またクラスの連中に会う。
葵です。
9月になりました。
一生、クラス会には参加できないと思っていたのですが、
雄二の提案で、幹事の今泉夫婦に会って、カミングアウト。
なんとなく、参加できる気分になってきました。
今泉夫婦が私たち二人の関係をどう思っているのか、少し気になりますが、
あまり考えないようにすることにしました。
まずはクラス会に出るという目標を達することが大事だと決めました。
雄二には大感謝です。
そして、クラス会当日に騒ぎにならないようにするために、根回しの会が開催されます。
今泉君の奥さん、サッチンが、ある中華料理屋の個室を予約して、クラスメイトだった女性3名とクラス担任の佐藤先生を呼んでくれました。
女性が多いんですが、ちょっとしたミニクラス会です。
新たに集まってくれた女性3名、新田夏樹、河野由衣、森野早苗、そして担任だった佐藤敏夫先生はあらかじめ話を聴いていたようで、スムーズに話が進んでいきます。
みんな私を褒めてくれたので、すごく気が楽になります。
「島田君なの?本当に?ウソみたい!超美人じゃん!
どう見ても、きれいな女の人だよ。
声も自然!」
「うわっ、島田君なの?変わっちゃって!胸大きい!うらやましいなあ。
ウエストも細いんじゃない?すごい。」
「今は葵さんだよね。あっちゃんって呼ぶよ。すごくきれい、モデルさんみたい!
モテるでしょ?」
「おお、島田なのかあ。現代医学の神秘だよな。見事に美人に変身したな。戸籍も女性なんだよな。
完全に女性か。その姿をみると、日常生活も充実してそうだな。
うん、どう見ても自然な女性だ。」
「なっちゃん、ゆいちん、さな、佐藤先生、お久しぶりです。今までクラス会に出られなくてすみません。
事情は見ての通りです。
こうやってサッチンと今泉君が席を設けてくれて、助かりました。
みなさんの暖かいお言葉で、クラス会に出る勇気がすごく出てきました。
ありがとうございます。」
「いやあ、これだけ美人になっちゃったら、女子にとっては自慢のクラスメイトだよ。
もともと島田君って、女子力が高くて、女の子っぽいところあったから、なんかしっくりくる。
いままで私とこの3人の女の子で女子会やってたけど、5人目に入らない?男抜きで、美味しいもの食べに行ったり、ショッピングいったりしようよ。」
サッチンが嬉しい提案をしてくれます。
すると、女子のみんなは、
「うん、賛成。」「横浜とか、東京のおしゃれなお店行こう。」「あっちゃん、勤務先東京でしょ?
会社帰りに会うのもいいね。」と盛り上がってくれました。
先生は先生で、
「うーん、いいなあ。性別が変わっても、こういう仲のよさが見れるというのは。
やっぱり、いいクラスだったんだなあ。」とじーんとした顔になっています。
私の話で盛り上がる中、サッチんが女子3名に頼みます。
「ねえ、みんな、クラス会の通知に出席で返事が来た人について、手分けして電話して欲しいの。メールでもいいけど、電話の方が相手の反応がわかるから、やっぱ電話かなあ。
できるだけあっちゃんのことを丁寧に説明してね。当日驚かないように。」
「わかった!じゃあ、
あっちゃんの写真撮らせて、
あ、一緒の写真も撮りたい!
電話で説明したあとメールで送るかもしれない!」
「うん、そうだね。私も写真撮る!」
「私も私も!
写真があると説明しやすいし、
あっちゃんにみんな好感持ってくれそう!」
結局、そこから先は写真タイムになっちゃいました。
私だけの写真、女の子とのツーショット写真、女性全員の集合写真、先生も含めた男性を含めた全員の写真をいっぱい撮ります。
「これで、材料も揃ったからクラス会の根回しはオッケーだね。」
「うん、写真を送れば、わかりやすいしね。」
「みんな驚くだろうけど、これで当日は会話しやすくなるね。」
そこで、雄二が、みんなに感謝を述べます。
私以上に嬉しそうな顔で。
「みんな本当にありがとう。
これでクラス会に葵が参加できる。
出たくないって言ってたけど、もう大丈夫だ。
よかったな、葵!」
「う、うん。みんなありがとう。」
わー、雄二大げさに喜んでる!
みんながニヤニヤしてる!
雄二が私のために一生懸命やると墓穴掘りそうだよ。
心配してたら、やっぱり、さなが鋭いツッコミをしてきた。
「ねー、菅野君、あっちゃんとどういう関係かなー?
ここまで、お世話するなんて?
怪しいー。」
「そうね!私も気になってた!
だって、今回の根回しは、菅野君があっちゃんのために始めたんでしょ?
どういう関係?
あっちゃんが美人だからなの?
可愛いよねー。」
真っ赤になった雄二が焦った口調で答えます。
「どういう関係って、クラスメイトだし、
幼馴染だよ。
あと、親同士が知り合いかな?
親同士が仲がいいんだよ。
家も近所だし。
つまりは、う〜ん、
家族ぐるみで付き合いのある友だちだ。」
そこで、意外にも佐藤先生が発言してきました。
「菅野君、島田さん、二人は独身なんだよね?」
「はい。」二人で同時に答えます。
「二人とも恋人はいるのかい?
その、彼女とか彼氏とか。」
「いません。」
また同時に答えます。
「じゃあ決まりだな。」佐藤先生が断言しました。
「決まりね!」「うん、そうだね」
「私、それがベストだと思う!」
「やっぱりな!」「うん、それが自然!」
私はみんなが何を言っているか大体わかりました。
胸がドキドキして、体が震えそうです。
でも、雄二は鈍感です。
「ええっ?どういうこと?」
先生がおごそかに雄二に向かって諭すように言いました。
「菅野君、島田さんと付き合いなさい。
二人はお似合いだ。それがいい。」
「ええーっ!
せ、先生、何を・・・」
雄二は突然のアドバイスに、驚きすぎて、声が出なくなってました。
私は、真っ赤な顔で、下を向いてしまいます。
嬉しいアドバイスですけど、私からは・・
積極的に発言ができません。
とっても、嬉しい反面、雄二の気持ちがわかるからです。
雄二、どうするんだろう?