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1ー2ー3 未亡人という響き

書けたので投稿します。

 ミラの購入と買い物を終えた俺は宿を探していた。市は広かったがシャノンが最短で安く済むルートを教えてくれたのでそこまで時間はかからず、必要なものも全てシャノンが教えてくれた。使い勝手のいいスキルである。


 宿もシャノンが探してくれた。いわく少しだけ訳ありのようだが、俺たちならば関係がないらしい。


「古い、な」


 そこは民家に近い外見であった。三階建てだがこの世界において三階建ての民家はある程度ある。となればそこが訳ありか?


『違います。入ってみれば分かりますよ』


 そう言われたので渋々中に入り辺りを見渡した。誰もいない、いや、人の気配がするのでいないわけではないのだろう。


「すいませーん。誰かいませんか?」


 あまり大きい声じゃないというのによく響く。見た目の割には床が軋むとかではないな。


 そんな中、バタバタと奥から少女が現れる。俺を一瞥したかと思うと奥に戻り何か話しているようだ。そして一人の女性が姿を現した。


「あらあら、なんの御用ですか?」

「……ここが宿と聞いたのですけど……泊まれます?」


 うん、綺麗だ。耳を見ると細長いので多分エルフだろう。少しだけ頬が緩んでしまう。


「……おかしな方ですね。旅人ですか?」

「そうですよ。まだ成り立ての冒険者でランクは低いですけど」


 女性の目が細くなる。明らかに光ったな。


『今のは魔力の動きですね。ステータスを見ようとしたようです』

『それしかないよな。……にしてもエルフって高慢だと聞いたけど、この人には当てはまらないな』


「鑑定眼を弾くだけの力があるのにランクが低いのですね」


 シャノンに質問した時に女性から言葉が漏れる。


「まあ、そうですね。なりたて、ですので」


 この人は俺のステータスの高さを知っているな。エルフ特有の直感みたいなものか。


『当たりです。彼女は極めて妖精達に愛されているようです。その分、嘘や力を見極める力は高いみたいです。ステータスも三百近いですし』


 三百というのは低いように見えるが、宿屋の店主としては異常なくらいに高い。元冒険者とかの可能性もあるかな。


「……ここに泊まろうとした理由はなんですか?」

「ここをお勧めされたので。今朝方ここに来たばかりでこの街のことをあまり知らないんですよね」


 また目を細めたが女性は明らかに笑った。


「……嘘はなし。いいですよ。一人部屋ですか?」

「いえ、これから仲間がきます。ただ俺の配下なので気にしなくていいと思いますよ」


 女性は「二人部屋にしとくわ」と言いながら羊皮紙に帳簿をつけていた。その他にも「何日宿泊か」や「どこら辺がいいとかある」と聞かれたが卒なく返しておく。ユラの好みは知らないから適当でいいだろう。


「成り立てと聞いたから安くしておくわ。一日二食付きなら一日で大銅貨二枚ね。一部屋を借りる予定だから二人で大銅貨二枚でいいわ」

「……安いですね」


 破格の値段だ。アスの街の宿の平均は銀貨一枚からだ。それも一人で銀貨一枚だからその安さが伺える。その割にはお客の気配がしないけど。


「……気づきましたか? 少しだけ意地悪を受けてまして。それでお客が違う方に流れているんですよね」


 女性は悲しそうにそう言った。


 俺のステータスを見たのも俺が自衛できるだけの力があるか確認するためだったのか。これがこの宿の訳あり、ね。


「それなら尚更、はい」


 俺は金貨一枚を取り出して渡した。

 金欠になりかけているけどユラの稼ぎが入ってくるだろうし、まだ大金貨一枚は残っているから大丈夫だ。

 惚けている女性に見えるように奥を指さす。


「娘さんなんですよね。それなら取れるときに取らないとダメですよ。それに高く払った分だけ美味しいご飯をよろしくお願いしますね」

「はっ、はい。……よろ……しくお願いします」


 頬を赤くしているけど、どうかしたのだろうか。俺のことを好きになった、はないな。多分俺の金遣いの荒さに呆れているのかもしれない。もしくはお金持ちと勘違いされたか。


「一応三ヶ月程の契約としておきますね。何かあればお呼びください」

「わかりました。そういえばあなたと娘さんのお名前は?」

「……私がリーナで娘がリコと言います」


 宿を営むだけあって礼はきちんと九十度だ。俺はただ笑って「俺は洋平です」と言って部屋の鍵を渡してもらった。


 俺が渡されたのは二階の最奥である。シャノンに辺りを調べてもらったが、やはり人の気配はない。泊まっているのは俺たちだけか。


 部屋の扉を開けて中に入ると、まず俺は驚いた。元の世界のものがそこにはあったのだ。例えば靴を脱ぐ場や畳、そしてペットではなく布団だ。


 布団は室内約六メートルぐらいの正方形の部屋の奥に丸まって置かれている。広げてみたがかび臭いなどの問題点もなく、横になっても元の世界のものを思い出させてくれるほど心地よい。


