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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
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ロストラブ①

第3章  ロストラブ ―シェプーラ攻防戦―


「あの人の名前を僕は知らない。時々電車で会う、いや見かけるだけだ」

電車の中。視線の先にいるのは制服姿の山岡麗子。立って文庫本を読んでいる。

身長170㎝弱。重力の強いこの星の女子の平均身長はもっと低い。そのため目立つ(麗子は14歳まで他の惑星で育った)もちろんスタイルもいい。

寮生活だが、時々帰省している。目が悪くないのに眼鏡をかけているのはスカウトやナンパされるのが鬱陶しいから。

「僕はいつもあの人に渡すための手紙を持ち歩いている。・・でも今日も渡せなかった」

電車が停車し、彼女は降りる。

別の日の電車内。麗子はいない。

「いつ会えるか分からないあの人。その日も僕は手紙を持ったまま学校へ行った。でもその日から僕の記憶は曖昧だ。僕は今どこで何をしているのか。考えられない」

人々はレミングのように行進する。宇宙港へ。宇宙巡洋艦に吸い込まれて行く。

巡洋艦が飛び立つ。宇宙へ。いずこかへワープして行く。


 

 <スペースインパルス>作戦室。

 メインスタッフが集合している。大銀河帝国と交戦経験がある明と啓作とグレイもアドバイザーとして同席。ようやく明も航行班のスペーススーツを貰えた。青い一本ライン。グレイは戦闘班の赤い一本ライン。医療班の啓作は白衣代わりの白いスペーススーツだ。

 ロイが説明する。

「本作戦の目的は大銀河帝国軍のシェプーラ星侵攻を阻止することである。本艦はまず長距離射撃で衛星上の敵基地を破壊。間髪入れずスペースコンドル隊が敵艦隊を攻撃。本艦も合流する。敵が地上部隊を降下させた場合はその侵攻を阻むべく、陸戦隊を降下させる」

 アランが補足する。

「ロミ副隊長以下10名には偵察任務をしてもらう。敵兵の多くは疑似ESP波(人工テレパシー)でコントロールされている一般人だ。地球がおおもとだが、直接そこからコントロールされているわけではない。敵基地や敵艦隊といった中継ステーションがあり、それらを全て叩ければ敵兵の呪縛コントロールは解かれると思われる。シェプーラ星近辺の中継ステーションを見つけて連絡しろ。人選は任せる」

「重要な任務ですね。了解しました」敬礼しながらロミが答える。

「疑似ESP波を妨害する装置の開発が間に合えばよかったのですが」

「ないものは使えない。それは次のお楽しみにしよう」ニコライがアランを励ます。

「あと一歩なんです。完成次第テストを兼ね実戦投入します」 

 サライは航行班チーフ、明の上官に当たる。

「明。君は輸送機4号を操縦して陸戦隊を運んでくれ。まずは衛星軌道上で待機だ」 

「はい」

 最後に流艦長が締める。

「本作戦の遂行時間は24時間とする。可能な限り敵の侵攻を阻止するが、時間が来たら本宙域を離脱、地球へ向う。・・成功を祈る」


 シェプーラ星の反対側の宇宙空間に大銀河帝国艦隊約300隻が集結していた。

 ひと際巨大な戦艦がワープアウトする。いや要塞と呼ぶべきサイズだ。

 その艦橋に立つのはデコラス四天王の一人“青龍”。美少年である。歳は14歳程であろうか。経歴は分からない。その華奢な容姿からは想像もつかない残虐性を持つ。

 青龍は白虎と共に大艦隊を率いてサジタリウス腕へ侵攻したが、デコラス皇帝直々の命によりシェプーラ星攻略の任に着いた。

 目の前に青い海と横縞の大陸がある惑星が見える。

 青龍は指で髪をかき上げ命令する。

「進撃開始!」


 敵の動きを察知して警報が鳴る中、<スペースインパルス>両翼の付け根にある左右甲板より<スペースコンドル>が発進する。

 一番手はリュウ。乗機は前回と異なる単座式の愛機だ。

『幸運を(グッドラック)』管制官の通信に、

 リュウは無言で親指を立てて合図。前を見る。

 発進。強烈なGが身体を襲う。

 次々と<スペースコンドル隊>が飛び立つ。宇宙の闇に消えて行く。

 その光景を明は第二格納庫の輸送機コクピットのモニター越しに眺めていた。

 この機は<フロンティア号>より一回り大きい。他にヨキとピンニョが搭乗している。

 ヨキのスペーススーツは子供用。特注のラベンダーライン。

 積み荷は陸戦隊一個中隊、50体の装甲兵パワードスーツだ。この装甲兵はインパルス内から“シンクロ”を使いリモートコントロールされる。陸戦隊とはいえ人間は戦場に出ない。

