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1ー2ー2 足場固め1

約六千文字! ……調子に乗りました……。

『閉まっているな』

『当たり前ですね。この時間はまだ経営時間外ですし』


 シャノンの言葉に確かにと思ってしまう。


 どうも元の世界のコンビニのような感覚だと思ってしまっていたな。というかシャノンに反対されなかったから入れると思っていた。


『入れますよ? 中に人がいますし。理由を話せば発行してもらえるでしょう。反対しなかったのは強いことを露呈させたくないマスターなら、今の内に登録をしておけば誰にもバレずに冒険者になれるのではと思ったので』

『そういうことにしておくよ』


 早口で少しだけ怪しいが、まあ良しとしよう。周囲の確認をしてからユラを召喚する。


「デカイな」

「……元の背丈くらいです。主より大きいのは少しだけ誇らしいですね」


 今から他人と会うためかユラの話し方はいつもと違う。それがとてもくすぐったく感じてしまった。


「武器は……後でいいか。素手で戦って力を見せるのも手だし」

「出来る限り話し合いで対処したいと思います。ただし言っても聞かないのであれば実力行使に移らせていただきますが」


 並大抵の相手じゃユラは倒せないからな。


 Bランクなんて世界でも数少ないし、それに近いステータスを誇る人も少ない。壁というものがあってレベルが五十に近くなればなるほど上がりづらくなる。いわば壁を破壊した立場になるんだろうな、俺とユラは。


「主の敵は私の敵ですからご安心を」

「ああ、頼りにしている。悪いけどAランクより上になるつもりはないから、それ以上の高みにはユラがなって、俺たちはその傘に守られながら生きていくよ」

「どちらにせよ、私よりも主が強いことは確かなのですけどね」


 笑ってみせるユラ。


 まあ面倒ごとはユラに任せる、ただし貴族になるとかって話になったら俺の騎士ということで無効にさせてもらう。そういう算段だ。


「貴族は嫌だろ?」

「面倒ですから」

『私は貴族の騎士としてカッコいいと思いますけどね。マスターが嫌なら仕方がありません』


 話すこともなくなったので冒険者ギルドの門戸を叩く。二回叩くのはトイレの時だ、とか言っていた教師の言葉を思い出し三回叩いておく。


「……どちらさま、ですか?」


 出てきたのはレストランのウェイトレスが来ているようなエプロンを纏った少女だった。元の世界ならアイドルとして活動出来ていただろう。目は赤く髪は茶色、肌の白さと相まって少しだけ色気を感じさせる。


 少女はポニーテールの髪をポフンと揺らして俺の顔を見つめてくる。身長が頭一つ分違うのでどうしても少女の大きな胸の谷間が見えてドギマギしてしまった。


 俺にはサーシャがいるんだ、と思うとシャノンに怒られるし割と散々な結果となっている。


「……大丈夫、ですか?」

「あっ、ああ。すまないね。実はついさっきここに来たのだけど身分証明が出来るものがなくてね。冒険者登録を早急にしたかったんだ」

「私もその方にさっき出会って護衛として仲間になってくれないか、と頼まれたのです。行動しやすいように冒険者になっておくのも手だと思い、共に来た次第です」


 デュラハン特有の甲冑を外しているため、ユラは老人の顔を外に露見させている。厳つい難しそうな男の顔だ。


 少女が訝しげな目をするのも当然だろう。


「……いいですよ。身元は分からなくても入れるのが冒険者ギルドのモットーですから。ただし悪事は働かないでくださいね」

「すまない。あまり表立って行動するのを見られたくないんだ。新人いびりで嫌な目にもあったからね」


 嘘だが極力テンプレには巻き込まれないようにしたい。相手が向かってくるなら返り討ちにはするけど。ただ単に時間の無駄は嫌だ。


「分かりました。付いてきてください」


 少女の後ろを俺、そしてユラが付いてくる。

 身長が小さい割には胸が大きい。小さいのも好みだがEはあるか。


『マスター、いい加減にしてください』

『ごめんごめん』


「この紙に必要事項を書いてください。名前と使える魔法や技術を書いてくれればいいです。細かく書かなくてもいいですから簡単に書いてください」


 俺はハッとして紙を受け取る。


 羊皮紙というのか、小説や世界史ではよく聞くけど実物は初めてだ。横に引っ張ったら破けそうだな。


 インクも質が悪い。書道で使っていた墨の方がまだ高品質だ。


「これでいいですか?」

「えっと、ヨーヘイ様で剣術が得意、魔法は火と水ですね」


 空間とかいう珍しくて他人から疎まれそうな魔法は書かない。簡単でいいならこれくらいでいいだろう。キチンと隠蔽もかけているから俺と近いステータスで鑑定眼のレベルも高くなければ見ることは出来ないしな。


「私はこれで」

「ユラ様、剣術と闇魔法ですね。了解しました」


 手慣れているのかパソコンのようなものに打ち込み二つのカードを取り出す。銅色の俺たちの名前が入ったカードだ。


 だが俺は少女の目が一瞬だけ泳いだのを見た。多分、闇魔法の事だろうな。人が使うのは珍しいし剣術と一緒に持つ者は少ないし。


「冒険者の説明は必要ですか?」

「特にはいらない。ランクがF〜SSSでD以上から試験がある、でしたっけ。後は当人の問題は当人の責任、ギルド外の依頼を受けた場合ギルドは助け舟を出さない。Cからは指名依頼が任されることがある、くらいですか」


