1ー2ー9 お兄さん頑張っちゃう
少し短いかもしれません。
後、本日連投です。一時くらいに投稿予定なのでよろしくお願いします。
「よく眠れましたよ。どうやらレベルアップで回復速度も上がったようですし。もう完全回復です」
「あらあら、私は歳なのか回復速度が落ちていってるわ。何かいい手はないかしらね」
わざとらしく下を向いて悩むリーナさん。だが俺は引っかかったりなんかしない。
「綺麗なので引く手あまただと思いますよ。選り好みしなければ虜に出来るはずです」
「そういうことにしておくわ」
どうやら正解だったようだ。
リーシャの時のように失敗しないで良かった。多分、何かのスキンシップ代わりのはずだ。
シチューやパンなどを食べユラのニヤニヤした顔と、リコのあーんしてというわがままに耐えながらだったので味はよく覚えていない。食事も終え部屋に戻ろうと席を立った時だった。
「お兄さん、見て見てなのです」
「ん? くまのぬいぐるみかな?」
リコが俺に見せてきたのは少し継ぎ接ぎの多いくまのぬいぐるみだった。リーナさんは片付けをしてユラは外で食後の素振りをしているらしい。
まだ構ってほしい様子のリコを見て席に座り直す。くまのぬいぐるみを手渡してきたので手に取り鑑定眼で見てみると、製作者はリーナとなっていた。お手製のものなのだろう。それにしては完成度が高いと思うが。
「作ったのはリーナさんかな。よく出来ているね」
「お兄さんはお目が高いのです。このお人形はママ……お母さんの作ってくれた最高傑作なのです」
呼び方はまだ幼さが残るんだな。
うん、控えめに言って可愛い。
「可愛いな……」
「そうなのです! くまさんは正義なのです!」
つい口から出た言葉だったが変に勘違いしてくれてありがたい。それにしても天使というのは存在するんだな。
実際、本とかで簡単に天使とか言う奴を小馬鹿にしていたが根本的に考えを変えなくてはいけないようだ。守りたい、この笑顔。
「気に入ったならお兄さんに貸すですよ? お兄さんなら返してくれるのを理解してますから」
「……なら頼む」
少しだけ食後に運動でもするか。
この笑顔を守るために自衛手段の一つとして人形に細工をしよう。ふふふ、こんなに綺麗な二人をいいように扱おうとするヤツらには痛い目にあってもらわないとな。
「明日の朝には返す。ちょっとだけ、な?」
「分かったです! ママの良さを知ってくれて嬉しいのです!」
ついに言い直すこともしなくなった。
ママ呼びか、まだ小さいから仕方ないよな。
「うにゃっ」
「はぁ、癒しだな……」
抱きしめてしまったが仕方ないはずだ。
うん、俺はお兄ちゃん。誠也兄も俺のことをよく抱きしめていたし問題がない。
「……心地いいのです」
『こう見えて十何歳なんですけどね』
『主はハーフエルフなどについては知識がなさそうだからな。仕方ない』
外野がうるさいな。可愛ければいいんだよ。
そうしてくまのぬいぐるみを片手に俺は部屋に戻った。部屋に着いてまず、ユラから貰ったいくつかの金属などを取り出す。
徹夜だ、ユラもリコも大切な存在だからな。戦力強化、守って見せよう我が力を持って。
最初はアダマンゴーレムから手に入るアダマンタイトを数個取り出す。アイロンくらいのアダマンタイトが二十個くらいなので何体か倒したのだろう。
炎の剣の持ち手部分にジェネラルの皮を付ける。これは錬金でなんとかなるが、やっぱり裁縫関係のスキルも得たほうがよさそうだ。誰かから模倣すればいいからいいだろう。
そして刃を一度溶かし結界の上に落とす。結界の大きさは壁掛け時計くらいの大きさで落ちないように縁に弁のようなものをつけている。銅の融点が1083度、鉄が1539度。結界はこの温度には耐えられるのか。
アダマンタイトはその熱さでは溶けない。理科で習うこともないから大まかな温度しか分からないが、5000度ほど。マグマで6000度ほどだから完全に溶けないわけではなさそうだ。
一番ファンタジーだな、と思ったのは錬金術を使いながらでなければ溶けることがないことだ。わざと錬金術を切って火魔法でとかそうと奮闘したが無意味だった。もちろん、錬金術を使って行えば溶ける。これが戦闘中に剣が溶けることがない理由になるんだろうな。普通は錬金術を持っている強者はいないだろうし、慣れていたとしても戦いながら剣を溶かすなんて難易度が高すぎる。ただこれで龍とかのブレスでも耐えれそうなことは理解した。
『少しだけ付け加えるのならば、温度が融点の五倍を超えると大概は溶けていきますね。ただし製作者の能力が高ければ温度のプラスマイナスはあるようですけど』
『なるほど、ためになった。ありがとう』
ならば目安としては2万5000度ほどなければ合金の剣は溶けなさそうだ。一応、この世界において合金を行えば両者の利点だけを持った金属になる。溶けづらくて固い、それでいて鉄の剣ほどの軽さを持つ魔剣に早変わりだ。作る人の腕がなければ、まず合金すら出来ないだろうけど。
