太陽系絶対防衛線突破②
デコラス宮殿。
デコラスは玉座に座って<スペースインパルス>の映像を見ている。
「攻撃力はわが軍をはるかに凌駕している。防御力も。次元衝撃砲、全方位兵器、そして青龍を倒した翼からの大型ビームブレード。確かに強い。・・欲しい。だがこちらには圧倒的な数がある。命という盾もな。」
映像が銀河連合艦隊に切り替わる。ローザが報告する。
「サジタリウス腕へ侵攻した青龍白虎軍は銀河連合の反攻に合い、21の星系を奪い返されました。ペルセウス腕に展開した朱雀軍も敵軍と緊張状態です」
デコラスは後ろを振り返る。
玄武だけでなく白虎、朱雀が起立している。朱雀の肩にはガルーダがとまっている。銀河連合の地球攻撃を察知したデコラスが二人を呼び寄せたのだ。
「四天王か。もう少し使えると思ったが、それほどではなかったな。」
「お言葉ですが、戦線を広げるのが早過ぎたのが原因かと」
「玄武、君は私に意見するつもりかね?」
「いえ、決してそのような事は・・」
「四天王!・・いや三天王か。」
三人はびしっと起立する。
「戦果を期待しておるぞ。」
太陽系外縁エッジワースカイパーベルト上に絶対防衛線が引かれ、大銀河帝国軍艦艇が集結していた。
<スペースインパルス>中央作戦室。
メインスタッフが集まっていた。巨大なパネルに映像が映る。
「無人偵察機ワープアウトします」クリスの声が響く。
バチッ!
「ワープアウト失敗。座標ズレます」
「またか」
アランが説明する。「次元衝撃砲で月面基地を狙いましたが、これも外れました。太陽系外縁にワープアウト防止用のバリアーが存在するのは間違いないようです。その発生源と考えられるのが・・」映像が切り替わる。「現在エッジワースカイパーベルトにあるこの<幻王星>です」
地球の月とほぼ同サイズの準惑星。無数のクレーターを有する小天体に見えるが、内部に多数の戦闘艦を搭載しワープ可能な高出力エンジンにより自由に移動可能な機動要塞と化している。その武装は<ネオ=マルス>を凌ぐ。太陽系防衛の要だ。
「幻王星周囲には銀河各方面に侵攻した艦艇約600隻がすでに集結している。さらにその外側には・・」
無人偵察機は幻王星に接近する。ワープではなく通常航法なら太陽系内に入れるようだ。
ビッ! ザー・・ 映像が消える。破壊された。
「無人の浮遊砲台です。接近すれば自動で攻撃して来ます。機雷としても機能しているようです。個々の破壊力は大したことありませんが、数が尋常ではなく、集中攻撃を受ければこのインパルスもただではすみません」
明たちがククコカ星周辺で遭遇したものと同様のようだ。(第2巻第1章参照)
腕を組んだまま映像を見ていた流艦長が口を開く。
「作戦の第一段階はこの幻王星の突破だ。主砲を百発程叩き込めば壊せるだろうが、犠牲と時間が惜しい。ロイ?」
「次元衝撃砲とワープミサイルによる遠距離からの攻撃。接近しての直接攻撃・・」
「力押しか。手間取ればどんどん敵の数が増えるぞ」ニコライがつっこむ。
サライが「いっそ幻王星の反対側とか黄道の垂直方向から侵攻するのはどうだ?」
ロイはむっとして「幻王星は移動できると言ったはずだ。ワープもな」
アランが手を上げる。
「私も幻王星を無視して地球を攻略すべきと考えます。数十億もの素人兵士、それを一人一人コントロールする事は、デコラスがいかに優れたエスパーでも不可能です。優秀な科学者技術者の他におそらく地球連邦本部のハイパーコンピューター<ガイア>の関与は間違いないでしょう。そして暗示にかけられた人々に命令を伝えているのは、この元地球連邦本部・現デコラス宮殿近くの巨大アンテナからの疑似ESP波と考えられます。先日シェプーラ星で破壊した物よりはるかに巨大です。他に太陽系では月、火星、ガニメデ、タイタン、トリトン、冥王星でESP波発信源を確認済ですが中継基地と考えられ、地球のアンテナさえ破壊出来れば、兵士のコントロールは解けると思います。手薄なエリアを突破して地球に向かう事を提案します」
「不可能だ」
「幻王星は移動可能だ。挟み撃ちに遭うのがオチだ」
リュウとロイが反対する。
流艦長が口をはさむ。「どちらを選ぶにしても、問題はいかに敵味方の被害を少なくして、アンテナを破壊できるか・・だ」
ニコライが「奇襲・・だな」
「シェプーラ星で有効だった“対ESP波放射装置”は?」ロイがアランに尋ねる。
「本艦以外に50個製造できました。艦載機に搭載中です。近距離なら有効ですが、高出力の物を造るには時間が足りませんでした」
「バリアーアタックと一緒には使えないのか?」
「本艦のものはバリアーアタックと同時照射できるようにしました」
「・・・・・・」静寂が流れる。
明が手を上げる。アドバイザーとして参加していた。
「質問があります。艦載機<スペースコンドル>の性能を教えてください」
リュウが明を睨む。
「喧嘩売ってんのか?」
「囮として使えるかです。敵の砲火を掻い潜り防衛線を突破、ワープで離脱できますか?」
「朝飯前だ」
流艦長はじろりと明を見て「話してみろ」
医務室。
診察を終え、美理は服を着る。(残念)