「そう言えばヨキ、お前学校行ってないんだって?」

 ギク。「ESPの特訓で忙しくて・・おいらA級だって。時間制限なかったらAAA級だったのにって。あ、触れずにテレポート出来るようになった!」

「それは・地味にすごいな」

「見て。ボッケンの番だ」

 後席にボッケンを乗せロミの複座式<スペースコンドル>がカタパルト装着。

「狭いでしょ。ごめんね」

「無重力だから問題ない・です」かなり狭い。

 発進!Gがかかる。

 パートナーにボッケンを選んだのはロミ自身だ。「目がいい」こともあるが、本当は「かわいい」からだ。

 偵察隊10機は各個様々な方向へ散って行く。

 続いて輸送機が発進する。第二格納庫から出てゲートをくぐる。

 明たちの機は4番目、しんがりだ。 順番が来た。ゆっくりと動き出す。

「グッドラック」

 マーチンが見送る。ひとり<フロンティア号>の最終整備を行っている。黄色の一本ラインが入ったスペーススーツははちきれそうだ。他の整備員は第一級戦闘態勢で待機中だが、ニコライの命令なので誰も文句を言えない。

 マーチンは視線を移しそっと機体に触れる。

「待ってろよ。もう少しだから」

 ミクロ化した輸送機は上甲板への通路を出る時に本来の大きさに戻る。

 徐々に速度を上げる。そのまま宇宙空間へ飛び出す。

 明は指定されたポイントへ輸送機を向かわせる。


 ミクロ化シティ内の学校では子供たちが避難していた。美理と麗子の姿もある。

 小さな女の子が美理の袖をつかむ。その手はかすかに震えている。

「だいじょうぶよ」優しく微笑む。

 でも本心は美理自身も不安でいっぱいだった。

 啓作は医務室で待機。腕組みをして艦外映像の映るモニターを見る。

 隣でQも・・目を閉じている。瞑想?いや寝息が・・寝てる?

 第一砲塔。グレイはリックの指揮下で戦闘準備中。初めての本格的実戦に緊張を隠せない。

 メインブリッジ。シャーロットはプログラミング席にいる。

「第七・八砲塔、次元衝撃砲に換装完了」ロイが報告する。

 流艦長の声が響く。

「攻撃開始!」

 ロイが命じる。「次元衝撃砲発射!」

 インパルスの両側舷の主砲から緑の光が放たれ、空間に消えて行く。

 

 シェプーラ星の衛星。

 突如現れた二つの緑の光が基地を急襲する。大きな目標のため誘導照射は不要だ。

 一撃で基地は粉々に吹き飛ぶ。

「!」

 青龍は一瞬驚くが、すぐに笑みを浮かべ、命令する。

「艦隊を二手に分ける。一隊はこのままシェプーラ星へ向かえ!もう一隊はあの戦艦を血祭りにあげろ!」横を向き、「レーダー!何をしていた?このクズが!」レーダー手を睨む。

 レーダー手は突然苦しみだし、失神する。テレパシーによる攻撃だ。

「ふん」青龍は乱れた髪をかき上げて前を見る。

 シェプーラ星の近くに広がる暗黒星雲から<スペースインパルス>が現れる。


「敵艦隊は二手に分かれました」クリスが報告。

「針路このまま、近い方の艦隊中央に向かえ!」流が命令する。

「最大戦速!」サライが操縦桿を動かす。

「了解。エンジン出力あと20上げろ!」ニコライが指示を出す。

 ドヴァ―ン。

 <スペースインパルス>は艦隊の中心にいる青龍の大型旗艦を目指す。

「敵艦隊発砲!」

「各個に攻撃!」ロイの命を受け、

「発射!」第一主砲のリックがトリガーを引く。

 光とミサイルの束が交差する。

 大銀河帝国軍艦のエンジン・砲塔に命中。出力を落としているため大破には至らないが、航行不能・戦闘不能になる艦が続出する。

 インパルスも被弾するが、ダメージは皆無に等しい。

 攻撃をもろともせず、インパルスは敵艦隊に突入する。


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