お忍び
《木属性魔術 木人形》
ラヴァンダ1人では広すぎる部屋に詠唱が響いた。そして、そのすぐ後に木の人形が現れる。
「よし。俺に変身しろ」
ラヴァンダがそう言った瞬間、綺麗な形を保っていた人形はぐにゃりと曲がる。そして、粘土のように捏ねられできた顔はラヴァンダそっくりだった。
「命令術式をっと……」
命令術式は魔術ではない。魔術を構成するにあたって必要なのは術式。命令術式は詠唱も必要ないが、術式を細かく正しく作らないと使い物にはならない。
だが、ラヴァンダは幼い頃から読み耽った魔術書による知識で、頭で理解をしていた。
いや、魔術書を読んでいなくても感覚で理解していただろう。
「《ラヴァンダ・トレサーのフリをしろ》」
ラヴァンダが詠唱のような声にならない声を発すると、ラヴァンダにそっくりな人形は魔術書の方へ向かっていった。
「さて、これで俺も王城を出られるな」
ラヴァンダが人形を作った理由は、お忍びで城を出るため。なぜ城を出るかと問われると、冒険者ギルドへ向かうためだ。
冒険者ギルドとは、世界各地にあるダンジョン攻略に向け戦う冒険者達が集まる場所。素材の換金や治療なども行なっている。
(ダンジョン、いってみたいんだよな……)
今までラヴァンダは何度か城を抜け出してダンジョンへ向かったことがある。が、ダンジョンへは辿りつかず、道中の魔物を討伐するだけで終わった。
そして、それを目撃した者から類い稀なる魔術の才能を持つ謎の人物として広まっており、『魔騎士』と呼ばれている。
「ラヴァンダ様?入ってもよろしいでしょうか」
「やべっ……」
扉越しにメレナの声が聞こえ、急いで《空間属性魔術 飛行》によって窓からものすごいスピードで飛んでいった。
メレナは返事がないので扉を開けてみると、目の前には魔術書を読み耽っているラヴァンダがいる。
それをみた瞬間、メレナはラヴァンダに向かって腰に持っている剣をで切った。
「ラヴァンダ様に化けるなど、地獄をお望みか?」