「いつからだ?」啓作が尋ねる。
「半年位前。急に胸が苦しくなって・・」
「・・・」
「悪いの?私」
「異星人である俺の体が地球人とどう違うか?俺は医者になって徹底的に調べた。主要DNAの99.9998%は同一だった。残り0.0002%の差は・・心臓だ」
「心臓・・」
「美理、お前は前例の無い混血だ。診察や検査で異常は認めなかった。今は分からないとしか言えない・・とりあえずペースメーカー機能のあるナノマシンを・・」
不安そうな美理を見かねて、啓作は「必ず治す。治してみせる!」
美理は小さな声で「はい」と答えた。
「お前だけの問題じゃない。将来の俺の子のためにもな」
ちょっと驚く美理。少し笑みが出るが、まだ表情は暗い。
「お前、明のこと好きか?」
「え?・・好きよ。兄さんもでしょ」
「そういう意味じゃない」
「・・・はい」
「あいつはいい奴だ。お前らお似合いだと思うぞ」
顔を赤らめる美理。
「・・兄さん」
「ん?」
「まみこさんって誰?」
「・・・」
「明くんが、私を見て言った事があるの。知ってる?」
「それは・・・」
警報が鳴る。啓作は正直助かったと思った。
「GO!」
<スペースコンドル>第一陣が次々と<スペースインパルス>より発進して行く。
機影は宇宙の彼方へ消えて行く。
その光景を明はメインブリッジから眺める。
シャーロットはワーププログラミング中。ちらりと明を見て、
「大丈夫。きっと上手くいくわ」
その肩にはピンニョがいる。可愛いし使えるし省スペースだし重宝されているようだ。
「俺は正面きって戦う方がいいと思う」
「ロイ、決まった事をぶり返さないの」クリスが注意する。
「同じ地球人同士で血を流し合うのは愚かだ」
サライは明を見る。
「明、君にはシェプーラ星の時と同じように輸送機のパイロットをしてもらう。コンドル隊第三陣と共に地球に降下してくれ。配置に着け」
明は艦長席を見上げて「艦長!<フロンティア号>で出させてください」
流艦長は黙ってニコライを見る。目が行けるのか?と問う。
ニコライは親指を立てて合図。
「よかろう。人選は任せる。ボッケンと陸戦隊20名を乗せて待機しろ」
「ありがとうございます! ピンニョ!」
明はメインブリッジを飛び出す。ピンニョが続く。
走りながら腕時計型通信機に呼びかける。
「ヨキ!マーチン!力を貸してくれ!」
ピンニョは明を追い越す。「お先に」
通路を走る明に、医務室から出てきた啓作が声をかける。
「俺も救命艇で後から行く!因縁の相手だ。ぶちかませ!」
「おう!」
ふたりで通路を疾走する。
「・・明、美理のこと、これからもよろしくたのむ」
「?交際認めてくれるって事ですか?お兄様♡」ちょっとふざけてる。
「まず本人に言うのが先だろ」ごもっとも。
「前にも言ったけど、美理ちゃんは俺の好きだった幼なじみにそっくりなんだ。どうしても彼女を思い出してしまう」
「だから?」
「え?・・いや・その美理ちゃんといると和むんだ。だからずるずると」
「それのどこがいけない?」
「え?」
「お前は過去に捕らわれ過ぎだ。お前はいま生きているんだ。それを忘れるな」
「?あ、ありがとう・・」
「約束しろ。たとえ世界中を敵にまわしてもあの子を守ると」
「?」
「何でもない、忘れてくれ。・・がんばれよ」
啓作らしからぬ言葉を聞き、明は驚く。
ふたりは第二格納庫に到着。
「いけね。メインブリッジ隣の臨時医務室へ行くんだった」反対方向だ。
激戦に備え医療班を艦内の数カ所に配置することになっている。
啓作は引き返す。明は<フロンティア号>へ。
見ると、ボッケンの誘導で陸戦隊の装甲兵がカーゴルームに搭乗して行く。
明は軽く敬礼して船内へ入る。
狭い通路を通りメインコクピットへ。ヨキ達はすでに到着していた。
「使えるぜ、プロトン砲。一門だけだけどな」
マーチンと明はハイタッチ。
明は主操縦席に着く。
そっと計器に触れる。懐かしさがこみ上げる。
ヨキが「ミサイルの補給完了。サブコクピットは無いけどあとは元通り」
ピンニョが「最終チェックに入ります」
『艦長の流だ』艦内通信が入る。
第一砲塔。
リックが敬礼して放送を聴いている。仕方なくグレイもそれに倣う。
『これより本艦は大銀河帝国の絶対防衛線を突破し地球へ向かう』
機関室。
モニターのニコライが指示を出す。慌ただしく作業がつづく。
『諸君らの中には地球を良く思わぬ者もいるだろう。だが今は力を貸して欲しい』
第一格納庫。
リュウは愛機のコクピットで腕組みして話を聴いている。
副隊長ロミは第一陣で出撃していた。
『共にデコラスを倒し、自由を取り戻そう』
啓作が臨時医務室に到着する。
美理と麗子は子供たちと共に医務室に避難している。
はしゃぐ子供たちを麗子がなだめる。美理は目を閉じて祈る。
<フロンティア号>コクピットにボッケンが入って来る。
明と目が合う。軽く会釈。そのままレーダー席へ。
明はスペーススーツの胸ポケットに手を当てる。中に美理からもらった御守りが入っている。
『諸君らの健闘に期待する』
ドバアアア—――ンンン・・・・
<スペースインパルス>はエンジンを噴射、ワープイン。