 俺がこの世界で体験したことがあるのは固く寝るのすら困難なベットと、石で敷き詰められたダンジョンの床だけだ。こんなに心地よくなるのも当たり前といえば当たり前か。


 少しだけ横になりシャノンから周囲を伺ってもらった。とりあえず妨害されることを考慮しておいて二人の考察をする。シャノンは二人の過去を知っているようだけど聞く気もない。聞くなら本人が心を許してくれたらだし、それ以外で聞くのは気が引ける。


「……一番考えられるのは貴族が関わっていることかなぁ」


 テンプレートからいえば傲慢貴族がリーナさんを見初めて、って所だけど案外当たりかもしれないな。娘がいる時点で未亡人、つまりは父親がどこかに消えているわけだし。


 関わりたくないな。でもシャノンは俺たちならば関係がないと言っていた。それはステータスの面からか、もしくは……。


『シャノンって未来とかを考えることがあるか?』


 ふと思いついた質問。

 なんとなく今聞かなくてはいけない気がした。


『私はスキルですよ? スキルが未来を気にしていたらマスターを助けられません。私は生まれた時からマスターから不必要とされるまでマスターのために生きていくのです』


 小っ恥ずかしいプロポーズである。


 分かったから俺の目の前で小さなシャノンを出して鼻に抱きついてくるな。実体がないはずなのにくしゃみが出そうになる。人差し指で頭を撫でるように空を撫でる。前言撤回、シャノンの実体は出したり消したり出来るようだ。


『まあ、それ以上にやらなきゃいけないことも多いしな。リーナとリコ親子に関しては後回しにせざるを得ないか』

『でも助けないという選択肢はないのですね』


 助けない、か。

 別に絶対的な正義のヒーローを目指しているわけじゃないけどさ。あんな幼い子が酷い目に遭うのは見たくないんだよな。いや、関わりたくはないよ。本当に。


 なによりリーナさん綺麗だし強いし。ぜひともパーティーメンバーに欲しい。


『最後のが本音ですね。それでもいいのではないですか。気まぐれでも何かを助けることでプラスになることもあるでしょう。多分、ユラもあなたが助けを求めれば助けに来ますよ』


 全てを分かるはずのシャノンでさえ、多分という言葉を使うのか。そんなことを思いながらネットワークというべきか、俺とシャノンとユラの通話のような所にここの住所を教えておく。なんとも言えない。例えるなら留守電のような感じだろうか。


 俺とシャノン、俺とユラは魔力で繋がっている。それは二人の実体が俺の魔力で出来ているからだ。そのために相手の脳内にメールや留守電のようなメッセージを残せる、と言えば分かりやすいか。


 やることもやったし他のことをしよう。働くのは明日からだからそれ以外のことでだ。


 思いたったら即行動、俺は下の階に行き宿を見て回った。本当に俺しかいないのだが内装はとてもレトロでいい感じだ。室内も広い部屋が多いし悪くない。


「何、やってるですか?」

「ん? ああ、リコちゃんか」


 後ろから声が聞こえたので振り返ると柱に隠れたリコがいた。俺が怖いのか、本当に極度の人見知りのようだ。いや、人見知りが話しかけるのだろうか。


「お兄、さん?」

「あっ、いいね、それ」


 お兄さん、なんといい響きだ。


『根っからのブラコンのようですね。それともロリコ』

『それ以上は言うな。別にリコと結婚したいとは思わない』


 シャノンは時々酷いことを言うな。俺はその、ロリ……ではない、断じて。少しだけ訝しげな目をしてきたリコの目を見つめる。


「悪い人じゃないですね。リコは嬉しいです」

「悪い人じゃないのか。分かんないぞ、もしかしたら人を殺してるかもよ?」


 リコはそれを聞いてクスクスと笑った。


「リコは知っています。意味ある殺人と意味のない殺人があることに。復讐はなにも生まないと言いますがそうではないことに」


 少しだけ言葉足らずだがリコが言いたいことは分かる。つまりは自分のされた仕打ちに対して犯す犯罪は一概にダメというわけではないということだ。


「よく分かってるな。リコは本当に頭がいい」

「当たり前です!」


 リコは胸を突き出しドヤ顔を俺にかましてきた。フッフッフッ、柱から出てきたな。


「ニャッ!」

「好きありだよ。簡単に体を出すなんてリコはまだまだだね」

「ふにゃっ、リコは、リコはまだ負けてないです!」


 よく言うよ。気持ちよさそうに目を細めているくせに。だんだんと体を俺に近づけてきているじゃないか。


『おまわりさーん、こちらです。ここに変態がいまーす!』

『ごめんってシャノン!』


 俺は一生シャノンにいじられ続けるのかもしれない。そんな恐怖を抱きながらユラが来るのを待った。特に冒険者ギルドでは何もなく宿でもその日は何も起こらなかった。それが嵐の前の静けさのように感じて少しだけ怖い。そんな気持ちとは裏腹に疲れからか、俺は布団に入ってすぐに寝付いてしまった。

イヤホンでも書いた通り少しだけ不死鳥を書いたり考えたりする時間を増やそうと思います。来週から忙しくなるので予定の日に合わせて出せるようにしますが、もし駄目でしたらすいません。


次回は依頼、宿のことも少し絡んでくるかも?


そして洋平はロリコ○なのか。リコという名前はロリコ○から付けられたのか。乞うご期待(嘘です)


ブックマークや評価よろしくお願いします。


次回投稿予定日は8月28日です。

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