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不死鳥の召喚士  作者: 張田ハリル@スロースタート
序章 力を求めて
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(真夏の?)夜の悪夢

「また脱線している、話を戻すぞ。それでアルがここに来た本当の理由は何?」

「それはね、前も言ったことだけどダンジョン探索の事だ。いきなり、なんの前触れもなくダンジョン探索がすぐ間近にしろって言うことが。君たちには言っていなかったが何回も勇者召喚は行われているんだ。そしてこんなことは一回も起こっていない」

 シズのうーん、という声が響く。俺はただ頬杖をついてそれを聞いていた。

 そんなものかな、と思うがこれはいい機会だ。

「あのロイドという男は元からいたんですか」

「……ロイドが来たのは三年前だ。王族に取り入っていつの間にか第一王女との婚約をこぎつけていた。王の次に偉い男となっているな。まさか彼が……」

「いや、そうと決まったわけではないけど。でも可能性はあるんじゃないですか。だって、俺たちはまだ王を見たわけでも名前を聞いたわけでもない」

 それを前提に調べてみる、と言って切羽詰まった表情で部屋を出て行くアル。手を振って見送り、後の二人に視線を向ける。

「それでシズはなんで付いてきたの」

「いやついてこいって言ったから」

 俺は頭を抱えた。異性についてこいって言われたら付いていくのかよ。

「その目は何? 別に誰にでもついていくわけじゃないもん」

 そうですか、とシズから視線を離す。サーシャの方を向き一つ思い出した。

「サーシャはそのネックレス付けてから他の人からのやっかみはないか?」

「そうですね、あっても何もしてきません。王に告げ口しても殺せないということに気付いたようですし。後は勇者から夜のお誘いが多くなりましたね」

「それでそれをしてきた勇者の名前は?」

 何人かの男子生徒の名前が挙がった。なるほど、よろしい戦争だ。

「後で滅ぼしておくね」

「大丈夫です。もうそんなことも出来ないようにさせましたから」

 足をブンブンと振りながらニッコリと微笑むサーシャ。まあステータスはどっかのバカ勇者より高いからな。

「私もヨーヘイに一つだけ聞きたいことがあるんだけど」

 なに、とシズに返答を促す。

「ヨーヘイはダンジョンで死ぬ気はないよね。……絶対に死なないよね」

「いきなりどうした?」

「昨日見た夢なんだけど、ヨーヘイがダンジョンで強い敵が現れて一緒にどこかへ消えるの」

 ははは、と笑って誤魔化す。なんてフラグの立て方だ。俺はこの歳で死ぬ気はない。

「アルさんはキメラだって夢の中で言ってたんだ。アルさんとヨーヘイが残ってみんなでターミナルっていうもので逃げなければいけなかった……」

「キメラ……か」

 キメラといえば人工的なもののイメージが強い。シズはオタク系の知識は一切ないからな。知らなくて当然か。そしてキメラは、

「本当に行ったほうがいいのか……?」

 強いのが定番。それこそ中ボスなどで出てくるレベルだ。それを少し戦闘能力に毛が生えた程度の平和な世界にいた男子が戦って勝てるのか。

 もしそれが正夢になるなら俺は、俺たちはダンジョンの穴を利用したことになる。

 もしその穴から本当のイズのダンジョンに行けるのなら俺のレベルじゃ絶対に死ぬ。

「やっぱり行かない方が」

「いや行く、すまんサーシャ。なんかあったらシズのことを頼む。これは命令だ」

 サーシャが言うには奴隷の首輪をつけているものは主の言葉に絶対服従を強いられるらしい。そんな機能を使いたくはなかったけど年には念を押さないと。

 首輪に新たな内容を加える。

「今、サーシャの首輪に一つだけ言葉を書き足した。もし俺が死んだ場合、その首輪は外れるようになっている。そうなった時、シズを頼れ」

 サーシャは悲しそうな表情をしながら下を向くばかり。このままじゃダメだなと思いサーシャとシズに一言だけ言う。

「二人が俺が死ぬと思うならそれでいい」

 その後の言葉はすぐには続けない。二人にも考えて欲しかったから。

「ただ俺に死んで欲しくないと思うなら、それ以上に俺も二人には死んで欲しくはない。それに夢は夢だろ」

 最後は嘘だ。多分俺の模倣のようにシズにも予知夢のような隠しスキルでもあるのかもしれない。それでも、

「俺は行かなきゃいけないと思う。嫌われ者の命がなくなっても悲しむものなんて少ないからな」

 例えるなら赤鬼か。彼のように青鬼となるべき存在に何かを残せる人でありたい。

 シズとサーシャに何かを残してやれたか。それは多分大丈夫だ。ネックレスを渡しているから。それにこの言葉を伝えられればそれで十分な気がした。

「まあ、いい感じに生き残ってやるさ」

 俺はニカッと二人に笑顔を向けた。冗談なんて一つもない一片の迷いのない笑顔。それを見て二人は意を決したのかこくりと頷いた。

「大丈夫だ、俺は絶対に死なないから」

 二人に言い聞かせるようにそう言った。

 二人が部屋を出て行ってから久しぶりに空を見る。地球とは違い月は三つもあるようだ。同じくらいの光を反射していることから太陽となる星もそれだけ光を強く放つのだろうか。

 そんな時に星が一つだけ流れる。なぜか俺はそれをとても怖いと思ってしまった。

 星の中から一つだけ地に落ちた星。それはこれから起こることへの暗示なのだろうか。

これからもよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。

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