 少女は口を手で隠して「その通りです」と笑った。


「冒険者の方は粗野な人が多いのでヨーヘイ様のようなお人は久しぶりです」

「ヨーヘイでいいよ。ユラは……」

「ユラさんでお願いする。主とは違って年が離れているかのでな」


 少女は「主?」とはてなマークを頭の上に出していたが、俺が「ユラは騎士を目指していてそれで騎士の真似事のように俺を主と呼んだんだと思うよ」と言うとどこか納得したようだ。


『騎士の真似事は酷いのではないか?』

『悪い、でもこれくらいしか言い訳が見つからなかった』


 ユラも本気で怒っている訳ではないようですぐに矛を収めてくれた。


「私はリーシャといいます。これからよろしくお願いします、ね?」

「お願いします」

「お願いする」


 三人の握手が終わりユラは早速依頼を取りに行ったようだ。俺はこの街でやらなくてはいけないことがあるし別行動だな。


 ユラにそれを伝えると『構わない』と返ってきた。俺がやることも伝えたしユラにいくつかの頼み事もした、金貨一枚を渡しておいたので武器に関してはある程度の物を買えるはずだ。


 そして俺がやらなければいけないことだが、拠点作りだ。二人部屋を取っておいて生活用品を買っておく。一応、人としての感情があるためか清潔感などもユラは大切にしているので服も必要だな。デュラハンだからといって実体がないわけではないので服なども着れる。サイズは聞いたから多分大丈夫のはずだ。


 お金はユラから徴収っと。まあ、素材を売ればお金は手に入るし後回しでもいい。なんなら錬金術で稼ぐのも手だし。


 ちなみにだが冒険者ギルドと錬金術師ギルドの両立は不可能だ。実際は仲がいいが過去のいざこざで簡単には許可出来ないらしい。商人と冒険者、薬師と冒険者は大丈夫だな。商人になる予定だから、奴隷を買ったら錬金術師ギルドに入ってもらおう。奴隷を買うのを一人で済ませる気もないし。


 そう考えれば楽しくなってくるな。


 まずは宿屋の確保だ。そう思い俺は転々とアスの街を回り始めた。俺が外に出た頃にはもう街灯は消え人もチラホラと歩き始めている。


「もう夜明けか」


 思えばこれまでずっと走り続けきたんだよな。眠りたいとか横になりたいとか思うのは至極当然のはず。

 宿を取って寝たい。だから宿を取るのは最後にしよう。午前中に買い物を済ませれば午後は寝れるじゃないか。


『街の中心で市が開かれるようですね。そこで日用品を買ってもいいのではないでしょうか』

『市ってことは回らなくて済みそうだな。……そうするか』


 時間の削減はとてもいいことだ。ユラは走っていないから何ともないだろうが、俺は体というよりも心が痛い。何となく前の体の時の常識が残っていて、その体の時には絶対に出来ないことを今、しているからだろう。


