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第14話 真美ちゃん来襲

 次の日にはルドルフに東海村役場へ連れて行かされた。住民登録をするのだという。修二くんは2日も休めないのでSHELに普通に行き、私は役場へ行ったあとに行くことにする。

 これまたルドルフはしばらく窓口の前で座っていたあと、住民票をもらったらちゃんと登録されていた。車にもどったところでルドルフに聞いてみる。

「あのさ、ルドルフは魔法が使えるでしょ。わたしたちも使えるのかな?」

「無理だと思う。みんな魔力がほとんど無いよ。ママだけちょっとあって、それであの効果が起こるんだと思う」

「ふーん」


 そんな会話をしながら、ルドルフは空を見つめていた。


 その日の夜、修二くんの帰りは遅かった。前日は札幌行きのせいで休んだからしかたがない。だけどルドルフは寝ないで待っていた。

「パパ、おかえり!」

「ルドルフ、ただいま」

 修二くんの腰のあたりにルドルフは抱きついて大歓迎している。それはそれで微笑ましい光景なのだが、私だって抱きつきたい。

「あ、ママ、ごめん」

 ルドルフがすっと身を離して私にポジションをゆずってくれる。間違いなく私の心を読んでいる。ちょっと恥ずかしい。

「ルドルフはいい子だねぇ」

 修二くんはルドルフの頭をなで、私は修二くんに抱きついた。


 実験仲間と夕食を食べてきたという修二くんに、私はお茶を出した。私にもお茶を淹れ、ルドルフにはパッションフルーツのジュースを出す。すっぱくておいしいらしい。

「住民票、どうだった?」

「うん、大丈夫だったよ」

「すごいな、ルドルフは」

「そう、魔法が使えるんだから。だけどね、私達は魔力殆ど無いって」

「へえ」

「私だけちょっとあって、それが例の効果の原因らしい」

「例の効果って、ああ、あれか」

 聖女効果の原因がわかったところで、どうなるわけでもない。つまりこの話題は続けようがない。するとルドルフが話題を変えてきた。

「パパ、戦闘機っているでしょ。どうして夜でも僕を追いかけてこれるの?」

「ああ、レーダーって言ってね、電波を出しているんだ」

「電波?」

 修二くんは立ち上がって下敷きを持ってきて、自分の頭にこすりつけた。そしてそれを持ち上げる。

「うわあ、髪の毛がもちあがる」

「これが電気の力だよ」

 次に冷蔵庫にくっつけてあったマグネットをいくつか持ってきて、くっつけたり弾き飛ばしたりした。

「これが磁石の力、電気の力と磁石の力を短い時間で振動させたのが電波だよ。これを戦闘機の前に飛ばして、ものに反射してくるのを測定してるんだ」

「なんか難しいね」

「そうだけど、広い意味では光がものにはねかえってそれが見えるのと、同じといえば同じだね」

「理屈がわかれば、ぼくもレーダーを使ったり、レーダーから見えなくできたりできると思う」

 ルドルフはステルス化したいらしい。

「う~ん、その勉強は普通だと、小学校あがってから十年でもまるでむりだな」

「ママ、ママでもそうなの?」

「そうね、私でも勉強したのはつい5年くらい前だよ」

「そりゃたいへんだ」

 そう言ってルドルフは何事か考え始めた。


 ルドルフが黙っているので、私が話題を変える。

「あのさ、はやいうちに真美ちゃんにルドルフを会わせておきたいな」

「そうだね、恩田さんの休み次第なんじゃない」

「今度の土日は空いてるって」

「僕は今週はちょっと厳しいな。分光器に詰めてる必要はないけど、朝と夕方に窒素入れにいかないといけない」

「だよね。どうしよ」

「恩田さんに状況を伝えてよ。恩田さんの都合に合わせたほうがいいだろう。なんだったら杏、千葉行っといでよ」

「う~ん、ま、最悪ルドルフと二人で行くか」

 というわけで、SNSで事情を伝えておいた。


 朝ルドルフを新発田先生のうちに預け、SHELで研究し、夜にルドルフをひきとってという生活がまた始まった。


 土曜日の午前、真美ちゃんがやってきた。ルドルフと会うためである。電車でくるというので、駅まで迎えに行く。改札の前で待っていると真美ちゃんは驚いたことにカサドンを連れて現れた。めざとく見つけたのはルドルフである。

「わーい、マルスにネリス! 久しぶり!」

 それを聞いた真美ちゃんは走ってやってきた。

「おお、ルドルフ、なんかかわいくなったな!」

 改札をでてきた真美ちゃんは、しゃがんでルドルフの頭とか顔とかなでまわしている。

「よーし、よしよし」

 ルドルフは喜んでいるが、カサドンが注意した。

「先輩、ルドルフは犬じゃないですから」

「う、うむ、そうじゃな」

 私はカサドンに言った。

「結局来たんだ」

「だって、行けって言ったの、聖女様ですよ」

「まあそうだけど、はは」


 その日、私と修二は真美ちゃんとカサドンに泊まっていけと勧めた。しかし二人は、狭いからとか悪いからとか言って、どこか空いてるホテルに泊まると言って出ていった。ただ、日曜に返すからということで私の車を借りていった。

 そして夜遅く、二人はがっくりとした表情で戻ってきた。

「どこも空いとらんかった」

 ポツリと真美ちゃんが呟いた。

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