そして、
通常属性は、火・風・土・水・光・闇・無。
上級属性は、炎・雷・木・氷・聖・呪。
合致しないものは、空間・精霊。
といった魔法属性の中で炎と聖の属性を持つ魔物の核、つまりは魔石をそれぞれ取り出す。聖はさすがにランクが低いものしかなかったため数個使用してようやく形になった。狩りでより良い魔石を集めるのも手かな。
その魔石を砕いて溶けた合金のマグマの中へと落とす。軽い爆発、だが結界で即座に覆ったので何も問題は無い。怖くなったので窓は開けておく。
鑑定眼を使用して見てみたが成功だ。【聖なる炎の合金(鉄、銅、アダマンタイト)】となっている。価値は……これだけで大金貨がつくのか。
それを錬金術で剣の形にして一気に水を落とす。錬金術の効果で叩き直したりはしなくていい。元から叩いて完成した状態にしてくれるからな。
ただこれは熟練度が高いから出来ることらしくて自重を覚えるべきだとも思う。国のお抱え魔剣製作者よりレベルが高いようだ。
そしてユラの新しい相棒、聖炎の魔剣(S+ランク)が完成した。ランクというものが書かれていたが魔剣術などで作られた武器以外はこれが付くみたいで、後々人形を見てみると精巧なくまさん人形(Cランク)となっていた。ちなみにF〜SSSランクでAから+が付く十三段階のようだ。
完成してすぐに倉庫の中にしまう。まだユラが修練の最中だったので見られていないはずだ。明日、手渡そう。
次いでくまのぬいぐるみだ。元々ランクが高いから壊れないように、それでいて防御性能も攻撃性能も高めないと。お兄さん頑張っちゃうよ。
まずは爪を取り替える。俺の来ているローブを糸に戻しアダマンタイトと合成する。失敗するかと思ったが問題ないようだ。ただ魔力を多く使用したので倒れそうだが。
それでもまだだ。限界突破を発動して淡い光を纏う。これで魔力面での心配は薄くなるはず。
黒の糸の繊維の中に金属が入っているために糸を自由に操作出来る。だからとても細くしてくまのぬいぐるみの中に入れ込んだ。これで斬撃と打撃などの物理面、魔法面での硬さは万全だ。なんて言ったってふんだんにネクロマンサーの糸を使ったんだからな。
爪にはもちろん、アダマンタイト。そして十本の爪にそれぞれの属性を混ぜた。二本だけ俺自身が火の魔石と水の魔石に魔力を流して、それぞれ炎と氷の魔石にする。これで右手が親指から火、風、炎、光、火で、同様に左手が水、土、氷、闇、水だ。ちなみに共有能力を持たせたので片手に付与されている属性は全てその手のみで使えるようになっている。右手ならば火、風、炎、光を、左手ならば水、土、氷、闇を全ての爪に付与させられるのだ。
そして所有者を固定してリコにしておく。俺の名前も付けておき危険になればリコを守るように設定しておいた。さて、どれだけの数がこの人形にダメージを与えられるかな。
少しやりすぎた感が否めないが価値はSS+と爆上がりだ。鑑定眼の説明には【神から送られた最高傑作】と書かれるほど。つまりは俺は髪なのである。
冗談はさておき疲れた。明日の朝は早いのだからもう寝てしまおう。シャノンに起こしてもらうことを頼んで俺は瞳を閉じた。
◇◇◇
夜更け前に俺は目覚めた。
アレだ、遠足前の子供のようにドキドキしているからだろう。普通に二人がどんな反応をするのか楽しみだ。
『リコはともかくとして、ユラはどうなるのか気になりますね』
リコは価値が分かるかどうかだもんな。ただずっと持っていて貰うように頼むよ。そうじゃないと守ってあげられない。
「……主、か? どうした、こんなに早く」
「ああ、起こしちゃったか。別に寝てても構わないぞ。用事があって起きただけだから」
嘘だけどな。どちらにせよ早すぎるから修練を積むのも悪くない。素振りとかをやるのも手だしな。
「そう、か。ならもう少しだけ惰眠を貪ろ……うぅ……」
ユラが再度寝てしまったのを確認してから階段を降りる。朝四時、前の俺なら二度寝をしていたな。どこかのユラのように。
それにしても暗いな。別に夜目が効くから構わないんだけど。さすがにリーナさんも寝ているようだ。外へ出るために受付の方へ向かう。
うん? これは……鍵と紙か。
羊皮紙に書かれた女性らしい美しい字。多分リーナさんの字だな。中身は……最愛なるリックへ?
俺は無意識にその紙を手に取り読んでいた。
小説のような、手紙のような不思議な内容。日記という表現が一番正しいかもしれない。
最初は二人の出会いからだった。
ユラのヒロインっぽさがありますが紳士的な老人ですからね。
次回はリーナの手記?ですね。日記のような形にするのでリーナ視点です。次回から少しずつ重要なところが多いかもしれません。
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