。
ジムのスキルは衝撃。ステータスに関係なく相手に通過ダメージを与えるもので、打撃系の戦い方と酷く相性がいい。獣人の格闘家のみが使えるスキルでドットすらも覚えていないスキルなのだが、もし当たれば当たった箇所を抑えることは間違いない。
逆にリックの魔法は確かにダメージこそあれど、そこまでの威力はない。それは無意識にリックが手加減をしているかもしれないとドットは考えていた。
いつもリックは自分の魔法の威力を少しずつ上げて相手への最適解を探る。その戦い方が引き継がれているのならばドットにも勝機はあった。
『出来れば能力は使いたくねえな。……あいつも攻撃を仕掛けてこない辺り力を隠しているんだろ……』
少年はただ笑うだけで攻撃しては来ない。
それがドットに対する力の評価なのか、自分のスキルにそれだけの自信があるのかは不明だが、ドットにとっては好都合である。
『あいつを引きずり下ろす! あいつを倒せば操られている奴らも元に戻るだろ!』
そうするためにはドットでは力不足である。
それを彼は理解していた。脳筋とはいえ戦いに関してはこれ以上ないほどのセンスを誇るドットはすぐに指を反らし歯で舌を噛む。
「……なるほどね。二人とも僕を守って」
そう言いきった時、少年の首に一本の傷が付く。だが浅かったせいか血は出てこない。
「グルゥゥゥ……」
「バーサークモードかな。……それにしては攻撃が単調ではない。それに僕だけを狙う攻撃……意識があるというべき、かな?」
ドットからの返事はない。
その代わりに来たものは飛んでくる爪による斬撃のみである。そして少年は確信した。
「肯定、だね。確かにこれは操れそうもないなぁ」
やれやれと言いたげに頭を振る少年。
ドットはそれをチャンスだと思いその鋭い爪を突き出した。だが届かない。間に入ったジムの眼前まで爪が迫りドットの意識によって止められる。
そこをジムの攻撃が迫り仕方ないとばかりにドットは左手でガードする。そのまま衝撃を消すことが出来ずドットは飛ばされ壁にぶち当たった。
ジムもチャンスを逃すわけがなく地を蹴り間を詰める。そして数個の火球がぶち当たりドットの腹に殴打が決まった。
次話でドット回が終わると思います。その後は洋平の視点で、シルクやロイ、ユラの視点もそのうち出します。洋平の話が終わってから出すか、途中で繋がる場面を書いて視点を変えるか、うーん悩みます(笑)
休みがまた取れなくなるので2週間以内には投稿できるようにします。書ければ一週間以内には出せるように……。
後、能力が分かりづらいと思うのでスキル含めてで実力差を書いておくと、
ネムル>>>洋平>シルク=ロイ>ユラ>ドットです。ドットより下がジム>リックで、星の使いの他のメンバーなどはまだ未定です。
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