 市はとても広かった。それが一番に感じた感想である。なんだろう、スーパーに行ったと思ったら実はデパートでしたって並に広い。


「牛串だよ。一本銅貨三枚、いらんかね」

「ミドルワームの姿焼き、一匹銅貨十枚だよ」


 至る所で露天が開かれており俺の食指が動くものとそう出ないものがあるが、牛串なんかは普通に食べたいと思った。そういえば昨日から何も食べていない。


『私も食べたいです。……早く実体を……』

『今度な。出来る限り早めに召喚出来るようにするから』


 腹ごしらえのためにパンとシチューのセット、そして牛串を六本買ってみた。盛況ぶりも考慮に入れて買ったので失敗はないはず。


 露天の近くには大概ベンチなどの腰掛ける場所があったため座る。はぁ、座るのなんて何時間ぶりかねえ。


 パンを小さくちぎって口の中に放り込む。少しだけ硬いが、噛みきれないほど硬いとかそういうのはないようだ。シチューを汁物代わりに喉がつまらない程度に流し込んでいく。


 不意に視線を感じてチラリと横を見た。知らない女の子が座っておりこちらをジーッと見てくる。いや、語弊がある言い方だ。俺の手に持つ牛串に目がいっているようだ。


 俺が食べようとする度によだれを垂らしそうなくらいに口を大きく開く。よく見ればその後の頭には輝かしいものが付いていた。


 そう、ケモ耳である。


 動物はいいぞ。人とは違って懐いてくれれば主や友達と認めた者を虐めない。言葉が通じないからかもしれないがそのモフモフに何度癒されたか。


「……食いたいのか?」


 ケモ耳少女は頭をコクリと縦に振り目を閉じて口を開いた。


『この子は奴隷のようですね。栄養状態もしっかりしているようです。ただし商品か他人のものである彼女にご飯を与えることは法律上……』

『禁止されてるんだろ。でも俺の国にはこんな言葉がある。可愛いは正義、バレなければ犯罪じゃない』


 口元に運びあむあむと美味しそうに食べている。食べさせ方が悪かったのか口元にタレが付いていたがそれに気づき下でタレを舐めとっていた。


「上手いか?」


 また縦に頭を振る。それなら良かった。


 主は来ていないようだからもう少しだけご飯をあげてみるか。頭を撫でてみたが目を細めるだけで嫌な顔をしない。了承してくれているのだろう。


『この感じからして商品なのでしょうね。私も食べさせてあげたいです』

『本当に癒されるな』


 こんな子が元の世界に入れば……大騒ぎだったな。はあ、俺の癒しはどこまでいっても異世界でしか得られないものだったのか。


「……ありがと」

「おう、それでお前、主はどうしたんだ?」


 首を傾げてから「どっかに消えた」とあっけらかんとした感じで言う。何となく嫌な予感がするな。


「ここにいたのですか。なぜはぐれたのですか?」

「いいお兄さんを……見つけた」


 初めて少女の笑顔を見た気がする。

 この笑顔プライスレス。


「……なるほど、こんにちは。奴隷に興味があるのですか?」

「ありますけど、今回は付きまとわれた感じですね」

『嘘ばっかり』


 こういう時には真実とも嘘とも取れる言葉が一番強いんだよ。買う時とかに躾不足とかで安く変えるかもしれないし。あーでもその人の価値を安くした感じであまり心情的に良くない。


「こちらの不手際で」

「途中から楽しんでいた俺も悪かったのですけどね」


 よく見ると少女の顔が満面の笑みに変わっていた。付きまとわれたと言われて悲しかったのかもしれない。これでフォローになったかな。


「……ご購入なされますか?」

「今は手持ち無沙汰なんです。だから彼女を残しておいてくれれば買いますよ。そうですね、一月くらいかかると思います」

「それなら是非ともお願いしたいです。主と認めないと買われたくないと言われれば極力その条件に沿った人にしたいので、買うと決まっているのなら是非ともこの子を買ってもらいたいです」


 そんなものか、と思ったがシャノンいわく奴隷に関する法律、奴隷平等法にもそんなことは書かれていないらしい。この商人の考え方ややり方なんだろうな。


「殊勝ですね。……嫌いじゃないですよ」

「奴隷は物ではなく人ですからね。ただ壊されると分かっているだけなら、こちらだって売りません。調べてその人に売ってもいいと思えるかどうか、そしてお客様は少女からその権利を得た形です」


 そうか……気が変わったな。少しだけ待ってもらおうか。


 せめて拠点を築いてからだ。お金を作ってからこの街を出る前に手に入れればいい。だけどこの子を手に入れられることを確定させておかなくてはいけないな。


「ちょっとだけ待っていてくれるか?」


 鑑定眼で見ると奴隷の価値も値段として出るようだ。二億円ほど、金貨二枚の価値らしい。


「値段は金貨一枚と大銀貨五枚でいいです」


 商人から言われたのはそんな言葉だった。

 なんと言えばいいか、人がいいのだろうか。


「……その顔は相場を知っているようですね。ですけどこの子の行きたい場所に行ける機会を失わせるわけにはいかないので、この値段で買ってもらいたいのです」


 商人いわく「自分のモットーに従っている」ということなのだろう。とてもいいと思う。


 俺は何も言わずに素材を三つ取り出した。なんてことないブラッドウルフの皮と肉である。


「これで足りるか?」


 Bランクとはいえブラッドウルフの価値は高い。皮は装備品に加工すれば軽いのに硬い鎧や靴にもなるし、肉は極上品として高く売れる。価値なんて金貨三枚くらいは有るんじゃないかな。


 手持ち無沙汰なんだ、とは言ったがそれに見合うだけの代わりのものがないとは言っていない。見た感じやサーシャの話からこの人は信用に足るだろうし、俺が渡した素材を定価なんかよりも高く売れるだろう。この街でブラッドウルフなんて倒せる者は数少ないだろうし。


「人に価値を付けるのは嫌ですけどその少女にはこれくらいの値段が釣り合います」

「……ありがとうございます。お引き取りの時にはいつでもアルフ商会をよろしくお願いします。中心にございますので近づけばわかると思います」


 九十度の礼とともに商人は小さな皮の小袋にブラッドウルフの素材を入れていた。アルに渡されたお金の入った袋の収容量の大きい道具だろう。そして商人は俺に言う。


「お客様のお名前はなんと言いますか?」

「洋平です。あなたと少女の名前は?」

「私はアルフと言います。そして彼女はミラと言います。よろしくお願いしますね?」

「……これからよろしく」


 そう言って二人は混み始めた街中に消えていった。小さかったミラの足音だけは遠くに行っても耳から消えてしまうことはなかった。

終わりが少しだけ不穏ですね。……特にフラグではないです。


商人、アルフと知り合いになりミラを買いましたけど、次の出演はいつでしょうね。早く出せるようにしたいですけどお金が……。タグ金欠が生きてきました(笑)。


ブックマークや評価よろしくお願いします。


次回更新予定日は8月26日です。

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